周囲を海に囲まれた我が国ニッポンは紛れもなく海釣り天国、多種多様な魚がねらえるが、同じ魚種をねらうにしても、さらに同じ釣りジャンルといえど、地方によって独特のカラーがあるのが、何より古くからニッポン人が釣りに親しんできた証拠。
「あの釣りこの釣り古今東西」第7回は雑食性の魚の代表格(?)であるチヌ(クロダイ)。前回紹介したグレ以上に、使用するエサのバリエーションが豊富なのはご存じのとおりで、動物性のエサだけでなく「植物性のエサでも!」という内容を中心に話をすすめよう。

暑い夏はクロダイだって
スイカが食いたくなる!?

千葉県は房総半島の磯では古くから「ポカン釣り」と呼ばれる夏場のクロダイ釣法がある。そのエサは何とスイカだ。スイカの一大産地である房総地方の畑で割れてしまったものや売り物にならないスイカが大小の河川を通して海に流れ込み、海面に浮かんだスイカの身を「ポカン」と波紋を出して食うクロダイを見て先人たちが思いついた釣りだとされる。


房総半島の磯で古くから盛んなクロダイのポカン釣りのエサははスイカ
出典:写真AC

「それなら紀伊半島でもスイカでチヌを」と考え、かなり以前だが同じくスイカの産地である和歌山県の印南町の沖磯で試したことがあったが、1回限りの釣りだったこともあり残念ながら結果は出ず終い。しかし、すぐ近隣の田辺市の磯ではその昔、ミカンでチヌが釣れたという話を聞いた。というのも田辺にはミカンの缶詰工場があり、その工場排水で流れ出たミカンの味にチヌが慣れていたからだということだった。


雑食性の強いチヌだから「ミカンの缶詰」で釣れたって不思議ではない?
出典:写真AC

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スイートコーンに押し麦
穀物だって大好物!

同様に各河川から流れ出るお蚕さんのサナギの味に慣れたチヌを海面に浮かせて釣る「サナギの浮かせ釣り」は、田辺あたりの磯で古くから夏場の定番釣法としてあまりにも有名だ。警戒心が強いとされるチヌなのに、このように鳥など外敵にねらわれやすい海面を漂うものでも食えそうなものなら何だって食ってしまう、チヌのどん欲さというかたくましさを垣間見ることができる。


サナギは古くからチヌ釣りの定番エサだが「浮かせ釣り」は南紀田辺周辺の独特な釣り

分かりにくいが海面の波紋は海面を流れるサナギをチヌが食った瞬間

チヌがねらえる植物性のエサで有名なのは、イカダやカセからの「かかり釣り」や磯、防波堤からの「紀州釣り」などで使用される缶詰のスイートコーンだ。チヌだけでなく多くの魚にとって、穀物も敬遠するものではないらしい。実際、釣り上げたチヌの胃の中にはマキエに配合されたコーンや押し麦を大量に確認できる。


スイートコーンは「かかり釣り」や「紀州釣り」では珍しくないエサ

余談だが以前、南紀の磯でフカセ釣りをしたときに、マキエ(オキアミ)の配合エサに混ざっていた押し麦を3粒ほどハリに刺してみたことがあった。磯際に仕掛を入れると、すぐにウキが引き込まれアワセと同時に強烈な引きに見舞われた。残念ながらハリス切れ(だったと思う)で魚の正体は不明。その磯は黒潮の強い影響下にあり、まずチヌが釣れる磯ではないので何か別の魚だろう。