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エナジードリンクがもたらす影響

高校野球ドットコム


 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

 最近はすっかり肌寒くなり、本格的な冬が近づいていることを実感させられますね。選手の皆さんは、グランドでの技術練習や体力づくりのためのウエイトトレーニングなど、さまざまなことに取り組んでいることと思います。汗をかいたらタオルで拭いて体を冷やさないようにし、睡眠を十分にとって体調管理に努めてくださいね。さて今回はエナジードリンクがアスリートにもたらす影響について考えてみたいと思います。手軽に手に入れられるものですが、常飲すると体にはどのような変化が起こるのでしょうか。

実力以上のものを求めていませんか

エナジードリンクはコンビニなどでも手軽に購入しやすいが、体にもたらす影響を知っておこう

 試合前やテスト対策として深夜まで勉強するときなどに「頭がスッキリするから」「元気になるから」という理由でエナジードリンクを飲む選手がいるかもしれません。エナジードリンクの多くは疲労回復をうたっており、ビタミンB群をはじめ、さまざまなビタミン類や覚醒作用をもたらすカフェインなどが含まれています。カフェインそのものは適量であればさほど問題になりませんが、それでも夕方以降にカフェインを含む飲みものを飲むと、寝つきが悪くなったり、睡眠そのものに影響を及ぼしたりすることが知られています。また炭酸飲料と同様に糖質も多く含まれるため、一時的に血糖値が上がり、その後血糖値が急激に下がって低血糖状態になりやすいとも言われています。低血糖になってしまうと集中力がなくなり、疲労感を覚えることもあります。エナジードリンクを飲むと「魔法のように」元気になってしまうと思われがちですが、必ずしもパフォーマンスアップにつながるものではなく、体への負担が大きいことも理解しておきましょう。

カフェインの摂取許容量を知ろう

 カフェインはコーヒー(1杯あたり約65mg)やお茶など多くの嗜好品に含まれており、適量であれば問題となることはありません。ところが人気のあるエナジードリンクの中には250ml缶で80mg、355ml缶で142mgなどより多くのカフェインを含むものがあります。欧州食品安全機関(EFSA)が推奨している1日あたりのカフェイン摂取許容量は小児~青年期は1日に3mg/kgまでとされ、体重60㎏の選手であれば1日180mgまで、体重80㎏の選手であれば1日240mgまでとなります(ただし個人差が大きいことも指摘されている)。コーヒーを1日に3~4杯程度であれば問題ありませんが、これにエナジードリンクを1本プラスすると適切なカフェイン摂取量を越えることになります。カフェインの過剰摂取が日常的になってしまうと、安静時心拍数が増加し、不安感やイライラに悩まされたり、めまいや不眠症といった健康への悪影響がみられることがあります。

飲まずにいられなくなる?

運動に必要なエネルギー源は補食や飲みものを活用しよう

 エナジードリンクを常飲することによるリスクとして「糖質を過剰に摂りすぎること」「カフェインの摂取量が多くなること」を覚えておきましょう。カフェインは常に摂り続けていると、体がカフェインに慣れてしまい(カフェイン耐性)、より多くのカフェインを求めるようになることがわかっています(カフェイン依存症)。またカフェインには利尿作用があるため、運動時に必要な水分補給を行っても、体から尿として排泄されやすくなる傾向があります。体に必要な水分・ミネラル分が不足すると脱水や熱中症などのリスクも高まるため、運動時に飲むことはあまり勧められるものではありません。「いつも飲んでいるから」「飲まないと不安だから」という場合は、カフェインに依存しやすくなっているのかもしれません。

エナジードリンクの代わりに

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 エナジードリンクは糖質を多く含み、液状であるため消化吸収も早いことから、運動前のエネルギー源補給という使われ方をする場合があるかもしれません。しかしカフェインを含むことや急激な血糖値の上昇が体にもたらす影響を考えると、運動前のエネルギー源補給としてはカフェインを含まないもの、例えばおにぎりやパン、果物といった固形物とスポーツドリンクなどの飲みものを併用しながら摂取することが望ましいと考えられます。糖質の種類によって消化吸収に時間のかかるもの(主に固形物)、すぐにエネルギー源として活用できるもの(主にドリンク類)がありますので、野球の競技特性を考えると2~3時間程度は持続してエネルギー源を確保できるようにしたいものです(もちろん、運動中の補食なども活用しましょう)。

 エナジードリンクには「飲んだから大丈夫」というメンタル面での安心感がある一方で、「飲まないと不安になる」という中毒性が問題となります。「手っ取り早く疲労回復をするために」エナジードリンクを飲むのであれば、しっかりと睡眠時間を確保して体を休めることを優先させましょう。手軽に試しやすいものだからこそ、選手の皆さんにはエナジードリンクに頼らない生活習慣を身につけて欲しいと思います。

参考ページ)カフェインの過剰摂取について(農林水産省)

【エナジードリンクがもたらす影響】
●エナジードリンクには糖質やカフェインが多く含まれる
●カフェインによって覚醒作用が働くが、睡眠を妨げることもある
●カフェインの摂取許容量を超えると健康への悪影響が懸念される
●カフェインをとり続けると耐性ができ、より多くのカフェインを必要とする(依存症)
●カフェインの利尿作用等を考慮すると運動時のエナジードリンクは勧められない
●運動時の補食を上手に活用し、エナジードリンクに頼らない生活習慣を送ろう

(文=西村 典子)

 
   

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