明治期には国内産の銅の4割以上を産出した日本一の銅山として、近代日本産業の発展を支えた地―――足尾銅山。

栃木県日光市に広がるこの産業遺産の街、足尾へ。

東武「日光・足尾ルートパス」で、わたらせ渓谷鐵道の気動車に揺られて、渡良瀬川がつくる渓谷美のなかをゆっくりじっくり訪れた。

ここ足尾駅は、旧来の足尾町の最寄り駅である通洞駅とは違い、貨物列車の扱いがあったころの名残がいろいろ残る鉄道貨物駅という雰囲気。

駅前には昭和時代の広告看板と思しき「両毛通運」の案内板がいまも残っていて、「国鉄を利用した 事業 五トンコンテナー取扱」といった文字も。

1時間に1本ほどしか列車がやってこないここ足尾駅は、気動車が行ってしまうと鳥の声と風の音だけ。

その音さえ感じなくなると、まるで時間が止まったように、昭和の鉄道風景を描いた絵画のなかに入り込んだような気分になる。

貨車や気動車が留置されていた時代の面影、山側の留置線

まずは間藤行き単行気動車を降りると、ホームの山側に広くとられた留置線がみえる。地上と運転台を結ぶ、木造の乗務員用階段が朽ちながらもアートのように残っている。

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木製電柱も現役、赤レンガのランプ小屋も

ホームには木製電柱が青空にむけて高くのび、そこにホーロー製と思しき駅名標も。

渡良瀬川・駅舎側の上り線(桐生方)ホームには、赤レンガでできた危険品庫(登録有形文化財)がある。危険物扱いの灯油などを収納する建屋で、アーチ型の小窓などもおしゃれ。