誰もやらなかった新型ステップワゴンの運転席から見えるものと操作系を徹底紹介【新車リアル試乗 9-8 ホンダステップワゴン ユーティリティ編・運転席まわり 前編】

■ステップワゴンに与えられた、ドライバーへの親切ぶりは?


ステップワゴンの内外詳細をしおりさんと見ていきます

リアル試乗・ステップワゴンの第8回めは、内外のユーティリティの充実ぶりを見ていきます。

そのスタートは、運転席まわりから。

●運転席まわり

・インストルメントパネル


インパネ上面はフラットですっきりしているが、その反面、オーソドックスにも映る

ここまで何度か書いてきたとおり現行のステップワゴンは、表示領域をセンターまで広げたり、ハンドルの外側に配したデジタルメーターを起用したりしていた4代め、5代目あたりまでのステップワゴンとは異なり、エンターテイメント性は見られない、オーソドックスな形状になってしまいました。そのぶん、計器盤上面は平面基調ですっきりし、サイド方向も直線で車幅がわかりやすいスタイルになっています。

4代め、5代目とかなり違うのに、サイドウォークスルーを成立さすべくハンドル左にインパネシフト、その左に空調パネル、その上にナビ画面というおおかたのレイアウトはまったく同じ。

メーターフードを除くインパネ上面手前半分は、シート地と同じ表皮で包まれるのも気に入った点です。すなわちステップワゴンAIRならこの部分はファブリック張りになり、これが筆者がAIRを気に入った理由でもあります。スパーダなら合成皮革に、PREMIUM LINEはスエード調表皮になります。

・メーター


10.2インチデジタルグラフィックメーター。とはいえ、左の水温計(e:HEV車ではバッテリー残量計)と右の燃料計は液晶から外れた10ドットLED表示だ

今回から全面液晶式の「10.2インチデジタルグラフィックメーター」に変わりました。といっても、左端の水温計(e:HEV車ではバッテリー残量計)と右端の燃料計は、液晶ではない10ドットLED表示。液晶表示なのはこの2点以外で、左にアナログ回転計、右にアナログ速度計、その中央上部にデジタル速度計を設置。

表示は標準状態の「2眼」のほか、「バー」、それぞれのときにアダプティブクルーズコントロール作動状態をシンプルに示す「2眼/シンプル」「バー/シンプル」の4とおり用意されています。このへん、「メーター編」で紹介したとおりです。

・マルチインフォメーションディスプレイ

本当はこのメーターパネル自体、「マルチインフォメーションディスプレイ」で、速度計も回転計も「マルチインフォメーション」のうちのひとつのような気がしますが、いちゃもんはさておき、多彩な情報表示エリアは左の速度計、右の回転計、それぞれの円内に設けられており、取扱説明書上では「マルチインフォメーションディスプレイ 左側」「マルチインフォメーションディスプレイ 右側」と別個で記載されています。

<マルチインフォメーションディスプレイ 左側>

左側マルチインフォメーションディスプレイ(以下MID)には、時刻やオーディオ関連の情報が表示されます。オーディオ関連はAMやFM、テレビの周波数&放送局、Bluetoothオーディオを表示。非表示にもできますが、このときは時刻もいっしょに非表示となります。別で選択できればいいのに。

<マルチインフォメーションディスプレイ 右側>

こちらは多彩。クルマの状態・・・「航続距離/燃費/トリップメーター(AとBそれぞれ)」「車速/経過時間/トリップメーター(AとBそれぞれ)」「ナビゲーション(コンパス&交差点案内表示)」「シートベルト使用状況」「メンテナンス」「安全支援情報」、ここまでの6種計8点がクルマの情報画面。ブランク(何も表示しない)をはさんで「明るさ設定」「車両設定&時計/車両設定」、先述の「メーター表示設定」「警告メッセージ」と続き、これら表示の切り替えは後述のライトセレクターホイールの上下まわしで行います。

不便なのは、トリップメーターA、Bが「航続距離・・・」「車速・・・」内の表示に限定されていることで、速度計下の積算距離計の横で常時表示してくれません。つまり現状では、トリップはセレクターで呼び出さないと見ることができないわけで、これじゃあ困るので、2眼表示であれバー表示であれ、下部は余裕があるのだから、積算距離、トリップA、Bの3つは常に表示させるべし。

