「主力のフリゲートと潜水艦が修理できない!動かせない!」悲鳴をあげた南アフリカ海軍の予算とは

南アフリカ海軍のフリゲート艦4隻と潜水艦3隻の改修が全く進んでいないことが、2023年5月中旬に明らかになりました。中には建造以降、全く受けていない艦もあるそうです。

遅々として進まない艦の改修

 南アフリカ海軍のヴァラー級フリゲート艦4隻とヒロイン級209型潜水艦3隻の改修が全く進んでいないことが、2023年5月中旬に行われた同国の国防委員会で報告されました。

 海軍の副長官であるブベレ・ムラナ少将の話によると、ヴァラー級4隻の改修費用は約50億ランド(351億円)になるという計算ですが、潜水艦の改修費用と合わせ、2023年度の予算で艦船改修に割り当てられているのは14億ランド(100億円)程度しかないとのことです。

 以前から南アフリカ海軍の予算不足は問題になっており、メンテナンスのために割り当てられた費用がほとんどありません。同国がここ数年、経済的な低迷と政治家の汚職に苦しんでいる影響もあるようです。

 ヴァラー級は「アマトラ」が2015年に一部改修されたものの、ほかの「イサンドルワナ」「スピオエンコップ」「メンディ」に関しては、2012年と2018年に予定されていた2回の大規模改修を受けずに今に至っているといいます。ムラナ少将によると、4隻には全て欠陥が確認され、特に「スピオエンコップ」に至っては、油水分離装置や弾薬供給システムなど、計18か所に欠陥があるとのこと。

 潜水艦も同様の状態で、「マンタティシ」が2014年に部分的な改修を終えたのみで、「シャーロット・マクセケ」の改修は中断、「クイーン・モジャジ1世」に関してはそもそも行われていないそうです。209型潜水艦の改修にはフリゲート艦の費用とは別に約38億ランド(270億円)が必要となる見込みです。

 2023年度の14億ランドの費用に関しては、ヴァラー級、209型潜水艦、それぞれ1隻ずつの改修費用になるといいますが、2023年5月現在、同海軍で航行可能なのはヴァラー級では「メンディ」、209型潜水艦の方は「マンタティシ」だけになっています。

 南アフリカ海軍は2023年現在47隻の艦艇を保有していますが、そのうちでヴァラー級は最大の戦闘艦、209型潜水艦は唯一の水中航行可能な軍艦ということで、本来海の防衛の要である艦が満足に稼働していないという、かなり深刻な事態であるといえるでしょう。

 ちなみに、南アフリカでは陸軍に関しても、「任務に対して戦力が著しく不足している」と指摘されて、「海軍の装備はそもそも過剰気味」という声もあるようです。