金なし、能なし、甲斐性なしのイメージが強い五代裕作だけど実は……。 画像は『めぞん一刻〔新装版〕』2巻(小学館)

【画像】乳丸出しでも気にしない? 大人になってからわかる「一刻館」住人たちの魅力

五代くん、今までだめだめだと思っていてごめんね

 マンガ『めぞん一刻』の主人公・五代裕作といえば、奥手かつ優柔不断な苦学生。金もなければ車もない、おまけに特別ハンサムなわけでもありません。

ヒロイン・音無響子の言葉を借りれば「いい加減でクズな男」、恋敵である三鷹瞬の言葉を借りれば「だらしなくてだめな男」、「一刻館」の住人・六本木朱美に至っては「ヒモ。貧乏人。優柔不断。卑怯者。女の敵。カス」……と、作中でも五代に対する評価は散々なものでした。恐らく読者の大半が「五代裕作=だめな人」というイメージを持っているのではないでしょうか。

 確かに子供の時に見た五代は、金なし、能なし、甲斐性なしのイメージが強いかもしれません。唯一の特技として、金魚すくいを挙げるような男です。しかし大人になってから見る彼は、そのイメージが180度変わり、いかに優しくて思いやりに溢れた男性であったかうかがい知ることができます。

地雷系ヒロインを6年間も想い続ける

 そもそもヒロインの響子も、今と昔ではかなり違って見えるでしょう。何となく子供の頃に見た彼女は「大人の女性」というイメージでしたが、実際はかなり嫉妬深くてやきもち焼き。言うならば「ろくに手も握らせない男のことで泣きわめく面倒くさい女」です。

 響子がやきもちを焼くたびに五代は振り回され、時には「あんたなんか大っっっ嫌い」と言われたこともありました(別に付き合ってもいないのに……)。

 それでも彼は、響子が面倒くさい女ということをわかっていながら約6年間も想い続け、彼女と結ばれた際には、響子の亡き夫・惣一郎の墓前で「あなたもひっくるめて、響子さんをもらいます」と宣言しています。もうこれだけでも五代に対する評価は大きく変わるのではないでしょうか。

学生の頃はだめだめだったけれど……

 おまけに彼は響子に見合う男性になろうと努力し、少しずつ大人としての責任感や甲斐性を身につけていきました。就職活動に失敗し、成り行きで保育園のバイトをしていた五代は、このままではいけないと一念発起。自身の経験が生かせる保父さんになることを決意して以降、夜間のアルバイトをこなしながら専門学校に通い、紆余曲折ありながらも保育園に就職しています。

 学生の頃は浪人のすえ三流大学に入学し、留年しかけるなど、決して頭も要領も良くない五代でしたが、保育資格の試験はなんと一発合格です。頑張るきっかけさえあれば、彼はどんな環境に置かれても努力できる人なのかもしれません。



五代裕作を選んだ音無響子は人を見る目ある? 画像は『めぞん一刻〔新装版〕』1巻(小学館)

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「一日でいいから、あたしより長生きして」の約束も――

いざという時は頼れる男!

 また五代といえばどことなく頼りないイメージですが、彼女が困っている時はいつだって迷わず手を差し伸べてきました。プールで溺れかけた響子を救ったのは五代ですし、彼女の愛犬・惣一郎が行方不明になった時も、誰よりも一生懸命探して見つけ出しています。

 彼女がアパートの屋根から落ちそうになった時も、助けてくれたのは五代でした。直前に喧嘩したこともあって、響子は助けようとしてくれる彼を拒みますが、それでも五代は必死に助けようとします。そして無事に助け出した後、「ばかたれっ。なんで助けてくれって言わなかったんだ!!」と響子を一喝。怒ってはいるものの、その言葉には確かに彼の優しさがにじみ出ていました。

人に好かれるのは人の良さゆえ

 五代はとにかく人が良く、「一刻館」随一の良識人でもあります。道ばたで妊婦がうずくまっていれば迷わず助けようとし、そのせいで大事な面接に間に合わなくても「こんなこと言いわけにもならないから」と愚痴ひとつこぼしません。人が良いからこそ子供たちにはよく懐かれ、キャバレーを辞める際には面倒を見てきた子供たちにわんわん泣きつかれていました。

 五代の恋路を「一刻館」の住人たちが見守ってきたのも、結局は彼の人柄があってこそ。なんだかんだでみんな五代のことが大好きなのです。

約束通り、一日でも長く……

 最終的に長年の想いが実り、晴れて響子と結ばれた五代。ちなみに彼のプロポーズをOKする代わりに、響子が出した条件は「一日でいいから、あたしより長生きして」でした。

 原作では、我が子を抱えたふたりが一刻館を訪れるところで幕を下ろしますが、実はパチンコ「Pめぞん一刻~Wedding Story~」には物語の「その後」を描いた演出があり、そこで五代はきちんと彼女との約束を果たしています。

 巷では「結婚するなら三鷹瞬一択」「なぜ五代くんなのかいまだに理解できん」などと囁かれていますが、今なら響子が彼を選んだ理由もわかる気がしませんか?

 同時に、子供の時と大人の時でここまで違う見え方をする『めぞん一刻』を、20代で執筆した高橋留美子先生を尊敬せずにはいられません。