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『グッバイ・クルエル・ ワールド』大森立嗣監督&西島秀俊インタビュー「“分からない感情”にどう向き合っていくのかが大事」

ガジェット通信

西島 ずっと大人になりたいと思ってきたので、もう、本当に嬉しい言葉です。どうやって大人になるのかって思ってきたので。

大森 俺の中では、いろんなことが繋がっているんです。西島さんが背負わないといけないものとか…。同年代同士の仕事という意味も含めて。好きなことだけをやっていられない年頃になってきたからね(笑)。そういうのを感じ取ってくれる人じゃないかなっていう意味での大人です。ただ、普段は割と子供っぽく笑ってましてね。

西島 現場では、そうですね(笑)。もうこの現場はお祭りですから。すごく楽しかった。

――西島さんが感じた、大森監督らしい演出ということはありましたでしょうか。

西島 僕も大森監督の作品を色々観ていて。他の監督では撮れない、生々しい…登場人物が本当に生きているような作品で。大森監督の作品と、他の作品では、俳優さんが明らかに演技が違うので、それに興味があったし、自分も出たいという気持ちがずっとありました。だから、今回、呼んでいただいて嬉しかったです。現場では、「あ、なるほど…こういうことか!」って。役者さんがキャラクターを演じる、というよりは、本人なのか役なのか分からないけど、生々しく映画の中で生きている感じになる。すごく納得しました。

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大森 こうやって、映画が終わって話す機会って、なかなかないんですよ。だから変な感じ。ちょっと照れくさい感じです。

西島 大森監督の作品ってみんな出たがるんです。今回も豪華な俳優さんたちが集まっていて。うまく説明できないのですが、まだ感情が形づくられる前に本番に入る感じがしました。まだ本人も登場人物が、どんな感情を抱いているのか分かってない。この役は悲しいのか寂しいのか、怒っているのか、絶望しているのか、分からない状態を捉えようとしてる。難しいことですから、それを理解している、常連の方たちが集まっているのかなと思います。監督も感情を決めて演出することもないし、むしろ何かを決めつけて演技をすることに対しては徹底的に「それ、違う」って崩していく。

――西島さんにとっては、その演出方法は新鮮でしたか?

西島 僕も共感を覚える演出の仕方でした。カメラの前では、そうありたいなって。実際、生きていると感情が分からなくなることもあるわけだから。

大森 僕の中では感覚的にやっていて、こうやって言葉にしていただけると、「確かにそうだな」と思います。例えばト書きに「笑う」って書いてあると、笑わないといけないって思っちゃうじゃないですか。もっと言うと「涙」って書いてあると、泣かないといけないと思うんだけど。僕は「泣きたくなかったら泣かなくていいですよ」って、なっちゃうんですよ。

だって、その場に立っているのは俳優さんで、俺はカメラの横で見てる側だから。その感覚を知っているのは、演じている人だけなので、その感覚にお任せしたい。もちろんスケジュール内に撮り切らないといけないから、一応プランは考えていくんですけどね(笑)。

――ポスタービジュアルがポップなテイストとなっていますが、内容はバイオレンスで、社会と繋がりを持てない人のフラストレーションを感じました。監督としてはどの様な想いをこの作品にこめましたか?

大森 社会からドロップアウトしてしまった人たちに対しての、社会的なセーフティーネットを作っていく必要がある、ということはずっと思っていることの一つではあるので。映画で出来ることは、そういう人たちにも、ちゃんと視点があって考えがあるんだっていうことを伝えることかな、と。分からない感情に対して、どういう風に向き合っていくのかっていうのが、本当に大事。生きていく上では、分からないことの方が多いじゃないですか。分からない時に、俳優さんが肉体と感情を用いて表現してくれるということが、実はすごく救い、助けになるんじゃないかなってことを信じて映画を作っていますけどね。

西島 この作品の中で描かれている人たちは、もう少し前だったら生きていけたのに今は行き場がない。こういうふうに犯罪をして。生き延びるために勝負をかけるわけで。その部分は現代を映し出していると思います。監督がおっしゃる通り、キャラクターが生きて感情を持った人間として見ていただけたら、自分と全く関係のない世界の人間じゃなくて、「同じ感覚を持った、同じ人間なんだって感じていただけたら。みんなが生きていく中で、一つプラスになるかなと。一番は映画をエンタメとして楽しんでいただければ良いんですけど。持ち帰っていただけるものがあれば、幸せだなと思います。

――今回、高田亮さんのオリジナル脚本ということで。ある程度、話の骨組みを作ってから進めていったのでしょうか。

大森 本当に大雑把な骨というか、こんな人たちが出てきて、こんな話がいいなっていうのは甲斐(真樹)さんという企画プロデューサーと話して。あとは高田がストーリーというかプロット的なものを作ってきて、それが良い感じだったので本格的に始動していきました。一発目で「良い感じじゃん!」ってなったんですよ。高田とは古い付き合いなのですが、久しぶりの再会になりました。お互い、『ゲルマニウムの夜』(2005)を作ったあと、4年間くらい映画をつくれない時期があったんですけど、高田と一緒に脚本を書いていました。何にも求められてない脚本を書くって、すごく豊かな時間なんですよ(笑)。

――締め切りもなくて。

大森 なくて! ああでもない、こうでもないって二人で言ったりして。その後『さよなら渓谷』(2013)を作ったんですけど、彼も忙しくなってきてたし、お互い頑張っていて会わなくてもよくなった時期があって。でも、ずっと同志のような存在でした。それで久々に再会して本作を作ることになって、そのことが楽しくてさ。昔みたいに絡みながらやるの楽しいよね、高田!って(笑)。「何も変わってないな、お前!」って軽口を叩きながらやるのが楽しかったですね。

――素晴らしいご関係ですね。今日お2人にお話を伺って、またぜひ大森監督と西島さんの映画を観てみたいです。

西島 (大森)南朋君とのシーンは、もっとやりたかったです。だんだん年齢が上がっていくと、その現場で一番年上になることも増えてきて。南朋君とは同世代で、すごく楽しかった。今50歳くらいの役者を集めて作品を作りたいです。誰か企画してくれませんかね(笑)。

大森 そうだよね。同世代と仕事が出来ることは楽しい。

西島 僕、こないだ、お父様(麿赤兒)とも仕事させていただていて。

大森 一家コンプリートですね!(笑)

――今日は本当に素敵な、楽しいお話をありがとうございました!

撮影:山口真由子

(C)2022「グッバイ・クルエル・ワールド」製作委員会

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