尖閣警備の期待の星 海上保安庁の最新巡視船「やえやま」進水 姉妹船も続々計画中

船名からして沖縄周辺を守備範囲にする第十一管区向けかと。

就役は2023年度中を予定

 ジャパンマリンユナイテッド(JMU)は2022年11月30日、海上保安庁向けの3500トン型巡視船「やえやま」(PL-203)の命名・進水式を、同社の横浜事業所磯子工場で実施しました。

 同船は2020年2月に就役した、みやこ型巡視船の3番船。引き続き艤装工事などを行い、2023年度中に海上保安庁へ引き渡され、就役する予定です。就役後は尖閣諸島をはじめとする沖縄周辺海域で、領海警備や海難救助といった任務に就くと見られます。

 巡視船「やえやま」は、東シナ海の領海警備と大規模事案が同時に発生しても対応可能な海上保安庁の体制を整備するため、2019年度の補正予算で建造が計画された大型巡視船です。

 船体の寸法は全長120m、幅14mで、ヘリコプターを搭載しない、いわゆる「PL型」と呼ばれる海上保安庁の大型巡視船のなかでは最大級になります。なお、船体後部はヘリコプターの発着が可能な飛行甲板となっており、速力は25ノット(約46.3km/h)以上を発揮します。総事業費は約140億円で、最新鋭の巡視船として捜索監視能力や法執行活動が可能となる規制能力、そして災害対応能力のいずれも従来の巡視船と比べ、向上しています。

 装備に関しては、ネームシップの「みやこ」と同じく40mm機関砲を船体の前後に1基ずつ配置すると見られ、これに加えて遠隔放水銃や遠隔監視採証装置、停船命令等表示装置、高速警備救難艇、複合型ゴムボートなども搭載されます。

 建造ヤードは1番船の「みやこ」が旧三井E&S造船玉野艦船工場、2番船の「おおすみ」が三菱重工マリタイムシステムズ玉野本社工場でしたが、3番船の「やえやま」はJMU磯子工場となりました。

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姉妹船さらに3隻が建造予定

 なお、みやこ型巡視船は2021年度の補正予算で、さらに3隻分の新造整備が予算化されており、いずれも2026年2月までの就役を予定しています。3隻の大型巡視船が同じ時期の竣工を目指して一気に新造されるため、どこの造船所で建造されるかも注目ポイントでしょう。

 海上保安庁は2016年に決定された「海上保安体制強化に関する方針」を踏まえ、法執行能力、海洋監視能力、海洋調査能力、この3点に軸足を置いて強化を進めています。

 ゆえに、同庁は2025年度までに練習船を含む大型巡視船の隻数を81隻まで増強する計画で、大型巡視船や航空機の新規整備などを盛り込んだ2023年度概算要求では総額2530億円を計上しました。

さらに、2022年末までに改定される国家安全保障戦略の取り組みのなかで、巡視船の増強と老朽代替の促進や長寿命化の推進、無操縦者航空機(いわゆるドローン)をはじめとした新技術の活用による監視能力の強化や自衛隊との連携強化、諸外国の海上保安機関との協力体制の強化などを図っていくとしています。

 海上保安庁は巡視船「みやこ」をはじめとする3500トン級のPL型について、「海洋権益の保全、治安の確保、海難救助、海上防災などの海上保安業務全般を担う主力船型」として位置づけており、「耐航性、動揺安定性、長期行動能力を持つPL型巡視船の整備を緊急に進めていく必要がある」と明言しています。