富士登山で知っておきたい4つの事実|9,000人の登山データから見えてきた行程選びのコツ

言わずと知れた日本一の山「富士山」。 「人生で一度は富士登山に」と思っている人も多いのではないでしょうか。この記事では、2022年7月から9月までの登山道開通期間に富士山に登ったYAMAPユーザー約9,000人の行動データを分析。そこから見えてきた、富士登山前に知っておきたい4つの事実をお伝えします。

※この記事は、『YAMAP 山登りベストコース』(株式会社ヤマップ著、KADOKAWA)内のコラムページ、「富士登山で知っておきたい4つの事実|5,000人の登山データから見えてきた行程選びのコツ」(P220-222)を2022年度の登山者データに更新し、写真、内容などを一部追記したものです。

事実1:1番人気の登山道は「吉田ルート」

吉田ルート途中の景色(naさんの活動日記より)

登山者にも大人気の富士山には複数の登山道がありますが、中でも主要なのは「吉田ルート」「須走ルート」「御殿場ルート」「富士宮ルート」の4つ。それぞれ特徴があり、必要な登山技術や体力も違ってきます。ではこれらの中で、最も登山者に人気のルートはどこでしょうか?

次のイラストは、主要4ルートに関して、YAMAPユーザーの通過人数の割合を表現したものです。これを見ると4ルートのうちでも「吉田ルート(登山口標高約2,305m)」が一番人気。次いで「富士宮ルート(登山口標高約2,380m)」が多いことがわかります。

人気の理由は、首都圏からのアクセスの良さや山小屋などの施設の多さに加えて、登山口から山頂までの標高差にあります。「吉田ルート」と「富士宮ルート」は、登山口が標高2,000mを超え、「須走ルート(登山口標高約1,970m)」や「御殿場ルート(登山口標高約1,440m)」と比べて高い場所からスタートできるため、山頂までの標高差を小さく登れるのです。

吉田ルートはここから出発する(naさんの活動日記より)

また、「吉田ルート」の人気の理由は歩きやすさにもあります。2番目に人気の「富士宮ルート」は岩場が多いのに対し、「吉田ルート」は比較的傾斜角度が緩やかな登山道が整備され、さらに山小屋も最も多いため、富士登山ビギナーにおすすめのルートと言えるでしょう。

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事実2:過酷だけど玄人好みな「御殿場ルート」

御殿場ルートからの景色(BlueMt.さんの活動日記より)

続いて主要4ルートについて、登山口からお鉢(山頂火口周縁部)に到着するまでの参考所要時間と距離を見てみましょう。

下の図の「登り」が示すように、富士宮ルートの236分が最短、御殿場ルートの468分が最長という結果に。この違いを生み出す要因は、登山口の標高と登山口からお鉢までの距離にあります。

先ほどもお伝えした通り、富士宮ルートの登山口は標高約2,380mであるのに対し、御殿場ルートの登山口は標高約1,440m。その差は940mにも及びます。また、歩行距離も富士宮ルートが約4.0kmであるのに対し、御殿場ルートは約9.2kmと2倍以上! この差が所要時間に影響しているのです。

ちなみに、下りはというと、最短が富士宮ルートの169分、最長が御殿場ルートの237分でした。

御殿場ルートは、距離と標高差共に最も大きなルートだけに健脚向きですが、だからこそ好んでこのルートを登る玄人が多いのも事実。 特に火山砂利をスピーディーに下る「大砂走り」は、エキサイティングな登山を楽しめるとあって、人気スポットとなっています。

ただし登山者、目印ともに少ないため道迷いにはくれぐれも注意。靴に火山砂利が入り込まないようにゲイターも必須です。

自分の体力や技術、装備を考えずに挑戦して、登山中に日暮れを迎えてしまった、という状況にならないよう、綿密な計画を立てましょう。

多くの人の念願、御来光(tatedaiさんの活動日記より)