馬術競技のパリ2024パラリンピック出場権争いは、クライマックスを迎えようとしている。
国際連盟のパラリンピックランキングに反映されるポイント対象レースの終了を12月末に控えて、11月3日~5日、静岡県の御殿場市馬術・スポーツセンターで「CPEDI Gotemba2023 3★」が開催された。
グレードIIIの稲葉は愛馬のカサノバと出場した4年ぶりの「3★」開催の意義
海外から指折りの競技役員が来日したが、エントリーしたのは日本選手ばかり。強化指定選手の吉越奏詞、稲葉将、高嶋活士、城寿文、育成指定選手の大川順一郎、常石勝義、宮路満英が出場した。
このタイミングで海外の人馬が来日することは、検疫などの関係で時間を要し、他の大会に出場できなくなる理由から現実的ではなく、国内におけるパラ馬術の強化を担う日本障がい者乗馬協会は事実上、日本選手しか出場できない機会を作り出した。
河野正寿事務局長は、言葉に力をこめる。
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「もちろん国内の競技関係者育成という目的もあるが、一番は日本代表選手がパリパラリンピックに出場できるよう、自身が普段乗っている馬で好成績を残してほしい思いがあった」
こうした願いから開催された4年ぶりの「3★」大会。その舞台を最大限に活かしたのが、東京2020パラリンピック日本代表の稲葉(グレードIII)と愛馬のカサノバだ。
表彰式で笑顔を見せる稲葉(右)とJRAの元騎手・常石とくに2日目のパラグランプリB課目では68.778%をマーク。合計点を135.334%とし、パリの最低基準を突破しただけではなく、昨年からヨーロッパの競技会でコンビを組むヒューゼットBHとの68.389%(合計点の最高は135.778%)を超えるポイントを記録し、パリに向けて前進した。
自信を手にした一方で危機感もある。「日本の選手がヨーロッパで代表になろうと思ったら誰一人代表になれない。それほど(馬術の先進国は)選手層が厚い」と稲葉2日目を終えた稲葉は充実感を浮かべて語る。
「1日目は、(審判の評価として)もう少し活発性があったほうがよかったのではと伝え聞いたので、2日目はそれを意識しました。その分、ミスはあったけれど、スコアを上げることができたし、(パラリンピックランキングの)ポイントを上乗せできた意味でもよかった。意味のある競技会になったと思います」
稲葉とカサノバは、フリースタイルでも72.745%の好成績。クラス統合で争う「第7回全日本パラ馬術大会」のタイトルも手にし、12月のパリパラレース最終戦に向けて弾みをつけた。