ATのオーバードライブスイッチを使うと、何ができる?

急勾配で長い山道は、登るのも下りるのもODスイッチOFFが有効 ©s.narisawa/stock.adobe.com

ONならオーバードライブギアを含めた自動変速

かつて4速AT時代にはほとんどの車へ装備されていたODスイッチですが、通常の状態が「ON」で、オーバードライブギアを含む範囲で自動変速が行われます。

おそらくほとんどのドライバー、特にAT限定で運転免許を取得した場合、「D(ドライバー)」に入れた後は完全にクルマ任せのコンピューター任せで自動変速させるのが当たり前となっており、ODスイッチの装着率が高い4速ATの時代でも、OFFにして走る事は少なかったはずです。

OFFではオーバードライブギアを使わない自動変速

通常の状態からスイッチを押せば「OFF」で、流れが悪い道や、オーバードライブギアの回転数では登坂するのにトルク不足など、頻繁にシフトダウンする場合や、長い下り坂でエンジンブレーキを多用したいなら、直結ギア(4速ATなら3速)までの範囲で自動変速させます。

エンジン回転数が上がり気味で燃費が悪そうですが、アクセルを一定に保てばかえって燃費がよかったり、変速ショックを減らして快適性を上げ、ブレーキの摩耗を抑えてフットブレーキの使いすぎによる過熱など故障も回避できるメリットもあり。

電子制御の発達でコンピューター任せになる前は、ATでもドライバーがこの程度の選択はする必要があったのです。

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他にもある、ATの手動操作方法

シーケンシャルシフト式のマニュアルモードを持つATシフトセレクター ©Phuri/stock.adobe.com

エンジン性能に余裕の出たクルマが経済性を高める手段としてオーバードライブ領域の活用が始まり、大昔のMT車を除けば、「AT車の自動変速範囲をユーザーがある程度は手動で選択する」という役目が主だったODスイッチ。

最後に、AT車で他にもいくつかある手動操作方法を説明します。

通常のAT車でもMT感覚の操作

普通のAT車でも、シフトセレクター(大抵はレバー式)やODスイッチを駆使して、ある程度MT車並みの変速操作が可能です。

4速AT車なら「D(ドライブ)」のままオーバードライブONで4速から、OFFで3速、セレクター操作で2速や1速へ手動シフトダウンできますが、「この回転数以下ならシフトダウンする」というリミッターがあり、エンジンブレーキかフットブレーキで減速(回転数低下)が必要になります。

レーシングカートのように左足ブレーキを駆使する上級テクニックもありますが、ミニサーキットなど練習できる環境で慣れないうちは、公道でも試すべきではありません。

各モードの活用

車種によっては、シフトセレクターやコンソールのモードセレクターで、それぞれ変速に関わる制御のモードを選択できます。

もっとも生活に身近なのは、雪道や凍結路などのスリップしやすい路面で、あえてエンジン回転数を抑えた2速発進、低いトルクによる穏やかな走行を可能にするスノーモードで、やり方は車種によって異なるため、説明書などで把握しておきましょう。

他にスポーツ走行重視のスポーツモードや、SUVでは極端な凍結路や積雪路、悪路を安全に走り切る、スタック脱出など特殊なモードでは、エンジンやブレーキ、ATとの統合制御を最適化するよう、手動で選択可能です。

MT感覚が味わえるマニュアルモード

スポーツ系の車種やグレードでは、多段式のステップATかセミAT、さらに通常は無段階変速のCVTでも何段か固定した変速比を設定し、手動変速可能なマニュアルモードがあります。

フロア式シフトレバーを前後に倒すシーケンシャル式、ステアリングのノブやボタンを操作するスイッチ式、ステアリング奥のパドルを操作するパドルシフト式と変速方式は多様。

ただし、直線の多い高速走行ならともかく、激しいステアリング操作を行う本格的なスポーツ走行でスイッチ式やパドル式は操作しにくいものが多く、MTと似たシーケンシャル式が一番使いやすいかもしれません。

クラッチを切った状態からのゼロ発進以外、AT限定免許のドライバーでもMT並の操作ができる装備ですが、スポーツ走行以外では必要性が薄いため、最初だけ物珍しさで遊ぶものの、その後は放置というドライバーも多そうです。

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