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竜星涼、一癖も二癖もある隆家役で『光る君へ』に登場 三浦翔平と“嫌な兄弟”に

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『光る君へ』写真提供=NHK

 『光る君へ』(NHK総合)第16回「華の影」。石山寺からの帰路、まひろ(吉高由里子)は思いかけず、さわ(野村麻純)を傷つけていることを知った。宮中では、中関白家が帝との親密さをことさらに見せつける。その頃、都では疫病がまん延していた。ある日、たね(竹澤咲子)が悲田院に行った父と母が帰って来ないとまひろに助けを求める。

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 物語後半で描かれた疫病の壮絶さもさることながら、まひろを深く想う道長(柄本佑)の決死の看病が胸を打った。しかし本記事では、華やかな宮中の様子が描かれた物語前半において印象的だった才色兼備で自信家な伊周(三浦翔平)と、第16回で初登場となった竜星涼演じる隆家に着目する。

 伊周の佇まいは常に余裕がある。公任(町田啓太)は「関白家は皆、自信満々で、鼻につく」と本音を漏らしていたが、伊周を演じる三浦の利発な面持ちや立ち居振る舞いからは、伊周が鼻につくほど自信に満ちあふれているのをありありと感じられる。

 第16回では、自尊心が高い伊周が見せる高圧的な態度が印象深い。弟・隆家に「舞え」と命じる場面は、兄弟といったこともあってかあからさまに高圧的であったが、詮子(吉田羊)への言動にはどのような場面においてもハラハラさせられる。父・道隆(井浦新)同様、伊周は詮子をそれとなく追い払うような態度を見せる。登華殿に現れた詮子を前に、一同が緊張を覚える中、伊周は「これこそがお上がお望みになる新しい後宮の姿にございます」と説教するかのような物言いで詮子を諫めた。三浦はその強いまなざしや本心を含めたような台詞の言い回しによって、伊周が詮子を牽制する様を表す。「女院さまにもそのことをお分かりいただきたく」と詮子の前に座った伊周の目つきと声色は殺伐としていた。

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 伊周は自信家ゆえ、人を見下すような態度も見せる。叔父の道兼(玉置玲央)への態度はあからさまだった。心を入れ替えたように内大臣としての務めを果たす道兼は都にまん延する病を気にかけていたが、伊周に民を案じる様子はない。道兼が苦言を呈すると、伊周は小馬鹿にしたように笑ったのち「叔父上は何か良きことをなさったのでしょうか」と睨みつけた。喧嘩っ早いとは違うが、神経を逆撫でするような物言いをあえてする姿に冷や汗が出る。

 一方、伊周、定子(高畑充希)の弟である隆家はどこか冷めた印象だ。たとえば公任や斉信(金田哲)、行成(渡辺大知)が黒の装束を着る中、伊周がふだん着である直衣姿であるのを、隆家は皮肉めいた目で一瞥する。定子の提案で若者たちが雪遊びをする中、隆家はそれをつまらなさそうな顔で見ている。清少納言(ファーストサマーウイカ)から「お庭にお下りになりませんの」と問いかけられた時には、鼻で笑い「何が面白いのかわからぬ」と答えた。隆家演じる竜星が終始ニヒルな顔つきをしているのが心に残る。

 隆家を演じている竜星涼といえば、2022年に放送されたNHK連続テレビ小説『ちむどんどん』で、黒島結菜演じる主人公・暢子の兄・ニーニーこと賢秀を演じていた。金銭トラブルが絶えず、家族に散々迷惑をかけてきた賢秀はトラブルメーカーで、竜星はそんな朝ドラ定番の“ダメ男”を演じ切っていた。なお、賢秀の短所的な意味での調子の良さをコミカルに演じていた竜星だが、隆家にもそのコミカルさがうかがえる。定子の「香炉峰の雪はいかがであろうか」という清少納言への問いかけに「なんのこと?」と聞くとぼけた顔にはおかしみがあった。他の場面においては皮肉っぽさが際立つ隆家だが、この少し抜けた表情に自信家の伊周とは違う親しみが感じられた。

 また隆家は、中関白家の誰よりもその場の空気を読んで行動しているように思える。一条天皇(塩野瑛久)らの演奏で伊周が舞を舞う中、隆家は退屈そうな顔で酒を飲んでいた。伊周から「お前も舞え」と言われ、一度は断る隆家だが、兄の高圧的な態度を見ると意向を汲む。隆家が腹の中で兄の伊周と姉の定子にどんな思いを抱いているのかは定かではない。かつて道兼は自身の鬱屈した思いを他者にぶつけてきたが、隆家は腹の底にある感情をうまく抑えながら器用に立ち回っている印象だ。特に、隆家演じる竜星が舞を舞いながらみせた伊周を挑発するような顔に隆家の巧みさが感じられた。

 隆家には大物感もある。登華殿に詮子が現れ、一同に緊張が走る中、隆家は平常心だった。詮子をそれとなく追い払う道隆や伊周と違い、隆家の詮子への向き合い方は、達観した視線で家族や政を見る道長にどことなく似ている。隆家が中立的な感覚で他者と向き合うからだろう。舞の最中にやってきた詮子に対し、「あ、誰か来た」と言ってのけ、悠然と頭を下げる姿には気骨がある。弘徽殿で起きた火事についても、一切焦る様子はなく余裕ある表情で「女院かもなあ」と口にした。「妬まれて結構ではありませんか。父上も姉上も兄上もようやく妬まれる立場になられたのですから」と笑ってみせた隆家は、「女院でなければ、父上を恨んでる人ですよ。大勢いるでしょ」「兄上だってわかるだろ、それぐらい」と神経を逆撫でするような物言いを続けた。

 伊周も隆家も人物像には違いはあるが、神経に障るような言動を見せることからよく似た兄弟とも言える。さまざまな人からの妬みを買っている中関白家の将来に、この兄弟はどのように影響を及ぼすのだろうか。

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