千葉のトンネル「完成したけど20年放置」なぜ? 片方の出口は封鎖 立派な2車線道路が開通する日は来るのか

千葉県南房総市を通る安房地域広域農道には、完成後20年経っても使われていない東仲尾沢トンネルがあります。どのような事情があるのでしょうか。

20年以上眠り続ける東仲尾沢トンネル

 千葉県南房総市に、完成しているにもかかわらず、開通しないまま20年以上過ぎている道路トンネルがあります。どのような事情があるのでしょうか。

 トンネルはできたけど、道路としてはできていない――そんな宙ぶらりんの状態が続いているのは、安房地域広域農道(広域営農団地整備事業安房地区)の東仲尾沢トンネルです。

 安房地域広域農道は千葉県の房総半島南部を走る道路です。地域で生産された農作物や畜産物を安定して輸送できるよう、県が農林水産省の補助を受けて整備を進めています。

 農道は、このように農業や畜産業の振興を目的に造られていますが、一般のクルマも通行が可能です。

 安房地域広域農道は、東西に走る東部線と南北に走る南部線に分かれます。

 このうち南部線は「安房グリーンライン」という名称で2010年に全線開通しており、富津館山道路の終点である富浦IC(南房総市)から半島南端の南房総市白浜へ向かう際の主要ルートにもなっています。

 一方、東部線は整備が続いています。道路は、南房総市から鴨川市までの全長29.8kmを、車道幅員6m、2車線で結ぶ計画です。

 東仲尾沢トンネルはこの区間に含まれます。長さ602m・車道2車線のトンネルは2000年に竣工しており、トンネルから続く東側の道路も県道88号富津館山線につながっています。2車線の快走路です。

 しかしトンネルに入ろうとすると手前で通行止めとなっており、西側の坑口もバリケードで封鎖されています。西側坑口は山の中にあり、近くにあるのは仲尾沢という沢と林道だけです。

 このようにトンネルは、完成しているものの西側の出口で道がいきなり途切れているため、本来の役割を発揮しないまま20年以上が経過しています。トンネルから西側の計画はどうなっているのでしょうか。

 農道の計画ルートとしては、トンネルを出て林道沿いに西へ進み、道の駅おおつの里付近の県道185号犬掛館山線(南房総市富浦町大津)に接続することになっています。

 しかし、千葉県農林公共事業評価審議会の資料(2022年度第1回)の資料によると、この区間は山林を切り開いて道路を造成することとなりますが、山林地帯のため権利が不明確な土地があったり、沢沿いに公図混乱区域(登記上と実際の地形が合っていない区域)があったりして用地買収が難航しているといいます。

 そこで今後の事業を進めるにあたり、地権者への用地交渉を継続しつつも、新たに沢沿いを避けた北側の新ルートも検討していく方針です。

 2022年11月に開かれた農林公共事業評価審議会では、この区間について県担当者は「完了まで順調に進むと概ね10年くらい」と回答していることから、東仲尾沢トンネルが立派な道路トンネルとして日の目を見るまでは、まだ時間がかかりそうです。

 なお、この安房地域広域農道の、県道185号犬掛館山線から国道127号(南房総市富浦町南無谷)に至る約4kmの区間は、2023年度上半期に開通する見込みです。