『機動戦士ガンダムZZ』主人公のジュドー・アーシタは、サイド1の1バンチ「シャングリラ」に住んでいた 画像は「機動戦士ガンダムZZ U.C.ガンダムBlu-rayライブラリーズ」(バンダイビジュアル)

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ジュドーやファはサイド1出身者

 アニメ『機動戦士ガンダム』は、作りこまれた設定と、数多く発表された作品群がお互いを補完する、大河ドラマ的な重厚さを持つ作品です。

 地球連邦に戦いを挑んだジオン公国軍は、開戦当初にスペースコロニー群「サイド1・2・4・5」を攻撃し、その上でスペースコロニーを地球に落とす作戦を取ります。一連の攻撃で「総人口の半数」が亡くなったという凄まじい攻撃です。

 攻撃されたサイド1・2・4・5は、中立を保ったサイド6のように政治勢力として登場することはありませんでした。地球連邦とジオンの戦争ルールを定めた「南極条約」でも、サイド6への言及はありますが、サイド1・2・4・5への言及はありません。

 こうしたことからか、『機動戦士ガンダム』で戦われた「一年戦争」を描く、後発アニメやゲームでは、サイド1・2・4・5は戦闘で破壊されたスペースコロニーや、兵器の残骸が多数存在する、暗礁宙域として描かれることが多いです。

 なお、スペースコロニーは諸説ありますが、1基に1000万人以上が生活している施設です。もし、サイド1・2・4・5に生き残ったスペースコロニーがわずかでも存在したのであれば、それだけで数千万人になります。劇場版アニメ『めぐりあい宇宙』では、サイド3・ジオン公国の人口が1億5000万人と説明されていますから、数千万人でも無視できない政治勢力ではないかと思われます。

 では、サイド1・2・4・5は宇宙世紀0079年に、完全に破壊されたのでしょうか。どうも、そうではないようです。宇宙世紀0088年を舞台とした『機動戦士ガンダムZZ』で、主人公のジュドーが住むコロニーはサイド1の1バンチ「シャングリラ」です。

 このコロニーは荒廃しており、自転速度に遅れが生じているなど、一年戦争後の新築コロニーとは思えない描写がなされています。史上初のシリンダー型スペースコロニーという設定もあるので、一年戦争前からサイド1に存在していたと思われます。ジュドーは0073年生まれですから、一年戦争時には6歳。シャングリラに馴染んでいる様子も描かれ、戦争後に移住してきた住民とは考えにくいです。

 移住ではないと考えられるのは、ジュドー以外の『ガンダム』登場人物に、サイド1出身者がかなりいることです。例えば『機動戦士ガンダムUC』のバナージ・リンクスは宇宙世紀0080年生まれで、サイド1の3バンチ「エデン」出身。

 15バンチは『ZZ』のヒロインであるルー・ルカの出身地ですが、彼女は0071年生まれです。25バンチは、宇宙世紀0070年に生まれた『機動戦士Zガンダム』のヒロインであるファ・ユイリィの出身地とされています。

 一年戦争時に子供(あるいは胎児)だった、これらの全員が、一年戦争後にサイド1に移住した人たちとは思えませんので、一年戦争時でもサイド1に住んでいた可能性がかなり高いと考えられます。

 実際『機動戦士ムーンガンダム』の舞台となっている「ムーン・ムーン」もサイド1建設のために、近くの隕石群に作られた開発基地という設定で、サイド1エリアで生き残っています。劇場版アニメ『逆襲のシャア』に登場する「ロンデニオン」はサイド1でも最古参のスペースコロニーという設定ですから、これも一年戦争時にも存在したものと思われます。

 他のサイドでは、サイド1ほど明確な出身人物はいないようですが、少なくともサイド1には、かなりの生存コロニーが存在したものと考えられます。



『機動戦士ガンダムUC』主人公のバナージ・リンクスはサイド1の3バンチ「エデン」出身 画像は『機動戦士ガンダムUC』episode7「虹の彼方に」 (C)創通・サンライズ

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なぜ南極条約で無視?

 では、それらがどうして「南極条約」では無視されていたのか。これは「全人口の半数」が亡くなったとされるほどの大混乱で、連邦政府が統治能力を著しく減らしており、宇宙軍も壊滅していたので、各サイドの生存状況を十分に把握できていなかったのが原因でしょう。

 そして混乱が収束しても、色々な理由で政治勢力として扱えなかったのではないでしょうか。例えば、サイド1と4は同じラグランジュポイントにあり、近隣ですが、ジオンはこの宙域に宇宙要塞ソロモンを設置しています。

 サイド1と4は元々地球連邦領ですから、開戦前にジオンが宇宙要塞を建設できたとは思えません。ソロモン要塞は、開戦後に別の所から移動させて設置したものと思われます。ソロモン要塞が陥落したのは、一年戦争が終わる直前の宇宙世紀0079年12月25日ですから、サイド1と4は戦争の大半、ジオン軍の占領下にあったはずです。

 ジオンとしては、サイド1・4の各コロニーに存在する、生産プラントでソロモンに必要な物資を生産し、輸送すればジオン本国から輸送するより補給線が短くなりますから、壊滅したコロニーの生産プラントを利用し、生存コロニーのプラントも「これ以上攻撃しないから、代わりに物資をソロモンに提供しろ」と軍政を敷いていたと考えられます。

 サイド2については、中立宣言をしたサイド6の近隣宙域ですから、生存コロニーが存在した場合は、サイド6が管理し、中立扱いとなっていたのではないでしょうか。

 サイド5については、ルウム戦役の戦場でもあり、一年戦争後にデラーズ・フリートが秘密基地「茨の園」を建設したくらいですから、ここはほぼ壊滅状態になったのでしょう。ただし、ガンダムとギャンが対決した「テキサスコロニー」内には大気が残っており、生存可能環境に見えましたので、全コロニーが破壊されたわけではありません。

 こうした生存コロニーは、一年戦争後に連邦統治下に復帰し、さらにコロニー公社によって新規建設や修理が進められた結果、0087年の『機動戦士Zガンダム』では概ね復興していたのだと考えられます。そして『Z』でそこに住む人たちの多くは、コロニー落としで生活環境が悪化した地球から、各サイドに移り住んで来たのでしょう。

 なお、0079年の一年戦争時の総人口は110~120億人程度と言われていますが、0093年の『逆襲のシャア』では、クェスが「宇宙に100億の人が住んでいるのよ」と発言しています。一年戦争で「全人口の半数」が亡くなっているのなら、55~60億人となった総人口が、約14年間で「地球抜きの宇宙だけで100億人」に増えたことになります。

 これは明らかに増えすぎですから「一年戦争で全人口の半数が亡くなったと考えられていたが、それは間違いで、戦争が終わった後で再調査したら、サイド1を中心に相当数が生き残っていた」と考えたほうが、辻褄が合いそうです。

 幼いジュドーやルー、ファは、一年戦争中、地球連邦が統治能力を喪失したサイド1で、近隣のソロモン要塞に物資を供出させられる中、苦労して生き延びたのかもしれません。