大抵のミッションにはある、オーバードライブって何?

側面の上から二番目、親指で押しやすい位置にある典型的な「ODスイッチつき4速AT」©Hazrat Bilal/stock.adobe.com

変速比が異なる複数のギアから最適を選択する変速機(ミッション)

一般的に、走行性能と経済性(燃費)のバランスは変速比1.000、すなわちエンジンのクランクシャフトの回転を、減速せずミッション(変速機)から先へそのまま出力する「直結」が最適。

ただし、ほぼ0回転から最大トルクを発揮するモーターならともかく、内燃機関(エンジン)は低回転でトルクが少なく、発進や加速、登坂時には高回転での大トルクが必要です。

速度や勾配など走行環境に応じた最適な回転数を得るため、変速比が異なる複数のギアを駆使するのが変速機で、大きく分ければ手動変速するマニュアルトランスミッション(以下、MT)、自動変速するオートマチックトランスミッション(以下、AT)があります。

技術の発達が利用可能にした、経済性の高い変速比がオーバードライブ

さらに、エンジンの発達で高速巡航や、ある程度までの速度は最適回転数未満でも走行可能になると、低燃費で部品の摩耗も少なく経済的な領域、「オーバードライブ」を有効活用する変速比1.000未満のギアを使うようになりました。

昔はオーバードライブ領域のギアを「オーバードライブギア」、あるいは直結を「トップ」として「オーバートップ」などと言った時代もあったものです。

現在のクルマでも、変速機があるなら「オーバードライブ」と呼ばれる変速比の領域を使いますが、最近は「オーバードライブスイッチ(以下、ODスイッチ)」がほとんどなくなったため、用語としても使う機会は減りました。

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昔のミッションにはなぜオーバードライブスイッチがあった?

5ATだった日産 NV350キャラバン(「キャラバン」へ車名が戻る前のE26型)ににもODスイッチはあった

ATの制御が未発達の時代には必要だった、ODスイッチ

大昔はMTでもATでも、通常のミッションへオーバードライブを追加し、使用はドライバーによるODスイッチ操作で選択式でした。

オーバードライブギアを組み込むのが当たり前になるとMTからODスイッチは消えますが、ATではエンジンブレーキ多用、加速重視などオーバードライブギアへの自動変速を避けたい時もあります。

そのため任意でオーバードライブギアの使用をOFFにできるODスイッチを残した方が好都合でしたが、現在のATは技術の進歩により、コンピューター任せで十分になりました。

信頼性や耐久性を重視するなど何らかの事情で、あえて昔ながらのメカニズムを踏襲する一部車種を除き、ODスイッチの必要性はなくなったのです。

中にはODスイッチがないAT車もあった

なお、最初からオーバードライブギアを持たないAT車はもちろん、昔でも全てのAT車にODスイッチがあったわけではなく、ホンダのように4速ATのシフトセレクターを「D4」(オーバードライブON状態)、「D3」(OFF状態)とした例もあります。

また、走行状況に応じた無段変速機構であるCVTも、ODスイッチはありません。

代わって増えたのは「スポーツ」や「スノー」を意味する「S」モードなどモード切り替えスイッチと、マニュアルモードです。

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