近年増えてきた電動パーキングブレーキのメリット、デメリットと使い方を解説します。便利なオートブレーキホールド機能についても分かりやすく紹介。その他のパーキングブレーキの種類と特徴、電動パーキングブレーキ車を買うべきかどうかもまとめました。
パーキングブレーキとは?
パーキングブレーキとは駐車時に使用するブレーキのこと。車両を停止したままにすることを目的として設計され、どの車にも必ず採用されています。
一般的にはシフトレバーを「P」に入れたあとに、さらにパーキングブレーキをかけることで、停めた車が動き出さないようにしています。
完全に車両を停車させ、その状態を保つことを目的としていますので、フットブレーキ(ブレーキペダル)とは異なり、ブレーキの強弱の調整は全くまたはほとんどできません。
パーキングブレーキの種類一覧
名称 | 主なメリットや特徴 | 主なデメリット | 別名 |
電動 パーキング ブレーキ |
・パーキングブレーキの かけ忘れや解除し忘れを防げる ・フットブレーキから足を 離しても保持できる場合も |
・操作方法がメーカー間で 統一されていない ・発進時に遅れる |
– |
レバー式 パーキング ブレーキ |
・レバーを引く/下ろす | ・レバーを引く力が必要 ・スペースを圧迫 |
ハンドブレーキ サイドブレーキ |
ステッキ型 パーキング ブレーキ |
・持ち手を引っ張って解除 ・室内スペースを最大活用 |
・現在ほぼ見られない | – |
ペダル式 パーキング ブレーキ |
・力が要らない ・省スペース化が可能 |
・ブレーキペダルと 間違えないよう注意 |
足踏み式 パーキング ブレーキ |
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電動パーキングブレーキ【注目】
電動パーキングブレーキは、従来のレバー型パーキングブレーキ(サイドブレーキ)やペダル式パーキングブレーキに代わり、採用する車種が増えてきた新しいパーキングブレーキです。
現在の電動パーキングブレーキを作動させる方法は大きく分けて以下の2通りです。
- シフトレバーを「P」に入れ、「P」スイッチを操作してパーキングブレーキをかける
- シフトレバーを「P」に入れると、自動的にパーキングブレーキもONになる
解除方法もスイッチ操作が必要なタイプと、シフトレバーやアクセル操作に連動するタイプがあります。電動パーキングブレーキを採用する新型車のほとんどは、後者を採用しています。
パーキングブレーキON/OFFの操作はメーカーにより異なります。また、標準設定がスイッチ操作不要の車種でも、マニュアルモード(スイッチ操作が必要)に切り替えることができる場合があります
電動パーキングブレーキの仕組みとはたらき
電動パーキングブレーキブレーキは、センサーから車速やシフトノブの位置、シートベルトの装着状態などの情報を読み取って、ON/OFFの動作を行っています。
多くはディスクブレーキのキャリパー内にON/OFF動作を行う装置が組み込まれていますが、近年ではドラムブレーキ採用車種にも対応できるようになり、高級車から軽自動車まで、多くの車種が電動パーキングブレーキを採用するようになりました。
その理由は、アダプティブ・クルーズコントロールを採用する車種が増えたためです。詳しくは後述します。このほか、オートブレーキホールド機能やヒルスタート機能などにも、電動パーキングブレーキが大きく関わっています。
電動パーキングブレーキのメリット
パーキングブレーキのかけ忘れを防止できる
電動パーキングブレーキを採用する新型車のほとんどは、「P」スイッチ操作不要の自動機能を採用しています。シフトレバーを「P」に入れるとパーキングブレーキが連動してONになるため、レバー型やペダル式に比べてかけ忘れを防止できます。
また、パーキングブレーキ操作に力をほとんど必要としないため、力の弱い方や障害のある方でも安全に車を停めることができます。
パーキングブレーキの解除し忘れを防止できる
「P」スイッチ操作不要の電動パーキングブレーキの場合、ブレーキ解除も自動で行ってくれることがあります。そのため、パーキングブレーキをかけたまま走行する危険がありません。
オートブレーキホールドやヒルスタートアシストが使える
電動パーキングブレーキを採用する新型車の中には、そのシステムを利用して、信号待ちや坂道での一時停止中に便利な、「オートブレーキホールド」や「ヒルスタートアシスト」を搭載している場合があります。