設定画面の中身については「カスタマイズ編」で紹介します。

<ライトセレクターホイール(ハンドル右スポーク)>


ハンドル右スポークのライトセレクターホイール

これら表示の切り替え操作は、ハンドル右スポーク・ディスタンススイッチとLKASスイッチの間にあるライトセレクターホイールで行います。上下まわしで「項目選択」、押して「決定」。「戻る」は項目内にある中から選びますが、この「戻る」はできればホイールの左に設置した物理ボタンで行うほうが操作しやすいと思います。とはいえ、ここはすでにディスタンススイッチでふさがっている・・・何とかなるといいですな。

・ステアリングホイール


3本スポークステアリング

ハンドルは3本スポークで、当然電動モーターによるアシスト、チルト&テレスコピック機構付き。スパーダとスパーダPREMIUM LINEは本革巻きとなります。

輸入車は知らず、国産車に共通していますが、チルトはただ上下させるだけではなく、スプリングを設けて軽く調整できないものか。上げ側はばね力で軽く上げ、下げ側は押し下げるようにする・・・現状は鉄のステアリングシャフトと、昔と違ってエアバッグやスイッチ内蔵でなお重くなったハンドルの両者を自力で持ち上げなければならず、左手でレバー固定する際、右手で支えるハンドルが重くてしょうがない。誰もが上端下端にセットするわけじゃなし、その間にもセットできるための機構なのだから、ひと工夫加えてほしいところです。昔のトヨタ車はばね仕掛けになっていたよ(いまはない)。

ハンドリングはただ軽いのではなく、適当な反力も残してあり、操舵感に安っぽいところはなし。直進性もよろしいものでした。

・タイヤ角度モニター

以下のいずれかのとき、車速が約15km/hになるまでの間、前輪の向きを示すイラストが、直進状態を含む7段階で、右側のマルチインフォメーションディスプレイに表示されます。

・ハンドル角が左右90度以上で、パワーモードをONにしたとき。

・ハンドル角が左右90度以上で、シフトをDまたはSにしたとき。

・シフトを1秒以上Rにしたとき。


スターレットX-Limited(1989年12月)


1989年のスターレットに備えられたハンドルモニター

1980年代末のスターレットや90年代のミラに前例があり、当時はタイヤの絵が描かれた円板が左右を向くというものでしたが、液晶のモニターやメーターが多くなったのと、種々の制御用にハナから舵角センサーを持つようになったため、その横展開で昨今、この種のモニターがまた増えてきました。

 

・ワイパー&ウォッシャースイッチレバー


ワイパー&ウォッシャースイッチレバー

ポジションは見てのとおりで、OFFから上にMIST(レバーを押し上げている間作動)、下に下げるごとに間欠、低速作動、高速作動。レバーを引けばワイパー連動でウォッシャー液噴射。先端のスイッチはリヤワイパー用で、上にまわすごとに間欠、低速の定速作動。上下端保持でワイパー連動のウォッシャー液が噴射されます。

フロントの間欠はカメラで雨粒を捉える雨滴感知式ではなく車速連動式で、車速が高いほど作動間隔が数秒短くなり、指輪みたいにはまったリングで時間調整を最短にしたときに車速が上がると、間欠から低速作動に変わります。故障じゃないのでご安心を。

この時間調整、雨粒マークの少ないほうから多いほうにまわすと間欠時間が短くなる・・・細かいことですが、説明書には「間欠時間の調節」とある割に、刻印が雨粒マークなのは矛盾していてわかりにくく、ここは時間の長短で記してくれるほうがわかりやすいと思いました(線が太くなるほど作動間隔が広がるという考え方のほうがわかりやすい)。

なお、フロントワイパー作動時にシフトをRにするとリヤワイパーが作動する「リバース連動モード」もあり、フロントが間欠時にはリヤが間欠作動、フロントが低速または高速のときにはリヤワイパーが連続作動します。

・ターンシグナル&ライトスイッチレバー


ターンシグナル&ライトスイッチレバー

レバーの上下ワンタッチでターンシグナルが3回自動点滅するワンタッチターンシグナル、上下どん突きでターンシグナル。レバー向こう押しでハイビーム、手前引きパッシング・・・このへん、いまさら説明の必要はありませんな。40km/h以下のときは、ターンシグナルやハンドル操作に応じて、点滅させた側(ハンドルをまわした側)のアクティブコーナーリングライトが点灯して斜め前方を照らし出します。

ライトスイッチは定位置AUTOの周囲の明暗に応じて&夜間始動時にライト自動点灯、手前まわしひとつで車幅灯、ふたつまわしで消灯、このふたつが自動戻りで、向こうまわしで強制点灯。AUTOのとき、レバー中立位置のまま自動ハイビームなのがありがたいのは「ライト編」で述べたとおりです。

