15代目をもって、保守層ユーザー向けと革新的なユーザー若返り策の間で揺れ動きつつも存続してきた「トヨタ クラウンの歴史は終わり、16代目から「世界のクラウン」として再出発するクラウン。

それは日本の自動車界にとって、15代続いた徳川幕府による江戸時代の終焉と、明治維新に匹敵するほどの歴史的転換点でした。

この機会に、徳川幕府の代表的な将軍と、同じ代のクラウンを比較する第2弾は、江戸幕府とクラウン幕府の安定期と、終焉を見届けた3つの世代を紹介します。

生類憐みのクラウン(5代・1974年・徳川綱吉)

保守的な4ドアセダンを分離、パーソナル志向の4ドアHTと2段構え

トヨタ 5代目クラウン
トヨタ 5代目クラウン

徳川綱吉と言えば「生類憐れみの令」で犬をはじめとする動物への殺生を禁じるだけでなく、「お犬様」と腫れ物扱いさせて「犬公方」と呼ばれた悪い将軍というイメージが後世に伝わっていますが、学問を重んじる文治政治で武士の官僚化を進める一面もありました。

一方の5代目クラウンも、それまでタクシーや法人向け4ドアセダンをメインとしていたのが、初めて個人用途向けの4ドアハードトップが登場、成功したサラリーマンや自営業者が「いつかはクラウン」と憧れる元祖となったモデルです。

両者の4代目には武士であれば文武両道、クルマであれば法人用途と個人用途の両立を図った点に共通項があり、綱吉の生類憐れみの令は次世代に引き継がれませんでしたが、クラウンの2本立て路線は後年にもロイヤルサルーンとアスリートという形で続いています。

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暴れん坊クラウン(8代・1987年・徳川吉宗)

3ナンバー専用ボディにV8エンジン、バブルで暴れた8代目

トヨタ 8代目クラウン
トヨタ 8代目クラウン

静粛性の高いエンジンに3ナンバーワイドボディの正装で現れた4000ロイヤルサルーンGに、悪代官(誰?)が「これはまさか…レクサスLSの1UZ-FE?!ええぃ、上様がこのような場所へいるはずもない!切り捨てぃッ!」と叫びそうな「暴れん坊クラウン」。

実際は数か月後に日本でもセルシオ(初代レクサスLS)が発売され、そちらが「上様」になってしまいましたが、バブルの波に乗って豪華絢爛、3ナンバーボディも登場して歴代最高の販売台数により大人気となったのが、8代S130系クラウンです。

徳川幕府8代吉宗の方は、TVドラマ「暴れん坊将軍」シリーズで超メジャーな将軍。

8代目クラウンと同じくさまざまな改革に手をつけたものの失政が多く、百姓一揆の頻発や経済の停滞、家督を譲った9代家重の能力不足も、9代目クラウン前期のデザインに不評にイメージが重なり、8代目は「有名で華やかなイメージだけど苦労人」が共通項でした。