本当に1972年に発売されたクルマなのか?と驚くばかり

フロントマスクはシボレー ステップバンなどアメリカのウォークスルーバンと似ており、車名ともども影響を受けたと思われる

発売当時のプレスリリースには、こう書かれています。

「実用性のなかにも乗用車的感覚が取り入れられており、乗降頻度の多い集配業務からレジャーまで、大きな機動力を発揮して巾広い用途に応えます。」

N-VAN(2018年発売)のリリース文かと思ってしまいそうですが、1972年発売のステップバンでこの感覚、未来からタイムスリップした誰かが書いたのか、と思ってしまいそうです。

それだけではなく、ハンドルの傾斜角、シート位置、シフトレバーなどボディ形状に合わせ最適化された運転席と助手席の前方には、センターメーターと平べったいデスク状のダッシュボードがあります。

座面を前方へ引き起こした跡へ、前に倒した背もたれを格納すれば、そのまま広くフラットな荷室床面となるダブルフォールディング式リヤシートなど、これでエアバッグなど安全装備がつけば、今発売しても十分通用しそうです。

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軽自動車市場の冷え込みと、社運をかけた戦略変更で短命に

使い勝手を追求した上下に開く2分割式テールゲート。センタータンクレイアウトではないため、荷室口の下端が高いところはかろうじて昔のクルマと感じる。

しかし、1990年代以降の価値観と、1972年当時の価値観はもちろん異なります。

1966年にマイカー元年を迎え、レジャーに行くなら軽自動車では貧乏臭いという時代、あくまで軽商用車に過ぎないステップバンは荷室容積で軽1BOX車に劣ります。

1970年代末まで販売すれば、初期のRVブームでチャンスはあったものの、カリスマ創業者、本田 宗一郎氏が注力したホンダ1300(1969年)は大失敗、軽自動車市場の冷え込みで半ば死に体のホンダにそれは許されません。

オイルショックで省エネ対策にピッタリ、厳しい排ガス規制をクリアする画期的なCVCCエンジンも準備した初代シビックへ自動車メーカーとして全てを賭け、軽トラ以外の全生産ラインを譲り渡し、ステップバンも1974年生産終了。

20年後なら大ヒット間違いなしでも当時の価値観に合わないなら、わずか2年の短命も仕方ありませんでした。

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