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『ディスクロニア: CA』星街すいせい×郡陽介対談 VRゲームとVTuber、“バーチャルなエンタメ”を繋げる音楽

Real Sound

星街:嬉しいです!目に留めてもらえてよかったです!(笑)

郡:それに、その少し前に『ディスクロニア: CA』のビジュアル面を担当されているLAMさんから、すいせいさんの動画が送られてきていたことも思い出しました。Superflyさんの「覚醒」のカバーで、「めっちゃよくないですか? いつかお仕事したいですよね」と。それで、僕もすいせいさんの音源を片っ端から聴いた結果、「この人に頼みたい」と総合プロデューサーやPRチームに直談判しました。依頼する前から、ダメになってもいいやとすいせいさんを想定した楽曲もつくっていて。それが実は、今回のテーマソング「7days」なんです。

星街:まさかそんなに猛プッシュしていただいていたとは知らず、「ゲームの案件が来てますよ」と聞いて「嬉しいな! やりたいな!」という感じでお返事しました(笑)。私、探索系のゲームが好きなんですけど、『ディスクロニア: CA』は推理をしたりする作品ということで、「自分でもやってみたいな」と思いながら資料を見ていました。

――郡さんは星街さんの歌声にどんな魅力を感じたんでしょう?

郡:「GHOST」を聴いたときに、まずは引き出しの多い方だなぁと思いました。ひとつひとつの言葉にいろいろなニュアンスを持たせることができる方だな、と。他の曲を聴いても、可愛い雰囲気の歌もあれば、大人っぽいものも、かっこいい女の子的なものもあったりして、ジャンルの幅広さを感じました。でも、それがすいせいさんというシンガーからブレていなくて、「全部がすいせいさんのストライクゾーンに入っている」という魅力を感じます。

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星街:やったぁ。おっしゃっていただいたように、自分でもひとつひとつの歌詞のニュアンスは大切にしているかもしれないです。よく歌で1番の歌詞を大サビにまた持ってくることがありますけど、そういうときも、ラスサビの方が盛り上がる歌い方にすることは考えていて。実際に聴いてもほとんどの人はそんなに違いが分からないかもしれないんですけど、「歌詞に沿った表情を盛り込んでみよう」と思ってリテイクを重ねたりしています。

――星街さんは『東京クロノス』やクロノスユニバースの存在は知っていましたか?

星街:名前は以前から聞いたことがありました。いろんな人から「面白いよ」と教えてもらったもののひとつだったと思うんですけど、「こんなゲームがあるんだ」と思っていました。それで今回「『東京クロノス』シリーズの話が来ましたよ」と言われて、「聞いたことあるぞ!!」と。ゲームが好きで、いつかゲームの主題歌を歌いたいと思っていたので、声をかけていただいてめちゃくちゃ嬉しかったです。

――では、みなさんが「7days」をつくったときの話を詳しく聞かせてください。

郡:僕は主題歌をつくるときは監督にいろいろと話を聞いて、「こういうテーマの作品なんだな」「主題歌ではまだここは隠したいんだな」ということを把握してからつくりはじめるんですけど、今回もそうしたうえで、メロディは「ここは力強く歌ってくれるだろう」「ここはファルセットでエモい感じで歌ってくれるだろう」と、すいせいさんの歌声を想定していきました。ボーカルをお願いするときはいつも、歌う方がどういうものだと歌いやすいか気を付けながら、同時に今まで歌っている曲とはちょっと違う、でもその人にきっと似合いそうな曲をつくりたいと思っていて。今回も、そういうものを意識してつくっていった気がします。

 曲調については、『ディスクロニア: CA』は探索/捜査する要素があって、いろいろな問題や感情が畳みかけるように出てくる作品なので、対旋律(カウンター・メロディ)を増やして、ピアノが裏でメロディを弾いているかと思ったら弦にいったり、バイオリンからビオラに変わったり、サックスが出てきたと思ったらトランペットにいったりと、ドタバタ感を意識しました。

――シャッフルっぽい跳ねたビートにしているのも、作品とのリンクがあるんですか?

