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日本のジェンダー格差、過去最低の146カ国中125位。今日本がすべきことは何なのか?

パラサポWEB

メディアはもちろん、日常生活でもSDGsや多様性という言葉を聞く機会が増え、そうした概念も定着した感はある。しかし、取り組みが重要であることの理解は進む一方で、自分の身近なこととして実感をもって捉えられるような機会は少ないのではないだろうか。そこで、17の個別ゴールからなる世界目標のSDGsが2015年に採択されたのを受けて、日本でのSDGsの普及啓発の旗振り役を担ってきた国連広報センター所長の根本かおる氏に、日本の「多様性」の現状や課題についてお話を伺った。

SDGsの実現に「多様性」が必要な理由とは?についての目次

1.SDGsに多様性が必要な理由
2.ジェンダー平等における日本の現在地
3.ダイバーシティを実践する組織の実例
4.SDGs と多様性/日本の今後

【SDGsに多様性が必要な理由】
SDGsを進める多様な視点が危機の芽を摘み、ビジネスチャンスを広げる

国連広報センター所長の根本かおる氏

企業のHPなどはもちろん、テレビのCMなどでも、どれだけ積極的にSDGsやD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)に取り組んでいるかをアピールする動きが目立つようになってきている。就活生がどこに就職するかを考える際にも、SDGsやD&Iへの貢献度合いがひとつのポイントになることも多いと聞く。そんな社会において、企業や組織が存在意義を確立していくために、SDGsやD&I、つまり多様性に対して、改めてどのように向き合っていくべきなのだろうか。

「まず皆さんに理解していただきたいのは、SDGsやダイバーシティを進め、企業や団体といった組織が生き残っていくには、組織の多様性が不可欠だという問題意識、危機感が必要だということです。これまでは、表面的なポーズだけの“やっています感”でも何とかなってきた部分があったのではないでしょうか。しかし、社会がグローバル化して、企業活動もグローバルな尺度で見られるようになってくると、企業の多様性・包摂性に向けた取り組みや状況のような非財務的な情報も公開し評価を受けるようになります」(根本氏、以下同)

つまり、今後は、企業や組織のSDGsやD&Iへの取り組みの本気度が、より問われるようになるということだろう。とりあえず号令をかけておけばいい、きっと誰かがやってくれるだろうというわけにはいかない。組織に属する一人ひとりが、自分事として取り組むことが求められるのだ。

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「多様性というと男女間の差別や格差、つまりジェンダーの問題が注目されますが、それはダイバーシティの要素のひとつに過ぎません。障がいの有無や国籍・人種の違い、宗教の違いなど、多様性を図る要素にはいろいろあります。
組織に多様な目があるということのメリットのひとつは、リスクの可能性があるときに、おかしいと気づくことができ、危機の芽を早くに摘んで備えられること。もうひとつは、社会の中に存在する多様なニーズに気づき、ビジネスチャンスにつなげることができるということ。同質性の高い組織よりも多様な構成員を持つ組織の方がパフォーマンスが良いということは、研究からも明らかです。単一的なものの見方しかできなければ、リスクや社会のニーズに気づくことができない。つまり危機管理の面でも、ビジネスチャンスの面でも、単一的な価値観のもとでしか経営がなされていないと、非常にもったいないことになってしまうのです。
SDGsやD&Iは理想ではなく、企業活動に良い影響をもたらす不可欠の要素だということが、経営者だけではなく、中間管理職、一般従業員、職員、スタッフ、一人ひとりにどれだけ腹落ちしているかにかかってくるのではないでしょうか」

【ジェンダー平等における日本の現在地】
“やっている感”だけでは、多様性は実現できない

先頃、世界経済フォーラムが発表した「ジェンダーギャップ指数」で日本は過去最低の146カ国中125位という不名誉な判定を受けてしまったことから、日本のジェンダー格差解消の遅れを特に問題視する意見もある。各方面でさまざまな取り組みがなされているはずなのに、G7(主要7カ国)の中でランキングの最下位から脱することができないのは何故なのだろうか。

「日本でも進展がないわけではありません。ただ、ジェンダー平等に向けた取り組みは世界的に優先課題として捉えられていて、各国がものすごいエネルギーとスピードで進めています。周囲が加速度的に取り組みを重ねて結果を出しているので、それに比較すると日本はどうしても緩やかな前進となり、なかなか追いついていないというのが現状ではないでしょうか」

ジェンダーギャップ指数は、「経済」「教育」「健康」「政治」の4つの分野のデータから順位をつけられる。今回日本で一番低かったのが「政治」分野で、順位は146カ国中138位。衆議院で女性議員の割合、女性閣僚の割合が極端に低いこと、また今まで女性の首相がいないことが低評価につながったとされている。一方、「経済」に関しては、女性労働者の比率はほぼ半分と決して悪くはないのだが、女性管理職が少ないことが足を引っ張っている。根本氏が言うように、ジェンダーはもちろんのこと、障がいの有無、民族、国籍、信仰する宗教にかかわらず、多様性が尊重される社会へと変化のスピードをアップさせていくには、どうしたらいいのだろうか。

「ジェンダーをはじめとする多様性を巡る日本の現状は、法律上の男女差別はほぼないものの、長く続いた慣習や社会文化に基づく不平等が構造的に重なってきた結果だと思います。男性の育児休業が制度として存在しても、社会に根強く残っている慣習というものがあって、それに阻まれてなかなか改革が進まないということもあるでしょう。そういった社会の現状を根っこの問題も含めて包括的に捉えて、絶対に結果を出すのだという覚悟をもって取り組まないと、ただ“やっている感”を示すポーズだけでは目指す結果にはならないと思います」

【ダイバーシティを実践する組織の実例】
SDGsの旗振り役“国連”は、世界で最も多様性に富んだ組織

国連は2018年に、シニア・マネージメント・グループに参加する最高幹部職員レベルで男女比同率を達成した。現在は、2028年までにあらゆる職員のレベルにおいて男女比同率を実現することを目標に取り組みを続けている
(C)UN Photo/Mark Garten

根本氏は、日本のテレビ局でのキャリアの後、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)で難民支援活動に従事し、フリー・ジャーナリストを経て2013年より現職を担っている。海外での知見も深い氏の目から見て、SDGsやD&Iへの取り組みで大きく変わった組織といって思いつく事例はどんなものがあるのだろうか。

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