リング状のスイッチはフォグライトのスイッチで、車幅灯と連動して点灯します。連動は保安基準で規定されているためです。

・運転席右側スイッチ群

ドライバー席右ひざ付近には、上から左右パワースライドドアスイッチ、その右にヘッドライトの手動光軸調整スイッチ、下段に目を移して最右上段がパワーテールゲートのスイッチ、その下に酔っ払い運転みたいなマークのVSA OFFスイッチと並びます。さらに下にはETCユニットがインテグレート。

パワースライドドアのクルマを見るにつけ心配になるのですが、ときにせまい駐車場ではクルマの左側を壁スレスレに停めることがあると思います。それを忘れ、うっかり左のパワースライドスイッチやリモコンのスイッチを押してしまおうものなら、ドア最外側が「ガリガリガリガリガリ」と景気のいい音を立てて、前から後ろまで美しいバーコード傷が・・・ということになりかねない。メーンスイッチは左右個別にしたほうがいいような気がしますが、かえってややこしいか。

・エンジンスイッチ


エンジンスタート/ストップスイッチ。位置はメーター右下にあるが、ハンドル右スポークやライトスイッチレバーに隠れ、自然と指先が触れるというわけにはいかなかった

正式名称「ENGINE START/STOPスイッチ」。リモコンキーを携帯して操作。

ブレーキペダルを踏まずに押すと「OFF」「ACC(アクセサリー)」「ON」を繰り返し、シフトPのブレーキ踏みのボタン押しで始動します。

停車後のシフトPのボタン押しでいきなりエンジンOFF、P以外ではACCに落ちます。

ボタンを上下分割するなどして、シフト位置とは無関係にOFFかACCかを選べるといいのですが、いまのところそのようなクルマはありません。

シフトPのACCで30~60分経過すると自動でOFFになるパワーモードオートオフ機能のほか、ボタンを約2秒以上の長押しか連続3回押しすると緊急停止させる機能もついています。逆の緊急機能もあり、通常の方法ではエンジン始動できないとき、駐車ブレーキ制動&シフトPでACCにし、ブレーキ踏みでボタンを15秒以上押し続けるとエンジンがかかります。

・Honda スマートキーシステム


Hondaスマートキーシステムのリモコン(おもて側)


Hondaスマートキーシステムのリモコン(うら側)

試乗車はパワーテールゲート付きなのでボタンは全部で5つ。ドアロック/アンロックの各ボタン、左右パワースライドドアの各ボタン、パワーテールゲート付き車ならその開閉スイッチがあり、長押しするとテールゲートがパワー開閉します。

ちょっと変わっているのはドアロックで、フロントドアハンドルのセンサーに触れるとアンサーバック音とともにハザード点滅(1回)してドアロックされるのは通常と同じながら、リモコンロックボタンを押した場合は、1回押しではハザード点滅のみでロック、5秒以内の再度押しでブザーが鳴ります。

そうそう、ホンダ車の場合、ずいぶん前から、電気式ドアロックに燃料給油リッドのロックも含めています。

また長くなりそうなので、ユーティリティ編を次回に続けます。

(文:山口尚志(身長176cm) モデル:星沢しおり(身長170cm) 写真:山口尚志/モーターファン・アーカイブ)

【試乗車主要諸元】

■ホンダステップワゴン スパーダ〔5BA-RP6型・2022(令和4)年5月型・FF・CVT(自動無段変速機)・ミッドナイトブルービーム・メタリック〕

●全長×全幅×全高:4830×1750×1840mm ●ホイールベース:2890mm ●トレッド 前/後:1485/1500mm ●最低地上高:145mm ●車両重量:1740kg ●乗車定員:7名 ●最小回転半径:5.4m ●タイヤサイズ:205/60R16 ●エンジン:L15C型(水冷直列4気筒DOHC16バルブ直噴ターボ) ●総排気量:1496cc ●圧縮比:10.3 ●最高出力:150ps/5500rpm ●最大トルク:20.7kgm/1600~5000rpm ●燃料供給装置:電子制御燃料噴射(PGM-FI) ●燃料タンク容量:52L(無鉛レギュラー) ●モーター:- ●最高出力:- ●最大トルク:- ●動力用電池(個数/容量):- ●WLTC燃料消費率(総合/市街地モード/郊外モード/高速道路モード):13.7/10.4/14.3/15.3km/L ●JC08燃料消費率:15.4km/L ●サスペンション 前/後:マクファーソン式/車軸式 ●ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ディスク ●車両本体価格325万7100円(消費税込み・除くメーカーオプション)