「民明書房大全」も収録されたおもちゃ「魁!! 男塾 立体 民明書房 大全 6種 ジャンプ まんが 江田島平八全6種 1 でんがいそしんだん 2 血闘援」(タカラトミーアーツ)

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大人も本気で信じた!? 民明書房の仰天うんちく

 1980年代の「週刊少年ジャンプ」(集英社)で、札つきの不良たちが集まる「男塾」の熱い男たちが活躍して人気を集めたのが、『魁!!男塾』(作:宮下あきら、連載開始:1985年)です。溶岩や濃硫酸をたたえたバトル場での危険極まりない闘いや、派手に死んだはずのキャラクターがシレッと生き返るという荒唐無稽ぶりで、読者の心に残っています。

 以前、そんな『魁!!男塾』について、「生き返り再登場は当たり前? 『魁!!男塾』の絶対死なない男たち」についての記事を掲載したところ、作品を懐かしむ数多くのコメントのなかに、何度も登場するキーワードがありました。それは、「民明書房(みんめいしょぼう)」。

 おバカ満開の『魁!!男塾』ではありますが、「民明書房」の書籍から引用されたという数々の作中情報は、語源やスポーツ、自然科学、歴史、拳法、拷問など多岐にわたりました。しかもその内容は、目からウロコが100万枚もこぼれ落ちそうな、驚くべき雑学の宝庫だったのです。筆者もそんな民明書房の引用を「世の中にはまだまだ知らないことがいっぱいある!」と、ワクワクして読んでいたひとりでした。さて、みなさんは、どのネタで「民明書房」に疑念を抱くようになったのでしょうか?

 今回は、そんな思い出の「民明書房」からの引用のなかでも、とくにもっともらしく印象深い8つの説を振り返ります。

謎の出版社「民明書房」とは!?

 民明書房とは、『魁‼男塾』に登場する1926年創業の歴史ある「架空の出版社」です。社名の由来は、創業者である大河内民明丸(おおこうち・みんめいまる)の名前であり、所在地は東京神田神保町と、あくまで本物っぽい設定がなされています。

『魁!!男塾』の作中に挿入されている逸話や語源、武術、決闘方法、動植物などの解説については、作者の宮下あきら氏によると、「嘘か本当か微妙なところ」とのことです。その狙いは大いに当たり、内容を真実だと思い込む人や書店に行って書籍を探す人が続出したといいます。

 作中では、この「民明書房」の引用が登場する際には決まった流れがありました。まず、見たことのないような武術や仕掛けなどに富樫源次(とがし・げんじ)や虎丸龍次(とらまる・りゅうじ)が驚いたリアクションをし、続いて、それが何なのか知っている月光や雷電などが「あれが世に聞く○○…」と名前を口にし、「民明書房」の解説につながるというのがお約束です。

うんちくの詰まったスポーツ説

 驚きすぎたせいか、覚えている方が多いのは、ゴルフの原型として紹介されている(てんがいそしんだん)」(民明書房刊『スポーツ起源異聞』より)ではないでしょうか。纏劾狙振弾は、天挑五輪大武會の決勝トーナメント準決勝で、男塾・月光が梁山泊十六傑・蒼傑(そうけつ)を相手に見せた奥義で、特殊な棍で地面に置いた小さな鉄球を「ゴルフスイングにも酷似」した動きで相手に向かって打つ辵家流(ちゃくけりゅう)の最大奥義です。さらに、ゴルフの発祥はイギリスではなく、創始者・呉竜府(ご・りゅうふ)の祖国である中国だという説は、読者の度肝を抜いたといっても過言ではないでしょう。

 その他、男塾の愕怨祭(がくえんさい)の特別イベントとして開催された「羅惧美偉(らぐびい)」の歴史もまた、民明書房刊『ヨーロッパ中世スポーツ起源』からの引用として紹介されています。中世のイギリス・イングランド地方に生まれたという羅惧美偉は、乱闘や武器の使用が許された競技です。両チームが毒を飲んだ状態で戦い、トライしたチームだけがボールのなかの解毒剤を飲めるという命がけの戦いだったと書かれています。

 また、日本の国技・相撲ついても、民明書房の『相撲人生待ったなし』という書籍からの引用として、仰天うんちくが掲載されています。地上15mの高さの土俵で命がけの戦いを繰り広げる「地獄相撲(チャガ・ボルチ)」で、最強の戦士と言われた「ドスコイカーン」の名前から「どすこい」という掛け声が生まれたというのです。

