マンガ「通勤途中に感じた事」のカット(福田雄一さん提供)

【マンガ】自転車に乗る学生を見たとき、「こみあげる」感情の正体は? 本編を読む

必死に立ち漕ぎをしている学生への「こみあげる感情」は何だ?

 立ち漕ぎする学生を見たときに、こみあげる気持ちの正体について描いたマンガ「通勤途中に感じた事」が、Instagramで7700以上のいいねを集めて話題となっています。

 作者が車で通勤しているときに見かける、自転車で必死に立ち漕ぎする学生の姿。その様子を見ると、いつもなぜか作者に込み上げてくるものがあり、この感情の正体は何なのか、あらためて考えてみたところ……。読者からは、「思わず泣きそうになりました!」「ノスタルジーってやつでしょうか」「いくつになっても立ち漕ぎしましょう」などの声があがっています。

 このマンガを描いたのは、Instagramでマンガを発表している、イラストレーターの福田雄一さんです。福田雄一さんに、作品についてのお話を聞きました。

ーー福田さんは学生当時、自転車通学でしたか?

 自宅から最寄りの駅までですが、自転車を使って通学していました。特に遅刻しそうなときや、急いでいるときは、全力で立ち漕ぎしていました。

ーー作中の「込み上げてくる感情」とは、具体的にどのような感情ですか?

 自転車の立ち漕ぎに限らないのですが、大人になったいまは、無駄にさえ感じることにも全力で一生懸命な若者を見ると、「若いなあ~」という少し冷めた気持ちを感じます。と同時に、「いまの自分では、もうあんな風にがむしゃらに突っ走れないな」という、どこか切ない感情も湧いてきます。もちろん、いまはいまなりに頑張っていますが……。若い頃の「何事にも全力で、がむしゃらに頑張る」という感じとは、まったく別物になってしまった気がします。

ーー「学生が自転車を立ち漕ぎする姿」以外だと、どのようなシーンで作中のような感情が込み上げてきますか?

 ベタですが、高校野球で試合に負けた学校の選手たちが、甲子園の土を両手でかき集める光景は、何度見てもジーンとします。

ーー「学生に戻りたいな」と思う瞬間はありますか?

 いまの生活に満足しているので、そこまで戻りたいとは思いません。ただ、マンガを描き始めたのが40歳を過ぎてからだったので、もし10代に戻れたら、そのときにしか描けないマンガを描いてみたいです。

ーー作品について、どのような意見が寄せられていますか?

「思わず泣きそうになりました!」「ノスタルジーってやつでしょうか」「いくつになっても立ち漕ぎしましょう」などのコメントをいただきました。全体の80パーセントは共感の意見でしたが、「年寄りの立ち漕ぎはきついですよね」という少数意見もありました。

ーー今回のマンガを描いたきっかけを教えて下さい。

 高校野球などで試合をする選手たちはもちろんですが、スタンドで応援する同級生や、顔を真っ赤にしながら演奏するブラスバンド部の生徒たちの姿を見ると、いつもジーンとなってしまいます。「この感情ってなんなんやろ?」と、以前から漠然と思っていました。もちろん、頑張っている姿がまぶしくて感動しているわけですが、この「感動」という感情のなかに、「自分も昔はあんな風にキラキラしていたよなという懐かしさ」と、「もうあのときには二度と戻れないんだという切なさ」が交錯して、なんともいえない気持ちになるのかなと、最近ふと思ったのでマンガにしてみました。