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ダイアナ妃が離婚を決意した3日間『スペンサー ダイアナの決意』クリステン・スチュワート熱演!

BANGER!!!

史実ベースの「寓話」

映画『スペンサー ダイアナの決意』では、まずはじめに「現実の悲劇にもとづく寓話」という文言が示される。1981年にチャールズ皇太子(当時)と結婚してから、1997年に36歳の若さで突然の死を迎えるまで、セレブリティの中のセレブリティとして世界の注目を集めたダイアナ元妃の物語だが、いわゆる一般的な「伝記映画」にはなっていない。

パブロ・ラライン監督はリサーチと想像力を駆使して、ダイアナが過ごした1991年のクリスマス休暇にフォーカスする。緑豊かなノーフォーク州にある別邸サンドリンガム・ハウスに王室のメンバーが集まる毎年恒例の季節行事、その3日間を経て、彼女は離婚を決意するのだ。

1963年11月に夫であるジョン・F・ケネディ大統領が暗殺されてから葬儀が執り行われるまでのジャクリーン・ケネディの行動を描いた『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』(2016年)に続く、ラライン監督の“20世紀セレブリティ女性「もしかしたらこうだったかもしれない」シリーズ”と言えそうな作品である。壮麗な葬儀によって自分とケネディの地位を「まるで王家のように」盤石なものにしようとするジャッキーと、窮屈な王室から逃げ出そうとするダイアナは対照的でもあるのだが、まだ若々しく美しい有名な女性の孤独な闘いという点は共通する。「似せること」や「本物らしさ」の追求とは別の方向から、興味深い人物像を描き出そうとする試みだ。ちなみにラライン監督はチリ出身で、主演のクリステン・スチュワートは米国人。英・米・チリ・ドイツの4カ国合同作品である。

世界から熱視線を浴びた“ロイヤルカップル”の実情

ダイアナ元妃は王室ネタのドラマをはじめ、数々のポップカルチャーにさまざまなかたちで参照されてきた。とはいえ突然の衝撃的な死からすでに四半世紀の時が流れているし、80年代の「ダイアナ・フィーバー」を記憶しているのは40代後半以上の人々だろう。一挙手一投足が注目の的となり、常にパパラッチに追いかけられる彼女は、今にして思えば21世紀のセレブリティ・カルチャーの過熱を先取りした存在だった。

ロンドンのセントポール大聖堂で、ダイアナ・スペンサーとチャールズ皇太子(当時)の豪華絢爛な結婚式がおこなわれたのは、1981年のこと。当時ダイアナは20歳になったばかり。先日、エリザベス2世の逝去に伴い、チャールズ3世として国王に即位したばかりの皇太子は、彼女の13歳年上だった。

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翌年には第一子ウィリアム、その2年後にはヘンリー(ハリー)が誕生。まるで「現実のシンデレラ・ストーリー」として大衆の熱い視線を浴びたロイヤルカップルだったが、まもなく不仲説が囁かれることになった。これはチャールズが元恋人のカミラ(現王妃)との不倫関係を続けたことが原因と言われている。ダイアナとチャールズは1992年に別居。その後、1996年に離婚している。

したがって、この映画の時点でのダイアナは、まだ幼いふたりの息子たちに愛情を注ぎながらも夫との関係や堅苦しい王室のしきたりに疲弊し、神経が張り詰めた状態にある。舞台となる田舎のお屋敷は、ダイアナの内面と重なるように豪華だが薄暗く寒い場所だ。英国王室の妙な伝統も、現在の感覚では残酷極まりないキジ撃ちの風習も、あたたかい家庭とは程遠い。

特別な存在になる代わりに「人間扱いされなくなる」体験

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