三菱eKワゴンはいかにして生まれ、そのポジションは?【新車リアル試乗7-1 三菱eKワゴン プロローグ編】

■プロローグ・2001年、三菱の「いい軽」誕生


たぶんこのクルマが三菱軽のポジションを確立したと思えてならない2代目ミニカ(写真は1971年型)

いつの時代も三菱軽の主力は古くから続く「ミニカ」でしたが、1998年10月発効の660cc軽新規格(つまり現行軽規格)以降、ミニカ、「トッポBJ」、そしてフルキャブ1BOX「ブラボー」から転身したセミキャブ型1BOX「タウンボックス」…いずれも90年代半ばまでは他社軽をしのぐ商品魅力を持っていたのに、新軽規格以降は失速。商用の「ミニキャブ」も含め、軽市場に於ける三菱軽の存在感が薄れていました。


初代ムーヴ(1995年)


もはや説明不要の初代ワゴンR(1993年)

93年の初代ワゴンR、95年の初代ムーヴに刺激を受けた軽市場はトール型に傾き、当のワゴンR、ムーヴは98年時点で早くも2代目にシフト。ホンダは、ライフをトール型で蘇らせたのが97年だったのにもかかわらず、たった1年半で新規格版を送り出し、スバルも乗用軽をヴィヴィオからトール型プレオ1種に託しました。


社内の猛反対とは裏腹に、1989年の東京モーターショーで参考展示したら大好評! 一転して市販化決定に。1990年に旧660規格に対応して発売されたミニカトッポ(ショーモデルは550cc版)

旧660時代の三菱ヒット作「ミニカトッポ」(と後のトッポBJも)とてトール型には違いありませんが、どちらもフロアや着座位置はミニカそのままに、屋根だけ引っ張り上げたに過ぎないパッケージ。どちらかといえばファニーで愛らしいスタイリングがウケたわけで、後のワゴンR以降のように、下半身から上半身までの空間配置を見直すまでには至っておらず、ワゴンR流トール型が定着してからは遅れが感じられるようになっていました。

だからといって、何も考えていなかった三菱ではありません。

立体駐車場に収まる全高を前提に、レイアウトをイチから見直して乗員をアップライトに座らせ、ミニカトッポとも、背高訴求型トール群とも異なる軽乗用車はできないか?

三菱がその解答を出したのは2001年10月11日のこと。軽市場でのシェア縮小に加え、リコール隠しの発覚で三菱車全体のシェアも落ち込んでいた中、「いい軽(excellent K-car)」の日本語表記と英文表記の頭文字をうまく一致させたネーミングの初代「eKワゴン」を発進させました。


全高、室内の長さと高さに「ちょうどいい」を求めた

「新しい乗用軽のスタンダードを造る」という意欲的スタンスの下、「ちょうどいい」をキーワード(当時の資料より)に内外を構築。多くの立体駐車場に収まる1550mmに抑えた「ちょうどいい」全高、4人が乗るに充分な1830mmの「ちょうどいい」室内長、乗降性を楽にする、高すぎず、低すぎずの「ちょうどいい」630mmの着座高など、従来の軽自動車を否定せんばかりに高さ、広さを追い求めたトール群とは一線を画したコンセプトで現れました。

スタイルも従来三菱軽とは打って変わったもので、当時のミニカと機械部分を共有しながらも、平面と角を組み合わせたスタイルとオーソドックスなランプ形状でまとめられていました。こう書くと平凡でつまらない、印象に残らない形かと思うのですが、そうは思わせなかったのがこのデザインの秀逸なところで、ひと目見て「いいクルマだな」「こんなのが1台あってもいい」「次に買うのはこれでいいか」と思わせる品格と清潔感がありました。

車両サイズ、室内寸法、スタイリングに無理やりな点やわざとらしいところもない。小さくても安っぽさを感じさせない凝縮感も持ち合わせている…ひとつひとつの面やパーツを入念に吟味しながら完成にこぎ着けた感があります。

開発責任者は、後に三菱自動車工業の社長を務めることになる相川哲郎さん。

そもそも前記ミニカトッポは哲郎氏のアイデアで、ミニカを奇抜なまでに背高にし、ファニィなスタイルで包んだこのノッポチビに社内の反応は冷淡だったようですが、モーターショーでの参考展示で好評を得て660cc規格版に手直しし、90年に発売するや大ヒット。その後彼は、いったんはディアマンテの開発に転じますが、再度軽自動車部門に就くことになりました。98年新規格軽以後の落ち込んでいた軽シェアの奪回を命ぜられたのです。そこで企画したのが、従来の軽セダンとも、自らが発案したミニカトッポとも異なる新軽自動車・初代eKワゴンでした。

あれから20年と余。現行4代めeKワゴン試乗を終えた直後、三菱重工の社長・会長を務めた相川賢太郎氏死去のニュースが飛び込んできたのはどんな偶然か…哲郎氏は、賢太郎氏のご子息でもあります。

 


三菱eKワゴン G 4WD(CVT)
2019年3月28日発表・発売。2022年9月8日改良。
発表2019年時点の、eKワゴン、eKクロス合算の月間目標販売台数、4000台

「リアル試乗」が採り上げる7つめのクルマは、現行4代目を数えるeKワゴン。

今回、初代eKワゴンのあらましを長々と書きましたが、それは「eKワゴン」と聞くとどうしても初代モデルが頭に浮かぶからです。

この4代目が初代の血筋を受け継いでいるのかどうか?

主役の話は、次の「概要編」から。

(文:山口尚志 写真:山口尚志/三菱自動車工業/日産自動車/本田技研工業/SUBARU/スズキ/モーターファン・アーカイブ)

【試乗車主要諸元】

■三菱eKワゴン G〔5BA-B36W型・2022(令和4)年型・4WD・CVT・スターリングシルバーメタリック〕

●全長×全幅×全高:3395×1475×1670mm ●ホイールベース:2495mm ●トレッド 前/後:1300/1290mm ●最低地上高:155mm ●車両重量:900kg ●乗車定員:4名 ●最小回転半径:4.5m ●タイヤサイズ:155/65R14 ●エンジン:BR06型(水冷直列3気筒DOHC) ●総排気量:659cc ●圧縮比:12.0 ●最高出力:52ps/6400rpm ●最大トルク:6.1kgm/3600rpm ●燃料供給装置:電子制御燃料噴射 ●燃料タンク容量:27L(無鉛レギュラー) ●モーター:- ●最高出力:- ●最大トルク:- ●動力用電池(個数/容量):- ●WLTC燃料消費率(総合/市街地モード/郊外モード/高速道路モード):21.0/18.0/22.7/21.5km/L ●JC08燃料消費率:24.2km/L ●サスペンション 前/後:マクファーソンストラット式/トルクアームリンク式3リンク ●ブレーキ 前/後:ディスク/リーディングトレーリング ●車両本体価格154万0000円(消費税込み)