トヨタ カローラ1100(昭和41/1966年11月発売・KEEP10型)【昭和の名車・完全版ダイジェスト035】

この連載では、昭和30年~55年(1955年〜1980年)までに発売され、名車と呼ばれるクルマたちを詳細に紹介しよう。その第35回目は、大衆車ながら高級感を演出して人気を博したトヨタ カローラ1100の登場だ。(現在販売中のMOOK「昭和の名車・完全版Volume.1」より)

「プラス100ccの余裕」のコピーだけではない


実質的にも先進的機能で同時代をリードする

昭和41(1966)年10月の東京モーターショー直前にカローラ1100は発表された。ひと足先に発売されたサニーに対抗し「プラス100ccの余裕」をコピーに売り出したのは有名な話だ。ボディスタイルは格上となるコロナに似せて高級感を演出し、ルーフからトランクリッドにかけての特徴的な曲線は、セミファストバックとでも呼ばれるような斬新さだった。

高級感は室内にも及ぶ。カローラ1100デラックスのシートは、フロントがフルリクライニングのセパレートシート、リアがベンチシートだが、フロントシートの背もたれは16段階にリクライニングし、前後のスライド幅は120mmと大きい。

シートクッションはS型バネと厚いウレタンフォームの2重クッションとなっており、ソフトな座り心地とした。カーブウインドウを採用しているために、室内はショルダー部分にゆとりがあり、後席3人の着座もさほど無理な姿勢にならないで済んだのも快適性として見逃せない。

エンジンは、K型と名付けられた1.1Lの直4OHVだ。最高出力は60ps/最大トルクは8.5kgmを発生する。シリンダーヘッドにアルミ合金を使うなど先進的な取り組みも行っている。動弁機構はOHVだが、カムシャフトの位置が高いハイポジションカムとし、駆動されるプッシュロッドを短くして高回転におけるバルブの追従性を良くした。

カムシャフト本体はクランク軸につなげられた2本のローラーチェーンによって回転させるものだ。クランクシャフトは5ベアリング支持で、ここも3ベアリングだったライバルのサニー1000に差を付ける部分だった。

シリンダーブロック全体が左側に20度傾斜しているのも特徴的で、これによって重心が低く抑えられるというメリットも生まれた。

吸気系では、エアクリーナーの容量を大きくし、2バレルのダウンドラフト型ストロンバーグタイプのキャブレターを採用している。冷却ファンは2枚羽根とし、十分な冷却性能に加えて静粛性も高める設計となっている。

トランスミッションはフルシンクロの4速MTだ。ギア比はクロスレシオタイプとし、フロアから伸びるチェンジレバーによりH型のパターンでコントロールされる。最終減速比は4.222とこのクラスとしてはローギアードなもので、これもパワー感を高める手段となった。

(広告の後にも続きます)

イメージ戦略が成功し、日本を代表する大衆車に

ボディ構造は、一般にユニットコンストラクションと呼ばれる構造を採用した。これはボディの強度を受け持っているのがフロアパネルに一体溶接されているアンダーフレームで、このアンダーフレームがサイドシル下の2本のメインサイドメンバーと、これをつなぐ2本のクロスメンバーに結合。

この前後にエンジンおよびフロントアクスルなどが取り付けられるフロントサブフレーム、リアアクスルなどが取り付けられるリアサブフレームなどを加えて構成されている。このボディ構造をトヨタではユニフレームと呼んでいる。

サスペンションは、フロントがストラットでスプリングはリーフとコイルを併用し、コイルにショックアブソーバが組み合わされる。ストラットの採用は国産車で初だった。リーフスプリングは、左右のアームを結んでおり、スプリングとしての役割の他にスタビライザーとしても機能する。

リアはリーフリジッドだが、メインリーフスプリングの上に、もうひとつリーフスプリングがあり、これを非対称に重ねてワインドアップを防止する構造となっている。

ステアリングギア形式はウォーム&ローラー式でギア比は18:1。最小回転半径は4.55mと取り回しの良いものだった。デラックスの車重は710kgで、サニー1000、スバル1000に比較するとやや重い。反面、最高出力が高いためにパワーウエイトレシオは11. 8ps/kgと小さい。

冒頭のキャッチコピーの秀逸さもあり、カローラ1100はライバルと目されたサニー1000を販売台数で凌ぎ、日本を代表する大衆車の地位を得る。どちらかといえば性能的な差というよりは、イメージ戦略の成功といえるだろう。

そしてカローラが普及していくことで日本のモータリゼーションが進み、大衆車の代名詞ともいえるクルマとして支持されていく。日本のモータリゼーションはこのクルマの貢献あってこそと言ってもいいだろう。