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「日本はドイツに勝てる」「久保建英はスペインを脅かす」現地敏腕記者たちが予想するW杯“死のリーグ”のゆくえ

SmartFLASH

エドゥ・ポロ記者(スペイン)
’76年生まれ ムンド・デポルティボ紙記者。’14年ブラジル大会、’18年ロシア大会など、近年のW杯を現地取材。ユーロも継続的に取材している。ふだんはバルセロナの番記者を務め、現監督シャビにもっとも近い記者として名を馳せる

 

ティム・ミラー記者(ドイツ)
’87年生まれ レヴィーア・シュポルト紙、フンケ・メディアグループの記者を経て、’16年からフリージャーナリストとして活動。現在は、ブンデスリーガ公式サイトやフンケ・メディアグループに寄稿する
ティム・ミュラー

 

ポロ記者(スペイン・以下、P) W杯はどの試合も油断できない。ただ、客観的に見てこのグループは、スペインとドイツが頭ひとつ抜けている。W杯での経験値や、欧州トップクラブで主力としてプレーする選手数はスペインとドイツが上。コスタリカが勝ち上がる可能性はほぼゼロだが、日本は欧州でプレーする選手数を見ても侮れない存在。久保建英はレアル・ソシエダで好調だし、昨季ヨーロッパリーグでバルセロナを破り、結果的に優勝したフランクフルトの鎌田大地ら実力者もいる。

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ミュラー記者(ドイツ・以下、M) スペインとドイツが1次リーグを突破する可能性はきわめて高い。とはいえ、ドイツにとって難しいグループであることも事実。日本は組織として十分に機能しており、守備が堅く、怖い相手だ。

 

スペイン人記者のエドゥ・ポロ氏

 

■スペインもドイツもストライカーが不在

 

 スペインとドイツが優勢としつつ、日本にもチャンスはあるという両記者。では、自国の代表チームに対して、どう評価しているのか。

 

 スペインは9月にホームでスイスに1−2で敗れ、その3日後には、敵地で難敵ポルトガルに1−0で勝利した。

 

P 最近のスペイン代表には好不調の波があり、我々も読めない。ルイス・エンリケ監督が築き上げたチームは、集団での強みを発揮し、個に依存しない。アタッカーも献身的に守備に参加する。たしかに、主役やタレントは欠いているが、組織としての強さは過去と比べても劣らないレベルにある。そして、伸び盛りの若手が多い。バルセロナのペドリとガビは、本番でカギを握る選手になる。不安要素は、やはりストライカー。現状、モラタ(アトレティコ・マドリード)がその役割(CF)を担うが心許なさは否めない。

 

 他方、ドイツは9月に格下のハンガリーに0−1で敗れ、イングランドには2点を先制しながらリードを守れずに3−3で引き分けている。

 

M ドイツは自分たちのサッカーを見つけられていない。もっとも大きな問題は、確実にゴールを決められる強力なストライカーがいないことだ。ハンジ・フリック監督は、ディフェンシブな相手(日本を想定)に打ち勝つための解決策を、選手自らが見いだせるようなチームを作らなければならない。もちろん、世界最高のGKの一人であるノイアー(バイエルン・ミュンヘン)をはじめ、中盤から前線にかけてもキミッヒ、ゴレツカ(ともにバイエルン)、ギュンドアン(マンチェスター・シティ)、ハヴァーツ(チェルシー)ら、強力な選手が揃う。しかし、肝心の最前線に世界レベルのトッププレーヤーがいない。1次リーグを突破する可能性は高いとみるが、その後はクジ運と選手の調子次第だ。

 

 両国が警戒する日本人選手はいるのか。

 

P 日本はよく走り、技術もともなった、組織的に優れたチームという印象だ。スペインで誰もが注目しているのは久保建英。これまでにバルセロナ、レアル・マドリードに所属してきた経歴がその才能を物語っているし、今季はレアル・ソシエダで素晴らしいプレーを見せている(リーグ11節まですべての試合に出場し、2ゴールをマーク。レアル・ソシエダも4位と、上位につけている)。日本は、スペイン戦、ドイツ戦では試合を支配されるだろう。そのなかで点をもぎ取る、あるいはチャンスを作り出すのは日ごろからトップレベルでプレーしている久保になるはず。久保はクラブ、代表レベルでスペインを知り尽くしている。昨年の東京五輪でもスペインと対戦し、もはや怖さは抱いていないはず。我々にとって最大の脅威は彼だ。

 

