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半同棲し、惰性で付き合い続けていた彼氏と27歳で破局。慌ててマッチングアプリを始めた結果…

東京カレンダー

20代後半から30代にかけて訪れる、クオーターライフ・クライシス(通称:QLC)。

これは人生について思い悩み、若さだけが手の隙間からこぼれ落ちていくような感覚をおぼえて、焦りを感じる時期のことだ。

ちょうどその世代に該当し、バブルも知らず「失われた30年」と呼ばれる平成に生まれた、27歳の女3人。

結婚や仕事に悩み、揺れ動く彼女たちが見つめる“人生”とは…?

▶︎前回:商社マンの夫が、出張で不在にしている間に…。セレブ妻が白昼堂々と、自宅で耽っていた最低な行為



葵「振り返れば、悩んだ時間も含めて大きな1本道になっていた」


亜希さんに出会い、人生に悩み始めて3年が経った。

スマホのアラームで目覚めた私は、ベッドの上で大きく伸びをし、LINEをチェックしてからモゾモゾと動き出す。顔を洗ってパックしている間に、クローゼットの扉を開けた。

「何を着ようかな…」

昨夜、今日着る服を決めておいたのだが…。今朝は想像以上にヒンヤリしていたので、急遽洋服を変えたくなったのだ。少しの間悩んで、トップスを白のサマーニットに変更する。

三宿に引っ越したことで、私の家は少しだけ広くなった。

でも結局、私は転職もせずに同じ会社で働いている。ちなみに結婚もしていない。

だけど20代の頃より、毎日がずっと楽しいのだ。

ギュウギュウの東急田園都市線に乗り、赤坂のオフィスを目指す。駅を出た瞬間に、強いビル風が吹いた。

もう30歳、まだ30歳。でも確実に、今が人生で一番幸せだと言える気がする。


待ち合わせのお店へ向かうと、美咲はすでに到着していた。左手の薬指には、綺麗な指輪が光っている。

「美咲!なんか久しぶりだね」
「そうだね〜。鎌倉に引っ越してから、東京来るのが面倒になっちゃって」

美咲は1年前に結婚し、夫の住む鎌倉へと引っ越した。Webデザイナーの彼とはマッチングアプリで知り合ったそうで、交際半年のスピード結婚だったのだ。

彼女から「海が好き」なんて聞いたことがなかったので驚いたけれど、どうやら鎌倉という土地が合っているらしい。

「やっぱり東京の空気って重いよね。葵も、鎌倉遊びにきてよ」
「うん。また近々、遊びに行きたい!」

同期の翔太くんと長年交際していた美咲。けれども何かがあったようで、転職と同時に別れた。

彼女は私たち3人の中でも、一番の安定志向派。

そんな美咲が、結婚目前だった彼と別れ「メガバンクも辞める」と言ったときには驚いた。けれど今の彼女を見ていると、とっても幸せそうだ。



「美咲は後悔してないの?安定したメガバンクを辞めたこと」
「まっっったく!むしろ、もっと早く行動すればよかったなと思ってるくらいだよ。意外にも、今の仕事のほうが合ってるみたい」

美咲は半年ほど仕事を休んだ後、フェムテック系のベンチャー企業へ転職した。

「一歩踏み出す前は怖かったよ?うまくいく保証もないし、彼氏と別れてこの先結婚できるかどうかもわからなかったし。でも思い切って一度手放してみたからこそ、得られたものが大きくて」

