ビート、それは愛され続けるクルマ

これほどカッコよく、カワイく、愛したくなるスポーツカーというのは、確かにそうそうないであろう

ツインリンクもてぎで「単一車種によるパレード最多台数記録」でギネスに乗った事もあるように、ビートはユーザーからとても愛されるクルマです。

しかし新車販売期間中はどうだったかというと、なんと発売翌春には、あれほど販売を熱望したはずの国内営業、それも軽自動車を売るプリモ店の担当者がピシャリと言い放ったそうです。

「一日も早く、生産を止めてください」

岩倉信弥「千字薬」第174話 ディスコンより

ビートはたしかに生産工場の空気を明るくして、見学者も増え、ビートを作りたいと求人への問い合わせも増えたと言いますし、発売直後は注文が殺到し、バブル崩壊後のホンダディーラーを救うかとまで言われました。

しかしNSX同様、初期の熱気が落ち着くとパッタリ注文は止まり、それも初期の注文は熱狂したユーザーが一刻も早く手に入れるため、複数店で何股もかけた結果で実態を伴っておらず…といういわけで、販売現場としてはこれ以上傷口を広げるべきではない、と。

さすがに計画上、「今すぐ」とはいかずに1995年まで生産されたものの、特別仕様車の設定のみでマイナーチェンジなどは一度もなし、生産終了から販売終了まで1年かかるほど在庫処理に手間取ったらしいので、確かに商売としては難儀なクルマだったと言えます。

実際、人気があった、今でもある、ギネスに載ったとアレコレ言ったところで、中古車市場では現在でもタマ数豊富で流通していますし(2023年3月現在で150台・大手中古車情報サイト調べ)、やたらと価格が高騰しているわけでもありません。

5速MT車しかないので、AT限定免許しか持っていない今の若いユーザーはほとんど乗れず、2シータースポーツなので複数台所有でないと不便でならないため、「愛し続けるにはそれなりの甲斐性が必要」ということなのでしょう。

それゆえ販売もAZ-1ほどではないものの短期間で終わり、カプチーノのように1998年の新規格移行までしぶとく売ることはできませんでした。

しかし、2015年4月に新規格で生まれ変わったビートのような軽ミッドシップスポーツ、S660が発売された時のことも、よく覚えています。

あるビートユーザーは、「ついにS660へ買い替えるのか」と聞かれ、「それはありえない、愛するクルマが増えるだけだ」と言い放ちました。

ホンダもそのようなユーザーに応えるべく、S2000や初代NSXなどと同じ扱いで純正部品の供給を再開しており、まだまだ愛し続けることができそうです。

ビートは誰にでも愛されるクルマではなかったものの、一度その熱狂的にハマったユーザーからは、ひたすら愛され続けるクルマなのでしょう。

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