どんなに客観的に全体を観ているつもりでも、人は信じたい物語を信じて動いてしまう。弓弦の証言を盲目的に信じてしまった鹿浜たちを通して、先入観や偏見から逃れられることの難しさを追体験させられた苦い回だった。
最後に、弓弦の姿を見て『それでも、生きてゆく』(フジテレビ系)の三崎文哉(風間俊介)、『問題のあるレストラン』(フジテレビ系)の雨木太郎(杉本哲太)、『カルテット』(TBS系)の来杉有朱(吉岡里帆)といった、過去の坂元裕二作品で描かれてきた、理解の及ばない暴力的な他者たちのことを思い出した。
「理解の及ばない他者といかに向き合うべきか?」というのは坂元裕二作品に通底するテーマだ。仮に生まれついてのシリアルキラーがいたとしても、殺人の動機や理由を「考えることを放棄してはならない」と鹿浜が言う場面にそれは強く現れている。
だが同時に、自分たちの常識の範囲に相手を押し込み、理解したつもりになる傲慢さも、坂元裕二は認めない。だからこそ、三崎文哉たち暴力的な他者との対峙は、苦い断絶として常に描かれてきた。
ついに最終回。鹿浜たちは弓弦という他者と、どう向き合うのか?
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(成馬零一)