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AI操縦の無人戦闘機と人間のパイロットによる初のドッグファイトが行われる

カラパイア


 カリフォルニア州エドワーズ空軍基地では、AIが操る戦闘機と人間が操る戦闘機との熾烈なドッグファイトが繰り広げられている。その目的は、もちろんAIを鍛え上げることだ

 AIが操縦するのは、ロッキード・マーチン社の第4世代ジェット戦闘機「F-16D ブロック30ピースマーブルII」にAI用のアビオニクスを搭載して改修した「X-62A」だ。試験機とはいえ正真正銘の戦闘機である。

 これはDARPAが進める「ACE(Air Combat Evolution)計画」の一環として行われたものだ。

 2023年2月にはAI同士のドッグファイトが行われたが、人間のパイロットとAIの模擬戦はこれが初めてとなる。

DARPAのAI戦闘機計画

 AIによる戦闘機の自動操縦自体は、決して新しいものではない。

 たとえば米国防高等研究計画局(DARPA)は、AIを搭載した可変飛行シミュレーション試験機「X-62A」を利用した「ACE計画」を開始。昨年2月、すでにAIによる完全無人操縦縦を実現し、AI同士のドッグファイトが実現した。

 そうは言っても、現時点でその性能は米軍が望むレベルにはまだほど遠い。そこで重要となるのが人間とのドッグファイトである。

 こう聞くと、AIが操る戦闘機が派手な空中戦を繰り広げる世界が想像されるかもしれない。だが、じつのところ21世紀において、そのようなドッグファイトは時代遅れのものとなっている。

 第5世代と位置付けられる現代の戦闘機の設計思想において、戦闘機はセンサー・武器・指揮統制システムなどで構成されるグローバル・ネットワークの一部とみなされている。

 こうしたシステムにおいて、戦いは人間が敵影を目で認識する前にすでに開始され、水平線の向こうにいるターゲットの撃墜が試みられる。

 だから戦闘機同士が接近して、相手の背後を取り合うような激しい戦闘はもはやない。

 では何のためのドッグファイトなのか? それはAIを効率よく信頼できるパートナーに育てるためのものだ。

 最近まで、航空宇宙用AIの開発は、想定される特定の状況において従うべきルールを前もって定め、これに沿ってプログラムを書くことで進められてきた。これを「エキスパート・アプローチ」という。

 シミュレーションやテストフライトは、実際の物理法則の下で、そうしたルールが通用するのか確認し、場合によっては修正するためのものだ。

 だがDARPAのACE計画では、そのかわりに機械学習を通じてAIを鍛え上げる。

 この場合、AIは過去のデータと経験に基づき、非線形的に行動を調整する。こうしたアプローチは、ルールが不明確で結果が予測できない常に変化する状況においてとりわけ有効だ。

 その一方で、問題もある。機械学習にはより大きなデータが必要で、それを扱うコンピューターへの負荷も大きくなる。

 くわえて、AIがなぜその行動を取ったのか、その理由を理解することも容易ではない。このことは、人間のパイロットとAIが協力するうえで無視できない要素となる。

 なぜならパイロットがAIを信頼できるかどうかに直結するからだ。パイロットがAIを信頼できるパートナーとして認めなければ、両者の関係がうまくいくことはないだろう。

パイロットと機械学習AIの比較 / image credit:DARPA

人間パイロットとのドッグファイトでAIを訓練

 カリフォルニア州エドワーズ空軍基地で繰り広げられているドッグファイトは、こうした問題を解決するためのものだ。

 ドッグファイトは現代の戦闘では滅多に起きないかもしれないが、近接した戦闘機同士のやり取りは複雑で予測不可能であるため、AIを鍛えるのにぴったりなのだ。

 また、AIが命令を守るかどうかを確かめることもできる。模擬戦とはいえ、戦闘機同士がぶつかったり、橋や建物に衝突したりすれば、危険なだけでなく、その被害額も高額だ。

 ゆえにAIには、これを防ぐための厳格な安全ルールに従う能力が求められる。

DARPAの監督の下、AIと人間の大空の戦いが繰り広げられている/US Air Force

 年内を通して続けられる今回のテストは、AIシステムを調整し、その使用に関する倫理的基盤を確立し、なによりAIに対する人間の信頼を調べることを目的としている。

 X-62Aの機体自体はAIが操縦するが、万が一のために人間のパイロットが同乗しているのだ。

 そして、これまでのところ21回のテストフライトが行われ、ソフトウェアのプログラム10万行以上が書き換えられたという。

DARPA ACE & USAF X-62A Achieve World First for AI in Aerospace


 ACE計画が成功すれば、これまで人間が行なっていた戦闘機の操縦や戦闘はAIが引き継ぎ、人間は作戦においてより重要な部分を監督する司令官的な役割を担うようになるかもしれない。

 こうした戦闘機用AIの最近の発展について、フランク・ケンドール空軍長官は、変革の瞬間であると述べている。
自動的な空対空戦闘の可能性は何十年も前から思い描かれていましたが、いままで現実には遠い夢でした。

しかし2023年、X-62Aが戦闘フライトにおける最も重要なハードルのひとつを突破しました。これはX-62A ACEチームの画期的な成果によって実現した、まさしく変革の瞬間です(フランク・ケンドール空軍長官)
References:ACE Program Achieves World First for AI in Aerospace / Video: World’s first dogfight between AI and human pilot / written by hiroching / edited by / parumo

 
   

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