長野県のほぼ真ん中にある松本市。観光スポットとして有名なのは、松本城や上高地、美ヶ原高原などです。そんな城下町で根付いてきた食文化は、豊富な水や地形、昼夜の温度差など自然の恵みを受けながら、人々によって紡がれてきました。

地域の居酒屋やお食事処、旅館などで味わうのも良し、地域のスーパーなどでお土産としても購入するのも良し。おすすめの信州松本の食をご紹介します。

湧き水でこねられる「蕎麦」

長野県の名物として多くの方にイメージされる蕎麦。「信州そば」として全国に知られ、松本でも多くの専門店が軒を連ねます。長野県の郷土食として根付いた理由は、昼夜の大きい寒暖差が、蕎麦の生育環境に適しているから。さらに、蕎麦をこねる際に必要となるおいしい水にも恵まれています。

特に松本は「まつもと城下町湧水群」と呼ばれる「湧き水」の宝庫。美ヶ原などの山々の伏流水が豊富に蓄えられて、地上に湧き出しています。松本には、これらの湧き水を使った蕎麦屋も多く、ほかでは真似できない味わいとなっています。

松本の肉といえば「馬肉」

明治時代から始まったとされる馬肉文化。熊本や会津など同じく、長野県でも古くから根付きました。かつて松本では、「肉といえば馬肉」を示していたと伝わります。

馬肉の食べ方は、すき焼きや焼き肉、馬刺しなど。特に松本では、生で食べる馬刺しが人気です。海が無い長野県において、魚の刺身の代わりに広まったとされます。生でも臭味はなく、赤みのお肉のような旨味があり、舌の上でトロっととろけますが、脂身はさっぱり。低カロリー・高タンパクのため、ヘルシーな食材としても知られます。

有名フルーツ専門店にも並ぶスイカ

松本西部にある、波田(はた)地区は、日本有数のスイカの名産地。土質は火山灰土壌で、昼夜の寒暖差が大きく日照時間も長いことから、品質の良いスイカになります。糖度が高く、甘くてシャリシャリとした食感が特徴。大玉でありながら空洞が少ないスイカは、ギフトでも選ばれます。

夏季には、地域の道の駅や、畑に囲まれた直売所などでも購入できます。特に、波田「下原地区」で育つ「下原(しもはら・しもっぱら)スイカ」は、ブランドスイカとして知られます。

自然環境が生かされた、地酒・ワイン

日本酒やワインの産地としても知られる松本。まず、米や水に恵まれ、冬の寒さと乾燥にみまわれる環境は、日本酒造りにはかかせない要素です。

また、ワイナリーも点在していて、特に松本平の東にある山辺(やまべ)地域は、緩やかな南斜面の地形であることからフランスのボルドーと似ていると言われるブドウの生産地です。古くから「長野県ぶどう発祥の地」としても知られています。

どの醸造所も個性豊かで、品質本位のこだわりの酒が楽しめます。

ボリュームのある一皿「山賊焼き(さんぞくやき)」

鶏の一枚肉を、ニンニクやショウガの入った醤油ベースのタレに漬け込み、片栗粉をまぶして揚げた「山賊焼」。カリカリの衣にまとわれた山賊焼を一口頬張れば、ニンニクやショウガの香りが口の中に広がって、ジューシーな肉汁があふれます。添えられる野菜の定番は、ざく切りのキャベツ。ビールにもよく合います。

クリスマス時期、松本のスーパーでは、ローストチキンの隣に山賊焼きが並ぶほど、愛されている料理です。

※画像提供:松本市

(文:竹中 唯)