もう目前 F-35Bの空母運用“日本式”の課題 機体は空自 船は海自…まとまるのか?

陸自ヘリ部隊と同じく「前線整備」が必要に

 ただ、航空自衛隊のF-35B飛行隊が派遣される場合、その展開先が本土のローカル空港であれば陸路での燃料、武器、予備部品等の補給も可能かも知れませんが、島嶼では船舶輸送が必須です。あるいは、いずも型やひゅうが型といった空母型護衛艦からヘリコプターまたは「オスプレイ」を用いて空輸するようになるかもしれません。

 しかし、CH-47J「チヌーク」輸送ヘリは航空自衛隊も運用しているものの、V-22「オスプレイ」については陸上自衛隊にしかないため、運用するには調整が必要になります。加えて、陸上自衛隊機を派遣してもらう場合は、前述のF-35Bで記したのと同じく、専門の整備隊もセットで派遣してもらうのが不可欠です。

 もっとも陸上自衛隊の場合は、第1ヘリコプター団および各方面航空隊の隷下にそれぞれ航空野整備隊という、常駐飛行場の外で整備もできる能力・装備を有する専門部隊が編成されているため、その点では基地依存が強い航空自衛隊と比べても「前線整備」への対応力は高いと考えられます。

 こうして見てみると、F-35Bを航空自衛隊が運用するには、いくつか越えるべきハードルがあるといえるでしょう。筆者がきわめて大雑把に一例を想定しただけでも、F-35Bの直接運用者である航空自衛隊、いずも型護衛艦の運用を行う海上自衛隊、V-22「オスプレイ」を始めとして支援任務に不可欠と思われる各種回転翼機を最も多く保有する陸上自衛隊、これら3自衛隊が、それぞれ協力・連携しなければ、島嶼への展開も含めて、F-35Bという画期的な戦闘機を円滑かつ有効に運用するのは難しいようです。

 それに、単に隊員の人数と各種の装備品を揃えても、全体の指揮を執るものがいなければ、この「資産」を有効活用できないのは火を見るより明らかです。そのため、航空自衛隊の装備品ではあるものの、F-35B戦闘機をマルチに運用するためには、3自衛隊による「統合司令部」のようなものを立ち上げることが、最も必要なのかもしれません。

 それこそが、最終的には我が国の島嶼部やへき地の防衛力を、最も効率よく強化することにつながるのではないでしょうか。