想定外の異常事態に、出演者、スタッフ、そして視聴者までもがアゼンボーゼン。誰もが固まったハプニングの数々を振り返ろう。
それは「放送事故」であり、正真正銘の事故でもあった。98年9月2日、「めざましテレビ」(フジテレビ系)の生放送ロケでの出来事だ。
当時は同局アナウンサーだった菊間千乃氏(52)が、体験コーナーでマンションの5階から避難器具を装着して降りてくるという手はずだった。ところが、地上13メートルから落下したのである。
数々の放送事故をリアルタイムで視聴し続けてきた、ミュージシャンの掟ポルシェ氏が回想する。
「ロケの冒頭から明らかに、体を支える避難器具の金具がしっかりとフックにかかっていなかった。こんなんで大丈夫かと思っていたら案の定、事故となりました。落ちた先を見ると、クッションではない部分にも上半身がはみ出していて、『死んだのでは‥‥』と思った。上半身の骨を13本も折るという大事故で、よく助かったなと」(掟氏)
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テレビウオッチャーの上杉純也氏は、その時のスタジオの反応を覚えている。
「当初は大塚範一キャスターも小島奈津子アナも事故とは思っていない様子で、こうやって降りるものだというリアクションでした。でも菊間アナが動かなくなって、途中まではしゃいでいた小島アナの顔がこわばり徐々に神妙になっていった。現場とスタジオの温度差がかなりありましたね」
不測の事態に周囲が右往左往するのも理解できる。とはいえ、掟氏はこう不思議がる。
「事前に実験をしていなかったのでしょうか。実は、私にも経験があるんです。川を泳ぐロケでしたが、派手な画を撮ろうと、京都の激流でライン下りをさせられることに。ところがグルグルと渦を巻いていて、入ったら死ぬと思いました。『大丈夫なんですかね?』と確認したら、そこで初めてADで試すことになった。そのADも川に入る前提では来ていないので、トランクス一丁の姿です。そして入ろうとした矢先、川沿いのそば屋の人が出てきて『ダメだよ!』って。その川底には人工的に流れを速くするプレートが入っていて『人間が入ったら出てこれなくなる』とのことでした。菊間アナの件も、前もってADで確かめようとしなかったからこそ起きたのでは」
出演者が巻き込まれることがあれば、出演者が主導した放送事故もある。