この機能は、シフトが「P」以外に入っているときでも電動パーキングブレーキを作動させ、自動的にブレーキ力を保持してくれるため、ブレーキペダルから足を離しても車を停止させ続けることができます。
ストップ&ゴー付き全車追従アダプティブ・クルーズコントロールが使える
アクセルとブレーキを車が適宜作動させ、前の車との車間距離を保ちながら走行するアダプティブ・クルーズコントロール。電動パーキングブレーキの機能を利用して、減速→停止→再発進を可能にしている車種が増えてきました。フットブレーキから足を踏み替える頻度が少なくなり、長距離・長時間のドライブでも負担が少なくなります。
サイドブレーキレバーやフットレバーがなくなり、車内空間を広く確保できる
センターコンソールや足回りにパーキングブレーキレバーやペダルを設置する必要がないため、車内空間を有効活用できます。電動パーキングブレーキが軽自動車などサイズが小さな車とも相性がよいのはそのためです。
電動パーキングブレーキのデメリット
スイッチ操作が必要な車種の場合、メーカーで操作が異なる
電動パーキングブレーキを採用する新型車のほとんどはスイッチ操作が不要ですが、車種によっては必要なケースがあります。その場合、スイッチを引き上げるのかプッシュするのか、その操作でON/OFFどちらになるのかを確認する必要があります。
また、この操作方法はメーカー間で統一されていないため、乗り慣れないレンタカーや他人の車を運転する際は、操作方法を必ず確認しましょう。
電気系統なので発進時はワンテンポ遅れる傾向がある
電動ゆえに、パーキングブレーキが解除されるまでのタイムラグが気になる、という声が聞かれます。
オートブレーキホールドをONにするとクリープ走行がしにくくなる
電動パーキングブレーキの機能のひとつであるオートブレーキホールドがONになっていると、交差点や駐車時にブレーキを踏むたびに、いわばサイドブレーキが引かれた状態になってしまいます。ブレーキホールド状態はアクセルを踏むことで解除されるので操作上は支障がありませんが、前述した通りどうしても発進が遅れてしまいがちです。
その場合、オートブレーキホールド機能を切っておくと、スムーズなクリープ走行ができるでしょう。
サイドターンはできない
レバー型パーキングブレーキ(サイドブレーキ)搭載車であれば、走行中にサイドブレーキを引いて最短距離でターンするテクニックを使うことができますが、電動パーキングブレーキではできません。電動パーキングブレーキはスポーツ走行やモータースポーツ向きの安全装備ではないといえます。
電動パーキングブレーキの使い方
ここで解説するのはあくまで一例です。電動パーキングブレーキの使用にあたっては、各メーカーの取扱説明書を確認してください。
パーキングブレーキをON/OFFにする
- 車を停車させ、エンジンを停止
- シフトレバーを「P」に入れ、ブレーキから足を離す
- スイッチ操作式の場合、2のあと「P」スイッチを操作する
- 車を発進させる際は、まずエンジンをかける
- ブレーキを踏んだまま、シフトレバーを「P」に入れる。スイッチ操作式の場合、シフトレバーを操作する前に「P」スイッチを操作する
非常時にパーキングブレーキをON/OFFにする
- 走行中、電動パーキングブレーキスイッチを操作する(引き上げ続ける、押し続けるなど、メーカーごとに要確認)
- 警告音や警告表示があり、パーキングブレーキがかかる
- OFFにする場合は、スイッチから手を離す
オートブレーキホールドを使う
- オートブレーキホールドスイッチを押し、ONにしておく
- 走行・停車中、メーター内のオートブレーキホールド表示灯が点灯すると待機状態に
- 2の状態のとき、ブレーキペダルを踏んで車両を停止させると、停止後ペダルから足を離しても停止状態が保持される
- 発進するときは、アクセルペダルを踏む
※オートブレーキホールドを作動させたくない場合は、オートブレーキホールドスイッチを押し、OFFにしておく
電動パーキングブレーキは故障する?
電動パーキングブレーキは電子制御のため、バッテリーが上がってしまうと解除できなくなります。とはいえ、手動で解除しない限り発進することはありませんので、停止している状態でバッテリーを交換すれば解決します。
手動で解除する場合は、フットブレーキを踏み込んだ状態で電動パーキングブレーキを押し下げてください。
シートベルトをしないと電動パーキングブレーキが解除されないので、発進手順を守ることが大切です。また、短時間で何度も作動と解除を繰り返すと一時的に使用できなくなります。