ラッコが増えると、コンブも増える。ラッコが減少すれば、コンブも減少する。一見不思議にも思えるこの連動は、高校生物の知識で説明することができます。伊藤和修氏の著書『大人の教養 面白いほどわかる生物』(KADOKAWA)より一部を抜粋し、異種間の関係を見ていきましょう。現在の高校生物の教科書に準拠した内容ですので、教養にしては少々詳しすぎる部分もあります。受験対策をするわけではないので、ややこしいと感じる部分は、サラっと読み飛ばしてしまってOKです。
<前回記事>
【大人の教養】エビとウニ、動物界で「ヒトと近い」のはどっち?
生態的地位(ニッチ)と共存
~生物にとって「種間競争」は“できれば避けたいモノ”
出所:伊藤和修著『大人の教養 面白いほどわかる生物』(KADOKAWA)
生態的地位と共存生物群集において、ある生物が必要とする食物や生活空間、時間といった資源の種類や資源の利用のしかたをまとめて生態的地位(ニッチ)といいます。難しい用語ですので、少しずつイメージをつかんでいきましょう。
種Aと種Bの生態的地位が極めて似ている場合、どうなるでしょう? 同じ場所で、同じ時間に同じような食物を食べて…
出所:伊藤和修著『大人の教養 面白いほどわかる生物』(KADOKAWA)
そうそう! 生態的地位が非常に近い種が同じ場所にいると種間競争(しゅかんきょうそう)が起こってしまう可能性が高いんです! 強烈な種間競争が起こると、一方の種がその空間から排除されてしまう場合があります。これを競争的排除(きょうそうてきはいじょ)といいます。
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冒頭の会話にもあるとおり、種間競争に勝ったとしても、競争にエネルギーや時間を費やしていますから、種にとっては損失になってしまうんですよ。だったら、種間競争をなるべく緩和して…、できれば回避したいと思いませんか?
そこで、生態的地位を本来のものからズラすことで種間競争を緩和する場合が多くあります。たとえば、食べる餌を変えてみたり、生活空間をちょっと変えてみたりするんです。
出所:伊藤和修著『大人の教養 面白いほどわかる生物』(KADOKAWA)
さらに生態的地位の近い種と共存する場合に、単に生活空間などを変えたりするだけでなく、形質の変化をともなう場合があります。この現象を形質置換(けいしつちかん)といいます。
被食者-捕食者相互関係
~「食われる側」が減ると、「食う側」も減る
次は、被食者-捕食者相互関係(ひしょくしゃ-ほしょくしゃそうごかんけい)、いわゆる「食う-食われる」の関係について。もちろん、食われる側が被食者で、食う側が捕食者ね。被食者と捕食者の個体数の変動のようすを示したグラフ(図表1)を見てみましょう! 何か気づくことはないですか?
出所:伊藤和修著『大人の教養 面白いほどわかる生物』(KADOKAWA)
そのとおり! もうちょっと正確にいうと、捕食者の個体数変動のほうが少し遅れているよね。被食者が増えると「餌が増えてうれしい!」と捕食者が増える。被食者が減ると「餌不足だ…」と捕食者が減る、という流れです。
共生と寄生
~共生には2種類ある。「win-win」の関係と「利益アリ×特に利害ナシ」の関係
自然界には種間関係において双方に利益がある場合もあるんです。この関係を相利共生(そうりきょうせい)といいます。