郡:実は今回、主人公が走ったり逃げたりするシーンが多いんですよ。そういう畳みかける雰囲気を表現したくて、テンポやビートのシャッフル感も意識していますね。

星街:最初にデモを聴いた時点で、かっこよくて、私の好きな感じにドンピシャだと思いました。もともと管楽器が鳴っているような、ちょっとジャズチックな曲が好きなので、「7days」もそういう雰囲気があってクールだし、しかも歌いやすいな、と。ニュアンスも出しやすいレンジになっていて、歌っていてもすごく楽しかったです。

――ジャズチックでクールという意味では、歌枠や歌ってみたなどからもうかがえる星街さんの好きそうなタイプの楽曲ですよね。

星街:そうなんですよ。歌に関しては、今回デモの仮歌を歌ってくださっていた方がすごく上手で、私が曲を聴いて想像したイメージにハマっていたので、その歌い方をかなり参考にさせてもらいました。そのうえで、ちょっとウィスパーっぽく、何を考えているか分からない雰囲気を出してみた感じです。曲調にも合うと思ったし、作品が推理系なので心情が透けて見えないようなものにしたいと思ったんです。それで、落ちサビだけちょっと感情が垣間見えるものにできたらいいな、と思っていました。そこだけぐっとニュアンスが出ていて、私個人としてもお気に入りの部分なので、作品のPVでも使ってもらえて嬉しかったです。

――レコーディングの中で特に印象的だったこともあれば教えてください。

星街:「ひとつひとつのワードのニュアンスをこだわって録ってらっしゃったな」という記憶があって、いろいろとリクエストをいただいて結構リテイクを重ねた気がします。そうやって何度も録音しながら、「ここがよかったから使いましょう」「ここも使いましょう」と、いろんなものを組み合わせていくような感覚で。実は最初に声出しのために歌ったものも録音してくださっていたりもして、「そういう技があるんだ?!」と思ったりしました。

――まずは星街さんがいろんなテイクを出して、それを組み合わせていったんですね。

星街:そうなんです。

郡:どのテイクも素敵だったので、その中で「どれがより映えるだろう?」とパートごとに考えていった感じです。すいせいさんはすさまじく対応力が高くて、ディレクション時にお願いしたことも「じゃあこんな感じですかね?」とさらっと200%のものを上げてくれました。

星街:私の場合、歌うときはいつも「自分の頭の中にある歌声を自分で再現する」という感覚なので、「こういう感じでお願いします」とリクエストがあると、その頭の中の歌声を変えていくんですけど、「7days」では「ここはワーッとした感じにしてください」とある程度アバウトな感じで言ってもらえたので想像しやすかったです。それに、自分の一番いい声を音源に残したいと思っているので、何度も挑むチャンスがあるのも純粋に助かりました。

郡:レコーディングで少しだけお話しする時間があったときに、すいせいさんのオリジナル曲の「バイバイレイニー」や「Je t’aime。」のように、「大人の余裕がある感じの歌声がほしいです」ということも言ったような気がしますね。

星街:そうでした。確かに言っていただいたような気がします。いつもはだいたい、可愛い系の歌だったら口角を上げて歌って、かっこいい系の歌だったらちょっと攻撃性のある歌い方をするんですけど、今回はそのどっちでもなくて、さっきも話したように感情が見えないような雰囲気で歌いました。感情はあまり出さずに、でも要所で垣間見える歌い方にしていて、落ちサビで「あっ、感情が見えるぞ?」と思ってもらって、ラスサビで「バーン!」というような。他の曲だと、「7days」のような歌い方をしている曲はそんなにない気がしますし、新しい境地に挑戦して「こういう曲も歌えるんだな」と楽しかった記憶があります。

郡:すいせいさんが1曲の中でいろんなニュアンスや表情を出してくださっているので、最初から最後まで楽しめる曲になっているんじゃないかな、と思います。僕も期待してレコーディングに臨んだんですが、想像していたものよりも遥かにいいものにしてもらいました。

――星街さんは、歌っていて歌詞で特に好きなところはありますか?

星街:やっぱり、「左手で受け取る」ところじゃないですか? 「♪この左手で受け取ろう~」っていうところ。「何で左手ですか?? 右手じゃダメなんですか?!」って(笑)。

郡:はははは。詳しくは言えませんが、このゲームでは、左手で掴むものは未来を変えることができるんです。右手でカップを持ってもいつも通りですが、左手でカップを持つと、他のキャラクターが持っていたときの過去の記憶や風景が見えたりして、その行動を変えることができます。つまり、左手を使って既に起きてしまった出来事を変えることができるんです。『ディスクロニア: CA』は、そうやって自分の大切な人たちを助けていこうという話なので。

〈VRゲームは感情が伝わりやすい? 二人が考える「バーチャルなエンタメ」〉

――『ディスクロニア: CA』は、VRゲームであることをメインに考えられた作品でもありますが、お2人はバーチャルなエンターテインメントにどんな可能性を感じていますか?

