パトカーが「セダン」じゃない!? 各地で目撃! 最新「SUVパトカー」導入の理由とは

パトカーといえば「セダン」型が定番スタイルですが、近年は流行りのSUVタイプを用いた警察車両も見かけます。SUVが導入された理由を探ります。

警察庁「入札公告」には「高床バン型無線車(PHEV)」の記載も

 2023年4月、三菱のSUV「エクリプスクロス PHEV(プラグインハイブリッド)」が、パトカーとして山梨県警 富士吉田署へ初配備されたことが公式SNSで公開され、話題となりました。
 
 パトカーときくとまず、トヨタ「クラウン」などのセダンタイプを思い浮かべますが、なぜSUVであるエクリプスクロスがパトカーとして採用されたのでしょうか。

 街中を走るパトカーをよく見ていると、セダンばかりではなく、コンパクトカーやミニバン、SUVも採用されていることに気づきます。

 白黒のいわゆる「パトカー(無線警ら車)」だけでなく、警察活動に必要なクルマについては、国(警察庁)がお金を出して買う「国費購入」と、都道府県がお金を出して買ういわゆる「県費購入」の大きく2種類があります。

 どちらも普通にディーラーへ行って購入するわけではなく、「競争入札」という方法で買いつけています。

 具体的には、警察が必要とするクルマの詳細情報(私服用、セダン型、4人乗り、4WDなど)を掲示し、そこに参加者(自動車メーカーなど)が契約条件(金額)を一斉に見積もり、期日までに入札させます。

 参加者同士はお互いの見積もりを知ることはできず、最も条件に合った参加者が選ばれます。

 国費も県費も税金ですので、一円でも安い条件を出した参加者が選ばれますが、警察車両は市販されていない特別仕様(灯火類の装備や車体カラーなど)となる場合が多いので、その改造費も含めた金額は、ベースのクルマの価格とは相場が異なります。

 近年は、トヨタのように大量受注でコストを下げられるメーカーや、スズキの小型車のようにそもそもクルマの価格が安いメーカーがやはり強い、ことになっているようです。

 例えば直近の2023年3月27日、国家公安委員会(警察庁を管理する内閣府の外局)が提示した「入札公告」の一文には「私服用高床バン型無線車(PHEV) 42台」と書かれていました。

 これは私服警察官(刑事など)が用いる、いわゆる「覆面パトカー」向けで、「高床バン」がSUVを指すものとみられます。

 同時に「私服用高床バン型無線車 47台」という普通のガソリン車の入札公告も区別されて出ていたので、警察庁がSUVタイプで、かつPHEVを希望していたことがわかります。

 昨今、HEV(ハイブリッド車)やEV(電気自動車)といった環境に配慮した電動車両のパトカーは各地での導入例が増えており、こうした流れの一環と見られます。

 前出の山梨県警 富士吉田署の担当者は取材に対し、次のように話します。

「当署は山岳地帯も多い富士北麓地域が管轄のため、(地上高がある)SUVタイプで4WDの警察車両はこれまでも導入されていました。

 今回、それまで使用していたスズキ『エスクード』のパトロールカーが使用期限を迎えたため、代替として入ってきました。

 山梨での初導入とほぼ同時期に、全国でも数十台が導入されたと聞いています」

 エクリプスクロスPHEVは、三菱自慢の電動4WD制御によって、あらゆるシーンでも警ら活動ができますし、また、PHEVの中では比較的金額も安いので、入札条件にぴったり該当する一台だったのでしょう。

 そしてSNS上で、エクリプスクロスPHEVパトカーの目撃情報が東北エリアなどで相次いでいることからみても、雪深い地域でも安心して走行できる頼れる4WDが求められたのは確かなようです。

 このようにエクリプスクロスPHEVのパトカーは、各地の警察へ配備されていることが確認されています。

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 なおパトカーは、一般企業や個人から寄贈されるケースもあります。

 たとえば栃木県警には、ホンダ「NSX」や日産の「フェアレディZ」「GT-R」などの超高級スポーツカーのパトカーが寄贈されています。

 ホンダも日産も栃木県に開発拠点を置くこともあり、その縁からご当地の警察へ寄贈されたものです。

 今後も多種多様なパトカーがみられることを期待したいです。