鉄道開業150年記念式典は、JR東京駅駅舎内にある東京ステーションホテルで開催されました(イメージ写真:momo / PIXTA)

鉄道開業150年のメモリアルデー・2022年10月14日の「鉄道の日」にスポットを当てたレポートの後編です。今回は「鉄道開業150周年記念式典」、「鉄道の日祝賀会」の2つのセレモニーをご報告、あわせて関連する話題を集めました。

一連のイベントやセレモニーでは、社会を挙げて鉄道の大きな節目を祝う一方で、人口減少や新型コロナによる利用減という課題も示されました。テレビや新聞などのマスコミ、さらにより詳細には本サイトのような鉄道ニュースメディアで現状を知った皆さんが、それぞれの立場で鉄道の針路を考える――それが今年の鉄道の日最大の成果なのかもしれません。

国民への感謝を表すセレモニー

鉄道開業150年を顕彰するとともに、国や鉄軌道事業者が日ごろ鉄道を利用する国民への謝意を表したのが「鉄道開業150周年記念式典」です。鉄道の日実行委員会などが主催、2022年10月6日にJR東京駅の東京ステーションホテルで開かれ、政府・鉄道関係者など約110人が出席しました。

式典では、国会出席中の斉藤鉄夫国土交通大臣に代わり、古川康国土交通大臣政務官が主催者代表としてあいさつ。天皇陛下が大要次の通りおことばを述べられました。

「鉄道唱歌を口ずさんだことも」


鉄道開業150周年記念式典に出席された天皇陛下と雅子さま(代表撮影)

「鉄道開業150年を記念する式典に、皆さんと共に出席できることをうれしく思います。

150年前の明治5年、日本で最初の鉄道が、新橋―横浜間に開業しました。明治維新以降、近代国家への道を進みつつあったわが国は、大きな喜びと期待に満ちあふれたことでしょう。

私自身、子どもの時から、おりに触れ鉄道を利用してきましたし、小学生のころ、鉄道唱歌の一節を口ずさんだことも懐かしい思い出です。

鉄道は、人々の交流や物流を支える大切な輸送手段の一つで、輸送量当たりの二酸化炭素排出量の少ない、環境への負荷が小さい交通機関としても注目されています。鉄道の安全性や利便性を向上させ、将来の世代につなげていくことは、重要なことと考えます。

鉄道に関係する皆さんのたゆみない努力が実を結び、わが国の鉄道が難しい状況を乗り越え、引き続き人々に親しまれながら、暮らしと経済を支えていくことを期待します」

「新しい技術を掛け合わせ社会的使命果たす」


記念式典で鉄道業界代表として決意表明する深澤JR東日本社長(代表撮影)

続いて、村井英樹内閣総理大臣補佐官(岸田文雄首相代理)、戸倉三郎最高裁判所長官らがそれぞれ祝辞を述べました。

これを受けて鉄道業界からは、式典実行委員長を務めたJR東日本の深澤祐二社長が「明治から令和まで、5つの時代を経た鉄道の伝統と使命を次の世代につなぐとともに、デジタルなど新しい技術を掛け合わせることで、街づくりや観光振興、脱炭素化などの分野でも社会的使命を果たしていく。鉄道のさらなる発展に力を尽くすことを誓います」と決意表明しました。

ネットメディアが「鉄道開業150年」を後世にアーカイブする

後段の「鉄道の日祝賀会」に移る前に、鉄道開業150年を取材して感じたことを一節。前回の節目といえば、「鉄道開業100年」の1972年でしょうか。

この年、国鉄は京都市に「梅小路蒸気機関車館」(現在の京都鉄道博物館の前身です)を開館、鉄道技術研究所(こちらは鉄道総研の前身です)のリニアモーターカーが初めて浮上走行に成功しました。

振り返れば当時の国鉄は、赤字体質が定着しつつあったのですが、当事者としてどのように立ち向かったのかは調べてみてもよく分かりません。当時のメディアはテレビ・ラジオと新聞・雑誌だけで、情報量も十分とはいえませんでした。

