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親ナチ派の陰謀とは? アメリカの黒歴史! 驚愕実話『アムステルダム』にクリスチャン・ベールやデ・ニーロら集結

BANGER!!!

東京国際映画祭ガラ・セレクションでプレミア上映された『アムステルダム』がいよいよ2022年10月28日(金)に公開となる。洋画ファン必見の豪華キャストで、俳優たちの演技への評価も高く、プロダクションデザインも素晴らしいコメディミステリーだ。欧米の映画サイトが辛い点をつけているからといって見逃してはもったいない。海外で点が辛くなったのは、情報つめすぎで脚本が複雑すぎたから……。しかし、そのつめすぎの情報が面白い映画でもあるのだ。

ファシズム、ヒロポン、ムッソリーニ

舞台は1933年。主要登場人物の三人、バート(クリスチャン・ベール)、ハロルド(ジョン・デヴィッド・ワシントン)ヴァレリー(マーゴット・ロビー)は1918年の第一次世界大戦末期にヨーロッパで出会った。第一次世界大戦は近代兵器が大量投入された最初の戦争だ。退役後、整形外科医になったバートの医院で、失くなった足が痛いと訴える元兵士が出てくるが、幻肢痛の報告も多かった。バートは義眼を入れていて、義肢・義足の登場人物も多いが、義肢・義足がめざましく発達したのも戦争のせいだった。

1933年は、第二次世界大戦が刻々と近づいていた時期でもあった。日本はちょうどこの年に国際連盟を脱退している。ドイツ軍と日本軍が協力して製造していた覚醒剤、ドイツ名でペルチビン、日本名でヒロポンが劇中に登場する。ファシズムももちろん大きなファクターだ。ムッソリーニと同席したアメリカ人将軍が大きな秘密を知り暗殺されたらしい――この事件から物語が始まる。ムッソリーニは日本ではヒトラーほどのインパクトはないが、ロッセリーニやパゾリーニが告発した巨悪なのだ。『無防備都市』(1945年)や『ソドムの市』(1975年)の悪役たちのさらに上位の悪なので、『アムステルダム』の登場人物たちの危機感も増す。

バートとハロルド、そして同じ部隊のミルトン(クリス・ロック)は傷も負ったが、傷を癒す過程ではほかの復員兵たちよりはだいぶ運がよくて、生き延びることもできたし当時のカルチャーにどっぷり浸かって自由を楽しむこともできた。

バート、ハロルドとヴァレリーは帽子の中にばらばらの言葉を入れて、取り出した順に読み上げた詩でナンセンスソングを作って遊んだりしているが、これはダダイズムの詩人たちが実際にやっていたこと。モダンなデザインがどんどん出てきていた時代で、テイラー・スウィフトが演じる将軍令嬢はアール・デコのブローチを身につけている。従軍看護師のヴァレリーはシュルレアリズム芸術家でもある。彼女が現代美術家であることが、“あるもの”が巧妙に隠されてしまう仕掛けにもなっている。

アメリカの黒歴史“ビジネス・プロット”とは?

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ストーリーの骨子になるのがアメリカの黒歴史“ビジネス・プロット”だ。ウィキペディアにも載っている実話で、財界の指導者たちがナチスに傾倒し、大衆に人気があったスメドレー・バトラー少将を指導者に推したてクーデターを起こそうと目論んだ陰謀だ。作中では、スメドレー・バトラー少将はギル・ディレンバック将軍に変えられ、ロバート・デ・ニーロが演じている。

で、これは史実であってネタバレでもなんでもないので書いてしまうが、ビジネス・プロットは陰謀で終わってクーデターは起こらなかった。というのも、話を持ちかけられたスメドレー・バトラー少将ご本人が財界の大物たちの不道徳さに「俺がなんのために戦ってきたと思ってんだ!」とキレて、その陰謀をバラしたからだ。

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