
2022年3月22日から開催されている「バンコク国際モーターショー」では、見た目からトヨタ「アルファード」を意識したと見られる高級ミニバンが多く展示されました。
アルファードやLMがタイで人気…その理由は?
日本のみならずアジアでも、高級ミニバンの代名詞となるトヨタ「アルファード」。
度々、ライバルとなるモデルが投入されますが、新たにタイでお披露目されたモデルには、どのような特徴があるのでしょうか。
いま、東南アジアの大都市でアルファードを見かけるのはごく当たり前のこととなっています。
タイの首都バンコクも例外ではなく、スクンビット通りのアソーク交差点といった繁華街では信号待ちの車列に複数のアルファードが存在するのはごくごく日常のこと。
そのレクサス版である「LM」も、アルファードに比べると少ないですが10分間に1台程度の割合で遭遇します。
タイでのアルファードの価格は、日本円換算で1500万から2100万円ほど。
LMは約2200万円からのスタートとなり、物価が日本の半分にも届かない現地の一般的な人にとっては雲の上の存在と言えるでしょう。
にもかかわらずたくさん見かけるのは、富裕層が多いからに他なりません。
現地でなぜアルファードやLMが好まれるのか。
その最大の理由はセダンに比べて室内が広くて快適だからでしょう。
富裕層が移動車両として好み、多くはショーファードリブン(主が後席に座り運転はお抱えドライバーがおこなう)として使われているのです。
東南アジアは欧州と違って超高速巡行する機会が少ないから重心の低さに起因するセダンならではの高速安定性の必要はありません。
「だったら広いミニバンのほうがいい」となるのも当然の成り行きなのです。
タイにおいては、アルファードがここまで増える前はメルセデス・ベンツ「Vクラス」やフォルクスワーゲン「マルチバン」の上級グレードも多く見かけました(ヒュンダイや起亜も上級ミニバンを投入)。
しかし、今では完全に駆逐されてしまいました。
その理由は、完全なる乗用車設計のアルファードと違ってVクラスやマルチバンは“内外装をお豪華にした商用車”に過ぎず、乗り心地や乗降性、また快適装備でアルファードに劣っていたからです。
今や東南アジアのミニバン市場はアルファードとLMを中心に回っているといって間違いありません。
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アルファードのライバルが続々登場。ただし…
そんななか、2022年3月22日から開催されている「バンコク国際モーターショー」では新しい動きがありました。
中国メーカーの「MG」と「BYD」のブースに新しいミニバンが展示されたのです。
なお、MGはかつて英国のブランドでしたが、現在は実質的にブランドだけが中国の上海汽車に吸収されて新興国市場を開拓する役割を担っています。
MGの「MAZUS9」とBYDの「DENZA D9」はいずれも全長5.2mを超えるラージサイズで、アルファードをベンチマークとしていることは一目瞭然。
両車ともバンコク国際モーターショーに展示されていた車両は3列シートで、2列目に大きくラグジュアリーなシートを装備します。
インテリアの作り込みもラグジュアリーセダンを思わせる上質なもので、相当にアルファードを意識していることが伝わってきました。
一方でアルファードと大きく異なるのは、EVを前提にしていること。
タイにおいて中国ブランドはEVを全面的に押し出した攻勢をかけて日本車との違いを明確にしており、展示されたミニバンの2台もEVなのです(DENZA B9は本国では1.5リッターエンジンを組み合わせるPHEVも展開)。
EVはバンコクを中心に増えつつありますが、まだ多く走っているというわけではありません。
2022年の販売台数は1万2000台ほどでした。しかし、2023年は5万台まで増えるという予測もあり、その理由は政府の優遇政策で新車購入時の税金が安く済むことや走行コストがガソリンの数分の一で済むことがあげられます。
そういった追い風の影響を受ければ、これらのEVミニバンは「アルファードではない選択肢」として成功する可能性も否定できません。
アルファードよりも売れるとは考えにくいですが、一定の支持を得て採算ラインに乗せられるだけの販売実績が作れれば成功といえるでしょう。
価格未定ながらすでにタイでの受注予約をはじめているMAZUS9に対し、DENZA9はタイで正式に発表されたモデルではなく、今回の展示は「試乗の反応を確かめるため」としています。
しかし、様子を見ている限りは来場者の反応も良く、市場投入される可能性が高そうでした。
ちなみにDENZAというブランドはBYD傘下ですが、メルセデス・ベンツの合弁事業でもあります。
すなわちメルセデス・ベンツの血が流れていることも、注目すべきポイントでしょう。
Vクラスの惨敗をしたメルセデス・ベンツが、別ブランドのEVで取り返せるかが興味深いところです。