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「美と殺戮のすべて」ナン・ゴールディンのセルフポートレイトと著名人コメント公開

キネマ旬報WEB

志賀理江子(写真家)
痛みに体が支配される時、時は過去と未来のつながりを失い、点滅し始める。人は一瞬ごとの苦しみに閉じ込められ、そこから逃げ出すためには、もう、何にでもすがるだろう。困難にどのように抵抗するか、その手段こそが「表現」であることを彼女は体得していく。だからこそ「生き延びることがアートだった」と言う。ナンと彼女の近しい人たちは、その姿を写真に写すことによって曝けていたのではなく、私たちの鏡のようにして、世界に、その光を照らし返すのだ。

渋川清彦(俳優)
19の時、地下鉄で偶然にナン・ゴールディンと出逢った。それから東京とNYで色々な事を遊びのなかに教えてくれた。モデルをすすめてくれたが、わたしはモデルは好きじゃないと言っていた気がする。20数年会っていないが、「美と殺戮のすべて」のナンを観て何も変わっていないと感じた。強さと脆さと優しさと反骨さと。ナンは闘い続けてる。ナンと出逢わなかったら今の俺はない。確実に

治部れんげ(ジャーナリスト)
アメリカでオピオイド中毒死が急増した原因を作った富豪一家。自ら薬物中毒サバイバーである著名写真家率いる抗議活動は、メトロポリタン、ルーブルなどの美術館に向かう。アート、巨万の富、無責任な医療行政をパーソナルな視点でつなぐ、非常に見応えのあるドキュメンタリー。

瀧波ユカリ(漫画家)
「痛み」をないものにする社会で「ここに痛みがある」と訴える。それはアートの役割のひとつであり、ゴールディンが長い間取り組んできたことだ。つまり鎮痛薬によって維持される社会の病巣に斬り込むことは、彼女にとって必然の帰結なのだ。痛みと悲しみを見つめ続けた者だけが持つ強さと美しさが、ここにある。

長島有里枝(アーティスト)
ナン・ゴールディンのオピオイドクライシスとの闘いは、人の痛みにますます鈍感な社会にアートがどこまで対抗できるのか、というチャレンジでもある。彼女の写真にはいつも被写体への愛、彼らと彼らの文化を容易に奪おうとする社会に対する怒りが写っている。彼女からは作風以上に、アーティストとして何を大事にするべきなのかを学んだ。アート界に彼女がいることはこれからもわたしを支え、勇気を奮い起こす助けになると思う。

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MISATO ANDO(美術家)
異質。異端。それの何が悪い? ナン・ゴールディンは、この世の記憶を偽りなく物体に吹き込み、それが現在・未来へと生き継がれている。その力があるからこそ私はアートに惹かれるのだ。偏見が形を変えて浮き続ける世の中で、いつの時代も人は自由を求めている。今、自分が信じるもの。愛するもの。それは一体何なのか。誰なのか。生命力溢れる彼女の人生にあなたもきっと問いただされるだろう。

村上由鶴(写真研究)
はじめてナン・ゴールディンの写真を見たときに感じた、セックス・ドラッグ・暴力(そして死)の生々しさと、それらがあまりにも魅力的に写っていることへの困惑をよく覚えています。この映画のなかでその写真と再び出会い、彼女がオピオイド危機にその身を呈して立ち向かう姿とその声がより切実なものに感じられました。

 

 

Photo courtesy of Nan Goldin
配給:クロックワークス

︎ 写真家ナン・ゴールディンの闘争の記録。ヴェネチア映画祭金獅子賞「美と殺戮のすべて」

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