『機動戦士ガンダム』劇場版第1弾の制作にあたり、何人かの声優変更が行われていた。画像は劇場版『機動戦士ガンダムI』DVD(バンダイビジュアル)

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初代『ガンダム』は、頻繁に声優変更が行われた

 放送から年月が経つことで担当声優が変更になるアニメ作品は少なくありません。「声優変更」問題は、時にはファンの間で大きな論争へと発展することもあります。しかし、意外にもそういった批判的意見が少ないのが『機動戦士ガンダム』でした。

『ガンダム』が放送していた時代は、まだ声優交代に対して拒絶反応が少なかったころです。他のアニメ作品では、予告もなく主役やメインレギュラーの交代が行われていた例もありました。もちろん、いきなり声が変わって違和感をおぼえる人も少なくなかったのですが、当時はそういうものだと納得していた部分があったのでしょう。

 TV放送されていたころの『ガンダム』でもオスカ・ダブリンとマーカー・クラン、オムル・ハングやジョブ・ジョンといったセミレギュラークラスの声は何度も変わっています。そのため、声だけを聞いていると時には誰が話しているのかわからなくなる時もありました。

 この時代は、声優が役を掛け持ちするのは当たり前で、予算の都合や、声優自体の数がそれほど多くないことも理由のひとつとされています。そのため、ベテランの声優ほど同じ番組でのかけ持ちが増え、特に『ガンダム』では永井一郎さんが数多くのキャラクターを演じていました。

 こうした掛け持ちがなくなったのは劇場版からでしょうか。この劇場版でTV版には参加していない声優が何人か加わり、かけ持ちだった役を演じていました。ジーン役の若本紀昭(現在の規夫)さん、リード役の石森達幸さん、イセリナ・エッシェンバッハ役の上田みゆきさんなどです。

 デギン・ソド・ザビ役もTV版の永井さんから藤本譲さんに代わっていました。もっともデギン役は、番組開始当初に一部の発表では藤本さんの名前が出ていたので、元に戻ったとも考えられます。

 この他にもカツ・ハウィン、レツ・コ・ファン、キッカ・キタモトといった声のイメージが印象的だったキャラクターはかけ持ちのままでした。こうした劇場版第1作での声優変更はファンの間ではおおむね受け入れられます。

 しかし、劇場版第2作『哀戦士編』での声優変更はあまり評判がよくありませんでした。TV版で演じていた声優が別のキャラクターを演じ、本来演じていたキャラクターを別な声優が担当していたからです。どうしてわざわざ入れ替えるのか、そこに不満を生みました。

 ちなみに2000年に初めて劇場版をDVDとして発売したさいに、「特別版」として音声をドルビーデジタル5.1chにするために再度アフレコしています。この時、さらに声優変更されたキャラクターもいました。もっとも不評だったのか、2007年に「通常版」として元の音声に戻したバージョンも発売されています。



アニメ『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』では多くの声優が交代となったが、シャアとアムロらの声は引き続き池田秀一さんらレジェンド声優たちが続投した。画像はBS12で再放送中の『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 前夜 赤い彗星』より (C)創通・サンライズ

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伝説級の声優たちの「交代」は議論になる可能性が?

 このように『ガンダム』ではひとりのキャラクターに対して複数の声優が担当していることが多いのですが、それをさらに増やす原因となったのが「ゲーム」でした。

 ゲームでもメインキャラクター程度しか登場しない作品はオリジナルキャストがほとんどとなります。しかし、多くのキャラが登場するようなゲームではそういうわけにはいきません。いくつもタイトル化されたゲーム『ギレンの野望』シリーズでは、TV版とも劇場版とも違う声優になったキャラクターが何人かいました。

 もっともそれは当たり前というものかもしれません。放送から何十年も経った作品ですから、引退した人や鬼籍に入った人もいます。こういった事例は時間が経つにつれて起こるべくして起こることでしょう。もっとも『ガンダム』は放送が続いていたわけでないため、比較的ソフトランディングできた好例だと思います。

 これが一気に加速したのが、リメイク作品とも言える『THE ORIGIN』がアニメ化した時でしょうか。ここで従来からの声優が一部を除き一新されました。

 ただしアムロ・レイ役の古谷徹さん、シャア・アズナブル役の池田秀一さん、カイ・シデン役の古川登志夫さん、ギレン・ザビ役の銀河万丈(当時は田中崇)さんだけは『THE ORIGIN』でも変わらぬ声で演技を続けています。みなさん第一線で活躍を続けてきたレジェンド級の声優だから当然かもしれません。

 ちなみに『ガンダムビルドファイターズ バトローグ』ではAIデータのシャア役として関俊彦さんが演じていました。もっとも正伝ではないので議論の対象とすべきではないのかもしれません。ちなみに関さんは『聖闘士星矢』に登場する蠍座のミロも池田さんから引き継いでいました。

 仮にもしもこれらのキャストが変更になるようなことがあれば、その時は『ガンダム』初の大きな声優交代論争になるかもしれません。本来なら作品自体は完結しているのでそんな心配はないのですが、『ガンダム』という作品はゲームをはじめさまざまな媒体で展開するので、コンテンツが生きている間はこういった問題は永遠に続くことになるでしょう。それこそ百年後には「〇代目アムロ・レイ声優」という人も出てくるかもしれません。

 ちなみに一度だけすべての声優が変更になった『ガンダム』のアニメ作品があります。それはパロディ作品である『ガンダムさん』がアニメ化した際でした。まぁオリジナルキャストにコメディを演じさせるわけにはいかなかったのでしょう。

 もっともOVA『SDガンダムシリーズ』では、アムロとシャアをはじめ一部のキャラクターはオリジナル声優が演じていました。特にカセットブックでの原典からのパロディの数々は、今でも一部のファンの間では語り草になっているほどです。