そう話す美咲の表情は、清々しかった。

3年前の彼女は、会うといつも悩んでいたイメージがある。

現状でも十分幸せだけれど「これでいいのかな…」と自問自答していることが、傍から見てもわかった。

でも、とことん悩み抜いて自ら行動した結果、今の幸せを掴めたんだと思う。

「美咲、いい表情してるね」
「何それ!葵もね。なんかまた綺麗になったんじゃない?彼氏できたの?」
「それがさ~」

そんな話をしていると、遅れて遥がやってきた。



「遥先生の登場だよ〜」

今では、すっかり有名な料理研究家になった彼女。白のふんわりとしたトップスに、ヴァレンティノのバッグを持って登場した遥は、雰囲気も変わっていた。

「ごめんね、取材が長引いちゃって」
「いいのよ〜。大先生ですから」
「やめてよ、その呼び方(笑)」

SNSから人気に火がついた遥は、初めて出した料理本が大ヒット。それをキッカケに、最近はメディアにも出ている。

「よし!じゃあ3人そろったから、飲みますか!」
「私はいつものウーロン茶で」
「美咲はね。遥は?何飲む?」
「それが、実は…」

そう言うと、遥がそっとお腹をさすった。


クオーターライフ・クライシスを経て、何かを掴んだ女たち


「えぇ〜!遥、もしかして…」
「そうなの。安定期に入りました」

幸せそうにお腹をさする彼女を見て、思わず泣きそうになる。友達がママになるというのは感慨深い。

「おめでとう!男の子?女の子?」
「まだわからないんだけど、どっちでもいいかな」
「遥、本当におめでとう!」

3人とも、思わず声が大きくなる。

「子どもも生まれるし、引っ越すことになって。落ち着いたら遊びに来てね」



「どこに引っ越すの?」
「今は中目黒のほうで探してる。でもスタジオも兼ねたいから、学大あたりの一軒家もいいなと思ってて…」
「さすが大先生。稼いでますね~!」

すっかり有名になった遥だけれど、こんなにも自分らしく輝く道を見つけられたなんて。3年前には想像すらできなかった。

結婚を機に仕事を辞めて、主婦業に精を出していた彼女。でもちょっと厄介な料理研究家のアシスタントになり、人生の扉を開いた。

遥から聞いた“アシスタント”の仕事内容は、このご時世、珍しいくらいにブラックなものだったが…。遥は、ものすごく頑張ったのだ。

3人の中では一番おっとりしていて、夫の影に隠れているタイプかと思いきや、実は一番根性があったのかもしれない。

そしてSNSを味方につけて、才能が花開いた。

「3年前は、まさか私がこんなふうになってるなんて思わなかったな…。SNSをうまく使えば、有名になれることもあるんだなあって、実感してる」
「そうだね。でも遥はすごいよ」

ずっと同じ場所にいるのかと思っていたけれど、気づけばそれぞれの道を歩き出していた私たち。

20代後半、それぞれもがいていた。必死にもがいて、それでも答えの出ない原因不明のモヤモヤに苦しめられてきた。

でも逃げ出さずに、目の前のことにちゃんと向き合った結果、私たちの道はパァッと開けていったのだ。



「あの悩んだ時間って、無駄じゃなかったなと最近よく思うんだよね」

遥が放った言葉に、私たち2人も大きく頷く。

「アシスタント、何度も辞めようと思ったんだけど。でもここで辞めたら後悔すると思ったし、悩んでる暇があるなら少しでも体を動かして、行動しないとダメだなって」

すると美咲も、うんうんと首を縦に振りながら言う。

「あと30歳になって、いい意味で現実が見えてきたよね。白馬の王子様は現れない。でも意外に、自分なりの幸せを見つけられるって気がついたし」

悩んだ時間は、無駄じゃない。そこにはきっと、意味がある。

私だってウジウジ悩んだ時期があったからこそ、今があるのだ。

「じゃあそれぞれの未来に。遥の妊娠と、私の結婚。そして葵の人生に乾杯!」
「私だけザックリだな(笑)」
「まぁまぁ。それだけ人生全般、幸せってことじゃない?」
「そうだね」

あのときの私に、今なら言える。「振り返ったとき大きな1本道になっているから、自信を持って」と。

「すっごい派手じゃないかもしれない。でも私は今、幸せなんだ」
「そう思えることが一番大事だよね」

美咲の終電が迫っていたので、この日は少し早めに解散した私たち。

「じゃあまた、すぐにね」
「うん。遥の出産前にまた集まろうね!」
「バイバ~イ」

私たちは大きく手を振ってから、笑顔で歩き出した。

幸せになるために。そして、それぞれの自己実現のために…。


Fin.


▶︎前回:商社マンの夫が、出張で不在にしている間に…。セレブ妻が白昼堂々と、自宅で耽っていた最低な行為

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