現場を変えた! 国産ジェット輸送機「C-2」初飛行-2010.1.26 “装輪戦車”載せても「あれ、重くない…」

航空自衛隊が保有する各種輸送機のなかで、主力を担っているのが、川崎重工により開発・製造されたC-2輸送機です。「ブルーホエール」という愛称を持つ同機、従来のC-1と比べ、その性能は大きく向上しています。

前型C-1輸送機の3倍以上の航続距離

 2010(平成22)年1月26日は、国産ジェット機である川崎重工業製C-2輸送機が初飛行した日です。C-2は2000(平成12)年に「第2次C-X」計画として国産機として開発がスタート。初飛行から6年後の2016(平成28)年に自衛隊への量産機納入が始まり、翌年から鳥取県の美保基地において、第3輸送航空隊第403飛行隊による運用が始まっています。

 運用開始から約7年、いまでは埼玉県の入間基地(第2輸送航空隊第402飛行隊)にも配備されており、防衛省の発表によるとC-2の配備総数は14機だそうです。また、これとは別に試作1号機が岐阜基地に、そして試作2号機を改造したRC-2電波情報収集機が入間基地の電子作戦群に、それぞれ1機ずつ配備されています。

 そもそもC-2は、既存の国産輸送機C-1の後継として開発されました。C-1は1970(昭和45)年に初飛行した双発のジェット輸送機で、ともに主翼が胴体上面に備え付けられたいわゆる高翼機で、尾翼はT字型の形状と、一見するとよく似たシルエットです。しかし、大きさは全く異なっており、スペックについても大幅に高性能化が図られています。

 最大航続距離はC-1の場合、約2400kmだったのに対し、C-2では約9800kmにも伸びており、国内移動だけでなく、海外で任務にあたる際も比較的無給油で長距離を飛んで行けるようになりました。

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105mm砲搭載の16式機動戦闘車も積載OK

 最大積載量はC-1が約11.9tだったのに対し、C-2では約36tに拡大、機体もC-1の1.5倍ほどまで大型化したことで広いカーゴスペースが確保されているため、道路運送車両法の制限内にある装輪車ならば自走で搭載することができます。ゆえに、陸上自衛隊の戦闘車両についても戦車は無理ですが、重量約26tの16式機動戦闘車であれば搭載可能です。

 また、操縦席回りは大型液晶ディスプレイを中心とした、いわゆるグラスコックピットとなっており、航空自衛隊の輸送機としては初めてヘッドアップディスプレイも装備。さらに操縦系統は最近の戦闘機や大型機では定番となっているフライトコンピューターが介入するフライバイワイヤ(FBW)方式が採用されています。

 このFBW方式は輸送機であるC-2には特に有効で、旧式のC-1では搭載重量によって機体の操縦感覚が変化することが多かったのに対し、C-2ではFBWがそれを調整してくれるため、どのような状況でも同じ感覚で操縦することができます。

 また、従来の機械式操縦装置では、状況によっては操縦桿が重くなりパイロットに腕力が要求されましたが、C-2ではFBW方式のためその必要がなく、女性でも負担なく操縦できるほか、パイロットの疲労軽減にもつながっているそうです。

 機体外面は青系の迷彩色で塗装されており、最初の配備基地である美保基地ではその外観と大柄な機体サイズからクジラに見立て、親しみを込めて「ブルーホエール」という独自のニックネームを付与しています。