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『初恋の悪魔』数分の間に起きた弓弦の豹変 坂元裕二が描いてきた暴力的な他者との対峙

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『初恋の悪魔』©︎日本テレビ

 最終回を前に、怒涛の盛り上がりをみせた『初恋の悪魔』(日本テレビ系)の第9話。本作は4人の警察関係者が捜査権を持たない事件を独自に“考察”する姿を描いた坂元裕二脚本の刑事ドラマだ。

【写真】『初恋の悪魔』出演の菅田将暉の弟・菅生荒樹

 森園真澄(安田顕)は、連続刺殺事件の被害者となった塩澤潤(黒田陸)、吉長圭人(石橋和磨)、望月蓮(萩原竜之介)の家を訪ねたことで、彼らが12歳の時に同じアウトドアクラブに在籍していたという接点を見つける。同じ頃、鹿浜鈴之介(林遣都)は馬淵朝陽(毎熊克哉)が転落死したホテルで、従業員から事件当日に屋上で境川警察署の署長・雪松鳴人(伊藤英明)を見たという証言を得る。

 そして、摘木星砂(松岡茉優)は被害者3人が在籍するアウトドアクラブで一人の少年が溺死したという過去のニュースをネットで見つける。それぞれが掴んだ情報によって雪松の疑惑が深まっていく中、馬淵悠日(仲野太賀)と小鳥琉夏(柄本佑)は、尾行していた雪松の息子・弓弦(菅生新樹)が、事件の証拠となる靴を捨てようとしているところを目撃し、身柄を確保。「父が望月くんたちを殺しました」と弓弦は告白する。

 現場に行かず、容疑者とも被害者とも接触せずに事件を考察する「自宅捜査会議」から始まった本作だが、今回は鹿浜たちが現地に向かい、聞き込みをしていく中で浮かび上がっていく点の情報が線になっていく様子が描かれている。刑事ドラマとしては王道の展開だ。

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 一方、強い正義感と元弁護士としての法律の知識。そして小説家としての想像力を武器に突き進む森園はミステリードラマでは定番の変人キャラの名探偵のようで、雪松を問い詰める姿はとても勇ましい。だが、なまじ現場に向かい関係者と会ってしまったからこそ、彼らは先入観に囚われ、大きな判断ミスを犯してしまう。

 雪松弓弦、刺殺事件の被害者三人(塩澤、吉長、望月)、そして溺死した少年・磯谷大地(新城政宗)は、12歳の時に同じアウトドアクラブのメンバーだった。5人でキャンプに向かった弓弦は、父が磯谷をキャンプ場にある川に何度も何度も突き落とし、溺死させる場面を目撃する。

 磯谷の死は事故として処理される。しかし、事件を忘れた中学生の頃に弓弦は塩澤と出会い「お金を貸してくれ」と事件のことをネタに脅迫されたため、雪松は塩澤を刃物で殺害。その後、吉長、望月も同じように雪松に殺されたことが、弓弦によって語られる。ボイスレコーダーを通して弓弦の証言を聞いた4人は雪松の逮捕を決意する。

 翌朝、鹿浜と馬淵は雪松の自宅に向かう。同じ頃、二階の部屋で休んでいた弓弦の手に吉長が殺された事件の時に浮上していた容疑者の証拠となる「左腕の肘に火傷の字」があったことを目撃した摘木は、危険を察して部屋から出る。しかし弓弦は摘木の持ってきたおにぎりを咥え、鹿浜の部屋に飾ってあったハサミを握って彼女に襲いかかる。

 悠日と鹿浜が雪松を逮捕に向かう場面でエンドロールに切り替わり、最後の数分で弓弦の豹変が描かれる。「おにぎり」というもっとも日常的な食べ物を咥えながら、ハサミという凶器を持って襲いかかる弓弦の姿は、犯罪と同じ比重で食事シーンを描いてきた本作をもっとも象徴する存在だと言えるだろう。

 放送を観終えて最初に感じたのは、火傷の痣を見るまで弓弦が犯人である可能性について全く考えずに自分がドラマを観ていたことに対する驚きだ。雪松の殺害シーンが静止画の連続だったことが妙な違和感となって残っていたため、弓弦の証言を聞いた悠日たちの想像でしかなかったことを表現していたことは、後から考えると納得できるのだが、会話の情報量の多さとテンポの良さに押されて、いつの間にか見逃していた。何より、雪松を逮捕するという物語に酔って見えなくなっていたのだろう。

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