この戦闘機なに!? ジャカルタに現れた謎の機体i-22 国の威信かけた“ハッタリ”か

インドネシアのジャカルタで開催された防衛イベントに、新戦闘機i-22「シカタン」のモックアップが登場。発展目覚ましい同国の勢いを象徴する存在……かと思いきや、実は「それ以上でも以下でもない」ものでした。

ジャカルタに登場した新戦闘機のモックアップ

 インドネシアの首都ジャカルタのコンベンションセンター「ジャカルタ・インターナショナル・エキスポ」で2022年11月2日から5日、防衛・セキュリティ総合イベント「インドゥ・ディフェンス2022」が開催。同国の防衛総合企業のインフォグローバルが、新戦闘機i-22「シカタン」のモックアップを出展しました。

 i-22の機首はレーダー波を反らす効果を持つそろばん玉のような形状で、垂直尾翼も同様の効果を狙って左右に大きく傾斜しています。その一方で、対レーダーステルス性能を高める上では不利になるカナード翼も備えています。

 機体後部のエンジン排気口も、F-22やF-35のようなレーダー波を反らす効果を持つ形状ではなく、ステルス性能がそれほど重視されていなかったに時期に開発されたF/A-18「ホーネット」やユーロファイター・タイフーンなどの第4~4.5世代戦闘機と大差ない形状となっています。

 本格的な対レーダーステルス性能を備えた第5世代戦闘機となると、開発費も技術的なハードルも高くなります。そこで限定的な対レーダーステルス性能を備えた第4.5世代機を開発するというコンセプトは、韓国のKF-21「ポラメ」と共通しています。i-22は全長12.5m、全幅7mと、KF-21(全長16.9m・全幅11.2m)に比べて一回り小さく、インドネシア空軍が韓国から導入したジェット練習/軽攻撃機のT-50i(全長13.144m・全幅9.45m)に近いサイズにまとめられています。

 インフォグローバルはi-22の用途として、戦闘のほかISR(情報収集・警戒監視・偵察)、電子戦などを挙げています。

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中小国にいいんじゃない? って質問したら驚愕の回答が…

 T-50をベースに開発されたFA-50や、イタリア空軍などが運用しているM-346練習機ベースのM-346FAといった軽戦闘/攻撃機は、電子機器の小型化と高性能化によりレーダー誘導空対空ミサイルや精密誘導兵器などの運用能力も備えており、資金に余裕の無い中小国を中心にシェアを拡大しています。これらが対レーダーステルス性能をそれほど考慮していないことを考えると、i-22は資金に余裕がなく、その一方で一定の対レーダーステルス性能を備えた戦闘機が欲しい国々には、魅力的に映るのではないかと感じました。

 こうした理由から筆者(竹内 修:軍事ジャーリスト)は、i-22を世界の軽戦闘/攻撃機市場への参入を狙った計画と見て、実大モックアップを製造したインフォグローバルのブースでその旨の質問をしてみました。すると同社の担当者は驚くべき回答を口にしたのです。

「i-22は軽戦闘/攻撃機市場への参入を狙ったものでも、インドネシア空軍への提案を狙ったものでもなく、さらに言えば具体的な開発計画もない」

 では、インフォグローバルは何のために少なからぬ費用を投じて実大モックアップを制作し、それをインドゥ・ディフェンス2022に出展したのでしょうか。同社の担当者は筆者の投げかけた疑問に対して次のように答えました。

「このレベルの戦闘機であれば、インドネシアの国内産業の技術で十分開発できることを国民にアピールして、防衛装備品のさらなる国産化を進めるためにi-22のコンセプトを発表し、実大モックアップを作った」