このほかにも、サイドはさまざまな心理学・哲学の知見や有名な人物のエピソードなどを引きながら才能神話を解体していき、その内容はいずれも興味深い。たとえば反射神経について。卓球における殺人スマッシュを難なく打ち返せるサイドが、速度としてはより遅いテニスのサーブにまったく反応できなかったことを起点に、実は「反射神経」というものが生得的なものではなく、その競技におけるパターンを認識した結果に過ぎないという議論を導き出していく。一つひとつの「才能」の根拠を潰していく手腕は鮮やかで、自分も努力次第でどうにかなるのかも、という希望を『才能の科学』は提示してくれる。
現在も「才能とは何か」についての確固たる統一見解がない以上、『才能の科学』の主張を「正しい」と断言することはできない。しかし、自分の可能性をあきらめず、挑戦してみる価値はある。少なくとも、そのように思わせてくれるポテンシャルを、この『才能の科学』という本は有しているのである。
【クイズの答え】
3。なお、このコマーシャルについて著者は、「精神的なタフさと勇気は、身体的な強みにはるかにまさる」というジョーダンの言葉を引いたうえで、失敗を受け入れる心の重要性について指摘している