ぜんぜん来ない「ロシアのF-35」 Su-57ステルス戦闘機の納入が伸び悩む理由

ステルス性能をもつロシア製の第5世代戦闘機Su-57、その2023年中最後の機体がロシア国防省に納入されました。しかし、その数は極めて少数と見られています。

現在も保有機数は10機前後?

 ロシアの統一航空機製造会社(UAC)は2023年12月27日、ステルス性能をもつ第5世代戦闘機Su-57について、2023年中最後の機体をロシア国防省に納入したと発表しました。

 UACは「第5世代航空機の数が増加し、工場の能力が強化された」と生産の順調ぶりをアピールしていますが、実は、調達数は思ったほど伸びていません。9月にも同機は複数機が納入されたとされていますが、その数は極めて少数とみられています。

 ロシア空軍は2019年に量産タイプのSu-57を初受領し、2027年までに76機を取得するとしていましたが、調達計画は芳しくないようです。2022年2月のウクライナ侵攻時点で実戦配備されているSu-57は、わずか3機でした。その後、イギリス国防省の調査結果によると2023年1月で8~9機まで数を増やしたとみられていますが、これに2023年分の納入機体を加えても、現状で作戦可能なのは10機弱であると考えられます。

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経済制裁のダメージはかなり大きいか?

 ほかに第5世代戦闘機を生産する能力がある国としては、アメリカと中国があります。アメリカに関しては、既に大量生産が可能な状態となっています。

 アメリカ製の第5世代戦闘機であるF-35「ライトニング II」は、2023年に100~120機程度が納入されたとみられています。これは新ソフトウェア「TR-3(テクニカルリフレッシュ3)」のトラブルにより、147~153機納入予定だったものを下方修正した数字になっています。

 中国については正確な情報は入っていないものの、2023年のJ-20の生産数は100機前後になるという専門家の見解もあります。

 J-20の初飛行は2011年1月で、Su-57は2010年1月と、初飛行に関してはSu-57の方が約1年早く飛んでいます。にも関わらず、空軍への納入が10機程度に留まっている背景には、2022年2月のウクライナ侵攻による経済制裁より前、2014年のクリミア半島併合によるアメリカやEU諸国による制裁の影響が強いとみられています。ロシアの防衛産業は、西側から輸入される精密部品や半導体などに大きく依存しており、それは2022年2月の侵攻時でも大きく変わってはいません。

 ロシア国防省は、2024年は同機の生産数を倍以上とし、年末までに配備数を50機とする予定であるとしています。さらに、2025年から近代化バージョンの量産も開始し、さらに生産数も増えると発表しています。しかし、軽戦闘機型の第5世代機であるSu-75「チェックメイト」の製造も当初は2023年に初飛行だった計画が、遅れに遅れており、ようやく2023年11月13日、試作初号機を2025年に向けて製造する計画であることを表明したほど。そのため、Su-57の計画に関しても大幅に変わる可能性は残っています。