それに比べると、今はネットメディアが定着して日々の細かい情報まで伝えます。次の大きな節目は、「鉄道開業200年」の2072年でしょうか。

その時、開業150年の記録がアーカイブされていることは、必ず役立つはず。本サイトのようなネットメディアは、日々のニュースをファンの皆さんにお伝えするとともに、鉄道の記録を後世に橋渡しする役目を受け持っているように感じました。

只見線列車の〝閃光〟に国土交通大臣賞


鉄道の日祝賀会では真貝JR貨物会長が出発合図で開会を宣言しました。ちなみに真貝会長は銀行出身で、鉄道運転士の経験はありません(筆者撮影)

2つめのセレモニー、「鉄道の日」当日の2022年10月14日には、東京・渋谷のセルリアンタワー東急ホテルで「鉄道の日祝賀会」が開かれ、約530人が出席しました。

主催は鉄道の日実行委で、森地茂実行委会長(政策研究大学院大学客員教授・名誉教授)のあいさつ、斉藤国交相の祝辞に続き、真貝康一JR貨物会長の出発合図で、祝賀会は幕を開けました。

主なメニューは、23回目の「鉄道のある風景写真コンテスト」と「日本鉄道賞」の表彰式。写真コンテストで最優秀賞の国土交通大臣賞を受賞したのは、栃木県の会社員・石木憲さんの「始発列車の閃光」です。


「鉄道のある風景コンテント」で国土交通大臣賞を受賞した石木さん。審査結果と入選作品は鉄道建設・運輸施設整備支援機構(JRTT)のホームページで閲覧できます(筆者撮影)

今月、11年ぶりで全線運転再開を果たしたJR只見線の早戸―会津宮下間で撮影したこん身の一枚は、始発列車のヘッドライトをせん光に見立てました(2022年2月撮影)。

JR東海の新型ハイブリッド車に「日本鉄道賞」


JR東海の新型ハイブリッド車「HC85系」(写真:鉄道チャンネル編集部)

日本鉄道賞の大賞は、本サイトでも紹介の通り、JR東海「新型ハイブリッド車『HC85系』」。

HC85系は、燃費を従来車に比べて35%程度改善、環境性能や車内の静粛性(静かさ)に優れ、鉄道の旅をワンランクアップさせます(古関隆章選考委員長〈東京大学大学院工学系研究科教授〉の講評から)。鉄道の未来を切り開く高性能車に、会場からひときわ大きな拍手が送られました。

シンガポールでRAIL FAIR(JR東日本)


JR東日本のシンガポールイベントが開かれた「JAPAN RAIL CAFE」。同社がシンガポール中心部に2016年12月開設しました(写真:JR東日本)

締めくくりは、鉄道開業150年に関連する話題2題です。

JR東日本は「鉄道の日」の2022年10月14日から3日間、シンガポールで「THE JAPAN RAIL FAIR2022」を開催。日本の鉄道創業時の車両などを、さいたま市の鉄道博物館からのライブ中継も交えて情報発信しました。

シンガポールでは、日本の技術支援で地下鉄が建設されるなど、日本の鉄道が高い関心を集めます。訪日観光の本格再開に合わせたイベントでは、鉄道とともに「青森ねぶた」など日本の祭りを発信しました。

戦後の鉄道、パネルで振り返る(交通新聞社、鉄道博物館)


鉄道博物館で開催中の「時刻表から見た戦後の鉄道」で展示される、JRグループ発足の1987年4月号の「JR時刻表」と同月1日付の交通新聞紙面(資料:鉄道博物館)

鉄道博物館つながりでもう一題、交通新聞社は同博物館でパネル展「時刻表から見た戦後の鉄道」を開催中です。2022年7月から2023年3月までというロングランの催しで、現在は2022年12月28日までの第2期間中。

国鉄改革を挟む1980~1990年代をとらえ、日本列島が一本のレールでつながった鉄道新時代のできごとを「JR時刻表」や交通新聞の記事で振り返ります。入館料だけで観覧できます。

記事:上里夏生