星街:私は初めてVRを経験したとき、「何だこの技術は?!」ってビックリしたんですよ。それまではゴーグルをつけても、基本的に目の前の映像しか見れなかったものが、VRでは横を向いても後ろ向いても景色があって、すごすぎて大感動してしまって。「これからはこういうものが普及していくんだ……!」と未来にワクワクしました。なので、そういう異世界に入れるようなものが普及して、そこにどんどん面白い機能がついて、なおかつゴーグルをつけなくても体験できるような時代が来たら本当に面白いだろうな、と思っています。

――最近はコンタクト型デバイスの研究も進められていますし、もっと手軽に体験できるようになるとエンタメを通してできることもますます広がりそうですよね。

星街:コンタクトで体験できるようになったら本当にすごいですよね。

郡:VRゲームの場合、通常のゲームよりもさらに感情が伝えやすい体験になるのかな、とも感じています。なので、僕もよりそういうものが伝えやすいような、作品で伝えたいことをよりサポートしていけるような音楽をつくっていけたらいいな、と思っています。

星街:ゲームとは違いますけど、MVをVRで表現するようなものも面白そうです。

――星街さんのMVでも「この世界に入ったら面白そう」というものがあるかもしれません。

星街:たとえば、(豪華絢爛なシャンデリアなどを背に歌う『CHUNITHM』収録曲)「自分勝手Dazzling」のMVに入っても面白そう!

郡:ああ、本当ですね。実は僕も、VRの業界に携わろうと思ったときに似たようなことを考えていて、自分が好きなアーティストさんやシンガーさんに楽曲を歌ってもらって、その世界観を360°体験できるような環境をつくってみたいな、という思いで仕事をはじめているんです。なので、そんな世界が来てくれたらいいな、とすごく思います。

――今回の「7days」の楽曲制作は、お2人にとってどんな経験になりましたか?

郡:今回の音楽制作を通して、すいせいさんはいろんな世界観が表現できる方だと改めて思ったので、また機会があればいろんな曲でご一緒できればいいなぁと、レコーディングが終わってから思っていました。また機会があるなら、管を入れつつも今回とはまた違うタイプのものもつくってみたいですし、めちゃくちゃエモいバラードでも面白そうですし、「GHOST」みたいな曲でも面白そうですし――。どんな曲でも歌いこなしていただけそうです(笑)。

星街:改めて、初めてゲームの主題歌を歌わせていただいて本当に嬉しかったです。「7days」は『ディスクロニア: CA』の要素が詰まった楽曲になっていますけど、私が好きなとあるRPGゲームも、同じように主題歌の中に作品のいろんな要素が詰め込まれていて、クリア後に聴くと「そういうことか……!」となるものがあったりして。そこからさらに、楽曲をリピートしまくった経験がありました。今回『ディスクロニア: CA』をプレイしてくれた人たちが、クリアした後に同じような気持ちを体験してくれるような、ゲームを彩れるような曲になっていたらいいな、と思っています。そういう機会をいただけてとても嬉しかったです。

――そのRPGって何の作品だったんでしょう?

星街:『テイルズ オブ ジ アビス』です。主題歌の「カルマ」(BUMP OF CHICKEN)の「ひとつ分の陽だまりに/ふたつはちょっと入れない」というルークとアッシュのことが歌われている歌詞に、クリアした後で「うわぁ……!! なるほどなぁ!」って思ったんです。そういう経験を、今回の曲でも経験してくれる方がいてくれたらとても嬉しいです。

――最後に、せっかくなので何か聞いてみたいこともあれば教えてください。

星街:郡さんは曲をつくるときはどこからつくりますか? 実は最近、私も作曲をはじめてみようと思っているんです。

郡:Twitterで呟かれているのを見て、「もう無敵じゃん……」と思っていました(笑)。

星街:それで最近、『Cubase 12 Pro』を買いました。次のコードを出してくれる機能があって、作曲の初心者にも使いやすいと聞いたので。まだ全然触れてはいないんですけど、いつか自分でも曲がつくれるようになれたらいいな、と思っています。

――時間があるときに曲やメロディを考えたりもしているんですか?

星街:まずは鼻歌からという感じです(笑)。でも、メモするすべを持たないという。

郡:僕もメロディから考えるタイプなんですが、割とモチーフを決めて想像していくことが多いです。昔は自主で作品をつくったりもしていたんですけど、そのときも頭の中で勝手にストーリーをつくって、「こんな少年をテーマにしようかな」「こういう女の子の物語にしようかな」と考えつつ、風呂場で鼻歌を歌いながらつくっていました。

星街:そういえば、私もお風呂で何かを思いつくことが多い気がします。実は、「GHOST」の歌詞を思いついたのもお風呂だったんです。バーチャルなアイドルやアーティストの人たちが、二次元だけれど魂を持った存在だということを無視されがちに感じていたので、そういうことを表現できる「ねぇゴーストみたいだ」という歌詞が浮かんだときに「いいなぁ」と思って。それで「私に歌詞を書かせてください」とお願いしました。

――音楽の話をしていたのに、気づいたらお風呂の話になってしまいました……。

郡:風呂が最強です(笑)。

星街:お風呂最強!! みんなお風呂に入ろう!!(笑)。

(取材・文=杉山 仁)

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