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「1番サード郡司」で見えた打線の方向性――厳しいチーム内ポジション競争の象徴【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#223】

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「1番サード郡司」で見えた打線の方向性――厳しいチーム内ポジション競争の象徴【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#223】(C)ベースボールチャンネル

今年目指す野球が体現できたソフトバンク1回戦

 予備日込みの変則シリーズとなったソフトバンク2連戦(1、2回戦)はシーズン序盤の注目カードだった。狭い地方球場(藤崎台、北九州)で山川穂高、ウォーカーの加わったホークス打線にどう立ち向かうのか興味津々だった。パ・リーグ3連覇中のオリックスは出足が悪く、11日現在、下位に低迷している。笑い話だが、知人のBsファンは「(このところの常勝球団ぶりに不慣れで)実家に帰ったように落ち着く」とSNSに投稿していた。まぁ、評論家筋の評価も山本由伸を欠いたオリックス下げ、重量打線のソフトバンク上げが目についた。いわばパの本命印(◎)の打たれたチームと、その打力の最も生きそうな狭い球場でぶつかるのだ。
 
 藤崎台の第1戦はF山﨑福也、H有原航平の先発ゲームだった。アメリカ帰りの有原と当たるのは初めてだ。有原は「長いイニング大体いいピッチングをするが、1イニングだけ幽体離脱したように崩れる(その後、何もなかったように立ち直る)」というハム時代の特徴通りだった。その崩れたイニングが初回だった。詳細は後述するが、そこで先制したファイターズは「手堅い逃げ切り」のゲームプランを完遂する。この試合は山﨑福也ー伏見寅威の「サチトラ」バッテリーがハムで躍動した。「サチトラ」の打線の料理の仕方がベテランらしいコクがあったのだ。
 
 配球の妙もある。内側のラインの出し方も絶品。残像を使った組み立ても見事。それ以前にテンポがいい。打者が頭の整理をしきらないうちにポンポン、テンポよく投げ込む。録画を見直したけれど、初見のときは気づかない滋味がある。シンプルに言えばやることなすこと「根拠がある」のだ。重量級のホークス打線を手玉に取っていく。
 
 もう一つ感心したのは山川を殺し切ったところだ。この試合、ホークス側から見ると山川が大ブレーキだった。走者を置いて場面で、ことごとく打ち取られ結局ノーヒット。圧巻だったのは5回裏、無死満塁で三ゴロゲッツーに切って取った場面だ。伏見はあらかじめサード郡司裕也に3塁線を固めるよう指示していたという。単純な打球傾向のデータに加えて、「この球種このコースならここに飛ぶ」という伏見の経験がモノを言った。まさに「根拠がある」のだ。その後、杉浦稔大→北浦竜次→金村尚真→田中正義と小刻みにつなぎ、ホークス打線を近藤健介の2ラン1本に抑えてしまった。僕はディフェンス(投手力+守備力)でホークスを封じたことを評価したい。シーズン初戦、うちはこうやりますよというご挨拶だ。しかも、福也はそんなに調子よかったわけでもない。絶好調時なら根拠なんて言わなくても球威で抑え込むケースがあり得る。この日はフツーの福也なのだった。

決めたら迷いがない郡司の良さ

 さて有原攻略の話に移ろう。この2連戦、新庄監督は「1番サード郡司裕也」を起用した。トップバッターはそれまでスティーブンソンが多かったように思う。スティービーは俊足かつ積極的で1番向きだが、結果が出せていない。松本剛1番もいいが、そうすると万波中正につなぐ役が欠ける。そこで郡司に白羽の矢が立った。しかもサードスタメンだ。志願のコンバートで野村佑希を押しのけてスタメンを勝ち取ったことになる。今シーズンのハムはあらゆるポジションを競争させる考えだ。捕手も内野も外野も選手がダブついている。「ポジションは奪い取るもの、与えられた選手は脆弱になる」と方針を定めたのだろう。こちらもそのつもりで見るしかない。そこに着目すればたとえ負けゲームでも、チーム内の闘いから目が離せない。
 
※北九州の第2戦、スタメンDH起用された野村佑希は期待に応えられず、上川畑大悟と入れ替わりで2軍落ちすることになった。上川畑コールアップで内野争いは一段と熱くなるだろう。ジェイはいったん下で自分の長所を見つめ直してほしい。清宮幸太郎同様、絶対にチームの看板になる選手だ。当たり前だ。
 
「1番サード郡司裕也」は当たった。初戦、プレーボール直後の初球を叩いて右越えツーベース。これが有原の出端を挫き、初回4失点の乱調を引っぱり出す。先頭打者で初球を狙えるというのは資質だ。打席に立つ前から狙い球を絞ってイメトレができている。そして思い切りがいい。郡司は決めたら迷いがない。好打者だ。オープンスタンスに構えバットを立てて待ち、いい間でボールを呼び込める。投手との呼吸を自分の間合いにしてしまう。
 
 北九州の第2戦では3回表、レフトに1号ソロを放った。この日は雨の試合で、先発北山亘基が制球に苦しんでいた(足元も悪く、手も滑ったと思う)から、追撃の一発は何よりの援護だった。僕はファイターズのトップバッターが差し当たり決まったと思っている。「1番サード郡司」はとてもしっくり来る。打線は主軸(特に外国人選手)がまだ不発だが、徐々に固まってきつつある。機能し始めたら、けっこう面白いのではないか。トップバッターを狙ってる選手、サードを狙ってる選手は郡司以上の活躍を示すしかない。そういうことでいいのだと思う。

 
   

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