M ブンデスリーガでプレーしている日本人選手のことはよく知っている。とくに鎌田、堂安律(フライブルク)、遠藤航(シュトゥットガルト)は、所属クラブで中心選手として活躍しているだけに、日本代表でも重要な役割を担うはず。繰り返しになるが、ドイツ代表にとって日本に勝つのは簡単なことではない。

 

 グループEの予想順位は両記者ともに1位スペイン、2位ドイツ、3位日本、4位コスタリカとした。日本戦については、どんな展開になると考えているのか。

 

P スペインは初戦でコスタリカに勝ち、いいスタートを切るだろう。2戦めのドイツにも勝って、勝ち点6を手にできれば理想的だが、なかなかそうもいかないだろう。最悪でも引き分け、そして最後の日本戦に挑むというのがもっともあり得るシナリオ。となると、日本戦で手を抜くことはできない。ある意味、注意しなければならない試合でもある。スコアは、2−0でスペインの勝利と予想する。

 

M ドイツと日本は、1点を争う接戦になるはず。どちらが勝つか、予想は難しい。この試合で勝ったほうに、1次リーグ突破のチャンスがある。前評判はドイツのほうが上だが、今のドイツが相手なら、日本の勝利もしくは引き分けは十分あり得る。

 

 リップサービスが含まれているかもしれないが、両国の記者は想像以上に日本を高く評価し、戦い方次第では日本がドイツやスペインを相手に番狂わせを起こしても不思議ではないとする。

 

P 日本がスペインに勝つ可能性がまったくないとはいわない。私が日本代表の監督だったとしたら、まず前提としてスペインにボールを圧倒的に保持される展開を受け入れる。スペインの中盤はバルセロナのペドリ、ガビ、ブスケツの三角形で構成され、攻撃はそこから始まる。つまり、日本がもっとも警戒すべきはそこで、スペインにボールを支配されても3人にプレスをかけ続け、気持ちよくパスをまわさせないことが重要。(ディフェンスの)最終ラインが集中力を切らさず、中盤と前線の選手が諦めずにプレスをかけ続ければ、スペインは90分のどこかで、1度か2度は必ずミスをする。その数少ないチャンスを生かし、ものにすることが、日本が描ける最良のシナリオだ。

 

M 日本のクオリティは高いし、ドイツに勝ったとしても大きな驚きはない。今のドイツは、’14年にW杯優勝したときのような強さはない。日本にとってドイツは“倒せる相手”だ。

 

ドイツ人記者のティム・ミラー氏

 

■点をやらなければ強豪・スペインにも焦りが

 

 かつて“無敵艦隊”の異名を取ったスペインと日本はどう戦うべきか?

 

P スペインにとって嫌な展開は、試合を支配しながらも点が入らない時間が続くこと。そうなれば焦りが生まれ、心理的にやっかいなことになる。だから、日本は相手に点をやらないよう粘り続けることができれば、チャンスは必ず生まれる。

 

 日本がドイツ戦で、もっとも注意すべき選手は誰か?

 

M バイエルンのジャマル・ムシアラは、今季旋風を巻き起こしているが、W杯でも同じようなことができるだろう。彼はまだ19歳だが、すでにゴールを脅かすだけでなく、“違い”を生み出すことができる(試合で自ら流れを作る)存在。ドリブル能力も高く、そして非常に落ち着いているだけに、彼を自由にさせることは危険だ。

 

 最後に両記者に、優勝国を予想してもらった。

 

P 決勝はアルゼンチン対ブラジルで、優勝はアルゼンチン。あくまでも希望だが、メッシが“世界の王”(MVP)になったらおもしろい。

 

M スペイン、オランダ、ブラジルが優勝候補だ。そのなかで、私ならブラジルの優勝に賭ける。残念ながら、今大会のドイツは優勝候補ではないし、スペインのようなトップレベルの国との対決では、劣勢を強いられるとみている。

 

 過去の実績や個々の選手の力関係を考えれば、グループEはスペインとドイツが突破するのが順当とされるだろう。ただ、スペインは’14年ブラジル大会、ドイツは前回’18年ロシア大会で、優勝候補と期待されながら1次リーグで姿を消しているのも事実。日本代表は予想を裏切って決勝トーナメントに進めるか。かつて森保一監督も経験した「ドーハの悲劇」の舞台で、新たなドラマが生まれることに期待したい。

 

※成績等は10月28日(日本時間)時点のもの

 

写真・渡辺航滋、AFLO 構成・栗原正夫 取材協力・EIS/豊福晋、鈴木智貴

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