はたらく車の多くがディーゼルエンジンを採用

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トラックやトレーラー、バス、消防車など人々の生活にかかせないいわゆる“はたらく車”は、重いものを載せていても坂道などで停止しないよう、一般的な乗用車のエンジンよりも大きな、大排気量のエンジンを搭載しています。

“小型”と呼ばれるトラックであっても、乗用車であれば大排気量と言われる3,000ccクラスのエンジンを搭載し、“大型”トラックになると桁が増えて10,000ccやそれ以上のクラスのエンジンを搭載。軽自動車が660cc、一般的な乗用車が1,500ccや2,000ccであることを考えると、はたらく車のエンジンはとても大きいことがわかるでしょう。

これらの“はたらく車”のエンジンは排気量が大きいということ以外にも、レギュラーやハイオクといったガソリンを燃料とするガソリンエンジンではなく、軽油を燃料とするディーゼルエンジンであるという違いがあります。

ディーゼルエンジンは乗用車でも、“クリーンディーゼル”としてディーゼルエンジンを搭載するものも販売されているため、存在そのものは一般に知られていますが、ではなぜディーゼルエンジンが大型車に多く採用されるエンジンなのか、その理由を明確に答えられる人は多くないようです。

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大型車がディーゼルを採用する理由は?

ディーゼルエンジンの特徴として「ガソリンエンジンよりも寿命が長い」「ガソリンエンジンよりも頑丈」といったことがよく挙げられます。自家用車として使われる乗用車と違い、“はたらく車”は長距離や長時間の利用が多く、運転中に壊れてしまえば大きな損失を生むことになってしまうため、“はたらく車”で多く採用されるディーゼルエンジンがそれに適した長寿命の頑丈なエンジンだと考える人が多いのでしょう。

しかし、実際にはガソリンエンジンとディーゼルエンジンでは、構造上の違いによる寿命の差はほとんどなく、むしろ自家用車のような使い方では、ディーゼルエンジンのほうが早くにダメージが蓄積する場合もあります。

では、ディーゼルエンジンのほうが寿命が短いのでしょうか?繰り返しますが、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンでは寿命の差はほとんどありません。“はたらく車”のほとんどがディーゼルエンジンを搭載するのには、別の理由があります。

前述のとおり、“はたらく車”は重いものを載せていても坂道などで停止しないよう、一般的な乗用車のエンジンよりも大きな、大排気量のエンジンを搭載しています。詳細は省きますが、排気量が大きければ大きいほどエンジンのトルクが大きくなり、重いものを積んでいても坂道を難なく登ることが可能です。

ガソリンエンジンとディーゼルエンジンではエンジン内部の燃焼方式が異なり、1気筒あたりの大きさの限界に差があります。ガソリンエンジンでは、おおむね1気筒あたり600cc程度が限界と言われており、4気筒で3,000ccクラスの乗用車というのはほとんどありません。3,000ccクラスのガソリンエンジンは、多くの場合で6気筒エンジンを採用します。ガソリンエンジンで排気量を上げる方法は、気筒数を増やすということになるのです。増える気筒数の分だけ部品点数が増えるため、コストなどが上昇します。

いっぽう、ディーゼルエンジンは1気筒あたりの大きさに限界がなく、船舶用の超・大型なエンジンの中には1気筒あたり30,000ccを超すものも。同じ排気量で比較するとガソリンエンジンよりも少ない気筒数で目標の排気量、トルクを実現できるため、それだけコストなどガソリンエンジンよりも抑えられます。これが、“はたらく車”の多くがディーゼルエンジンを搭載している理由です。