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1つの団体でできないことも9団体なら――パラスポーツ競技団体の共同プロジェクト「P.UNITED」の挑戦

パラサポWEB

パラスポーツの競技団体の中には、「運営資金が集まらない」「人が足りない」「競技そのものの人気がない」といった悩みを抱える団体が少なくない。このままでは団体の存続すら難しくなり、選手たちの活躍の場が激減してしまうかもしれない。そんな危機感をともにした9つの競技団体が、共同プロジェクト「P.UNITED(ピーユナイテッド)」による新たな挑戦を始めている。東京2020パラリンピックで高まったパラスポーツの盛り上がりを、パリ大会、そしてその先も終わらせないための戦略とは?

有能な人材をシェアし、多様な価値を生み出せる

日本国内におけるパラスポーツは、東京パラリンピックというビッグイベントの開催で、これまでにないほどの注目を浴びた。ところが大会終了後はその熱が下がってしまっているのか、ただでさえ難しかった活動資金の確保が、さらに難しくなっているという現状がある。

また同じパラスポーツでも、人気のある競技とない競技では、収入面で差が開いているのが現実だ。集客の苦労に加え、主役である選手も少ない。世界で勝てるようになれば人気に火がつくかもしれないが、資金がなければ強化も容易ではない。たとえ大舞台で金メダルを獲得しても、その競技種目や選手の露出が少なければスポンサー獲得もさらに難しくなる。

そこで東京大会翌年の2022年、複数の競技団体が集まり、勉強会を開催するなどして今後の進むべき道を模索し始めた。なぜ競技の人気がないのか。どうすれば見てもらえるのか。自分たちの競技の魅力をあらためて掘り下げる、ゼロからの出発だった。

2023年6月には9つの競技団体により、P.UNITEDが発足された。代表の田中辰美氏(日本パラ射撃連盟常務理事)は、複数の団体が一体となるメリットをこう語る。

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「たとえばマーケティングの分野に長けた人材を、それぞれの競技団体ごとに見つけて雇用するのは、財政的にも容易ではありません。しかし9団体なら、有能な人材をシェアできます。これまで小さな団体だけでは難しかった啓蒙イベントの開催や、研修プログラムの作成なども進めやすくなるでしょう」

「P.UNITED」9団体
・日本車いすカーリング協会
・日本障害者カヌー協会
・日本障がい者乗馬協会
・日本パラ射撃連盟
・日本身体障害者アーチェリー連盟
・日本知的障害者水泳連盟
・日本知的障がい者卓球連盟
・日本パラ・パワーリフティング連盟
・日本パラフェンシング協会

さらには、競技の異なる団体が組み合わさることで、単一の競技団体にはない魅力的なスポンサーメリットを生み出せるのだという。

8月21日に都内で開かれた記者会見に登壇した田中代表

たとえば冬季スポーツの競技団体は冬季シーズンに研修プログラムを提供できるが、夏季に行うプログラムは難しい。P.UNITEDには夏の競技も冬の競技もあるので、年間を通じたプログラムを作ることができる。またそれぞれの障がいからの視点を織り交ぜることで、多様なプログラムの提供が可能だ。

「プロジェクトの頭文字Pにはさまざまな意味があります。社会を変えていくポジティブな存在。ときにそれを推進するパワーも生み出します」(田中氏)

プロジェクトのロゴは、東京2020大会のエンブレムデザイナーである野老朝雄氏が手がけた。折り紙をイメージした9つの正方形を重ね合わせて、日本らしさ、シンプルな力強さを表現したという。P.UNITEDには、このロゴを使用するマーケティングプランもあり、広く露出されていくことだろう。

ロゴはエンブレムデザイナーである野老氏が手がけた

スポンサーに「活用」してもらうセールス戦略

P.UNITEDが活動で上げる収益は、選手の強化費、遠征費、イベント費用、競技団体運営などにも充てられる。ただ、プロジェクトの収益化は簡単なことではない。ロゴ入りのユニフォーム、グッズの販売、研修プログラムの提供なども行っていくが、P.UNITEDの戦略アドバイザー高阪学氏によれば、そのセールス戦略だけでは足りないのだという。

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