 そのほかに、フェンシングの源流と中国拳法を合わせた必殺の武術「彊条剣(きょうじょうけん)」などもありました。



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ぶっ飛びすぎの民明書房に、じわじわと押し寄せる疑惑

じわじわと疑惑を生んだ拳法説

 大威震八連制覇(だいいしんぱーれんせいは)編で月光のクールさと強さが光るのが、男塾の一団に向かって転がり落ちてくる巨大な鉄球を「辵家核砕孔(ちゃくけかくさいこう)」の一撃で粉々にするシーンです。この技の仕組みについて、民明書房の『分子各構造その理論』では、物体の核である「ブルッツフォン・ポイント」を見極めれば、ダイヤモンドであっても一撃で破壊することが可能だとされています。これはかなりの子供たちが信じたと言われる、民明書房のトンデモ学説の最高峰です。

 さらに、七牙冥界闘(ばとるおぶせぶんたすくす)編で、飛燕が戦ったデバレスは、両腕に装着した翼で上昇気流をとらえ、空中からの素早い攻撃をしかけるという戦法を用いました。その「魔翔流気法(ましょうりゅうきほう)」について、民明書房『バットマンかく語りき』では、古代中国の山岳民族である抜娉族(ばっとうぞく)が編み出したものだと紹介しています。この技をマスターできるのは「3万人にひとり」とされ、達成者は「抜娉万(ばっとまん)」と称えられたというのです。さすがにこれは、それまで民明書房の引用を信じていた読者の心をざわつかせたと言われています。

 そして、この「抜娉万」の次の回に登場したのが、ヘルバーという「鉄騎宙弾(てっきちゅうだん)」の使い手でした。民明書房『玩具に見る古代中国の英知』によれば、鉄騎宙弾はバネを使った道具で身のこなしの素早さを倍増させる拳法であり、「中国漢代の武術師範宝浜具(ほう・びんぐ)」は発明したものであるとしています。子供用玩具である「ホッピング」の名称はこの宝浜具の名前に由来するというこの説によって、かなりの数の読者が我に返ることになったのではないでしょうか。

意外なグルメ情報もあった自然科学説

 天挑五輪大武會の決勝で男塾が戦った冥凰島十六士のひとりで、水中での戦闘を得意とするフビライカーンが最後の切り札として出したのが、「モングール・ピラニア」でした。民明書房刊『喰うか喰われるか!!世界食通事情』によると、モングール・ピラニアとは、蒙古(モンゴル)・オリノル川に棲息するピラニアです。体長が大きく狂暴なモングール・ピラニアは、100匹もいれば「水牛をものの数十秒で白骨」にできるほどと説明されています。そんなモングール・ピラニアの肉は「燕の巣・熊の掌と並ぶ満漢全席3大珍味のひとつ」とされるほど美味しいと書かれており、未知の食材への興味をそそりました。

 そんなちょっと興味がわくグルメ情報の一方、想像すると食欲が減退してしまう情報もあります。天挑五輪大武會の決勝トーナメント2回戦で男塾・飛燕が戦った王家の谷の守護者たち(ファラオ・スフィンクス)のひとり、石壺(クヌム)のネスコンスは、極端に柔らかい体と、関節を外して長さを意のままにできる四肢を持っていました。ネスコンスが体得しているのは、中国拳法でいう「壺晏逅寺軟體拳(あんこうじなんたいけん)」という特殊な拳法だと、民明書房『世界の怪拳・奇拳』の引用で紹介されています。それによれば、修行者は生まれた時から「酢を満たした大甕のなかで生活・成長」することで、体質を柔軟に変えたというのです。さらに、この軟體拳の達人・陳辣韮(ちん・らっきょう)が「修行中に自分の壺に実を漬け、製造・販売した」のが、カレーのおともでおなじみのラッキョウの名前の由来だと書かれています。ずっと人間と一緒に漬かっていた……うっかり想像すると、食欲が減退してしまいそうです……。

 そのほかにも、『魁‼男塾』では富樫の命を救った上昇気流「昇龍風(しょうりゅうふう)」や、胸に「闘」の文字を刻んで激励する「血闘援(けっとうえん)」など、民明書房の書籍からという形で、さまざまな説が紹介されました。あなたの心に残っている説は、どんなものですか?