しかし当時はそれほど、セールスが伸びなかった。
「尾崎豊の名を誰もが知るようになったきっかけは、『卒業』(’85年)だったのではないでしょうか」(牛窪さん・以下同)
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学歴社会、管理教育が社会問題化していた時代に、尾崎は“若者たちの教祖” “10代のカリスマ”と祭り上げられた。
「“ツッパリ文化”が台頭していた’80年代、警察を“ポリ公”、教師を“先公”と呼び、公権力に反発する風潮はすでにありましたが、尾崎は社会や道徳、倫理といった、もっと大きな支配からの“卒業”を題材としました。だからこそ、時代が移り変わっても普遍的に愛されているのではないでしょうか」
『I LOVE YOU』『OH MY LITTLE GIRL』(ともにアルバム『十七歳の地図』収録)などを生み出し、スターダムを駆け上がった尾崎。だが、常にスキャンダルがつきまとっていた側面もある。
「’87年に覚醒剤取締法違反容疑で逮捕され(’88年に懲役1年6カ月、執行猶予3年の判決が下される)、’91年には女優の斉藤由貴さんとの不倫が発覚。そして’92年、不審な死を遂げてしまいます。多くの謎を残した、あまりにも突然の死に、ファンのみならず一般の人々も衝撃を受けました」
生きていれば今年、56歳――。つねに生きづらさを抱えていた尾崎は、いまの社会をどのように歌い上げただろうか。