
周囲に田畑が広がるあぜ道など見通しの良い交差点にもかかわらず、出会い頭の衝突事故が起きることがあります。一体なぜなのでしょうか。
なぜ見通しの良い交差点で事故? 人間の視覚に潜む危険とは
2023年1月2日、福島県郡山市内の交差点で、出会い頭でクルマが衝突して炎上、4人が亡くなるという事故が発生しました。
現場は見通しの良い交差点だったといいますが、一体なぜこのような事故が発生してしまったのでしょうか。
一般的に交差点での事故といえば、信号や一時停止などのルールを無視したことによる事故を除くと、見通しの悪い交差点でほかの交通に気づかず衝突するケースなどが想像できます。
しかし一方で、周囲に田畑が広がっているあぜ道など、見通しが良いにもかかわらず事故が発生するケースがあります。
一見すると事故の発生要因が不思議に思えるケースですが、じつは「コリジョンコース現象」と呼ばれる現象が関係しているといいます。
国土交通省の運輸安全委員会が公表した資料によると、コリジョンコース現象とは、動いている物体は見つけやすいが、停止しているものは見つけにくいという人間の視覚能力の特性から、お互いが「停まっている」ように見えてしまい、注意力が低下し発見が遅れる現象を指します。
とくに双方の道路が直角に交わった交差点において、同じ速度で進入した際に発生するとしています。
地理的な特性や多発する地域から「田園型交通事故」や「十勝型交通事故」などとも呼ばれています。
今回、郡山市で発生した事故もコリジョンコース現象が原因のひとつであるとされており、調査が進められていると報道されています。
では、コリジョンコース現象による事故を予防することはできるのでしょうか。
JAFによれば、「意識的に目線を違う方向に移すこと」を対策のひとつとして挙げています。
他車が同じ速度・角度で走行してくる場合、コリジョンコース現象に加えてクルマのフロントピラーに他車が隠れてしまえば、交差点の進入時まで気づかないことがあります。
見通しの良い交差点であると、走行中はどうしても目先の交差点部のみに注意を向けがちですが、頭や目線を左右へ向けて視野を確保することで他車の発見ができるようになるほか、見通しの良さに対して油断せずに、交差点付近で減速し周囲の安全を再確認することが大切だとしています。
また、近年ではコリジョンコース現象の起こりやすい交差点付近に「交差点あり」の標識を設置したり、道路に凹凸を設けて注意を促す「減速帯」を設けるなど、行政の対策も講じられているようです。
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クルマの運転時に、見通しが良いからといって油断することは禁物です。コリジョンコース現象のように人間の感覚特性から発生する事故もあるため、交差点では十分に減速し、ほかの交通をよく確認しながら進入することが大切です。
また、どのようなクルマであっても必ず死角は存在するので、「大丈夫だろう」という思い込みをせずに、「ほかに危険があるかもしれない」という気持ちを持って運転することが大切です。